教師への暴力、警察介入の他に対策はないのか?
JIJICO / 2014年8月28日 15時0分
教師への暴力、警察介入の他に対策はないのか?
対教師暴力として各学校から報告された件数は約8000件
対教師暴力の件数が、ここ数年で増大してきています。文部科学省の調査によると、平成24年度に対教師暴力として各学校から報告された件数は8431件、そのうち20.2%に当たる1702件は被害を受けた教諭が病院で治療を受けています。また、内閣府の調査では、平成25年度に警察が校内暴力で逮捕・補導した少年1779人中で、その半数近い799人が対教師暴力でした。この数字は、ここ10年で約1.5倍以上に増加しています。
同年代同士の喧嘩と違い、成人に対してふるわれる暴力は「犯罪行為」としての意味も帯びつつある印象を受けます。文部科学省は、「犯罪行為の可能性のある場合には学校だけで抱え込まずに警察の協力を得て対応すること」と通達していますが、一方で、安易な警察による介入は教育現場にはふさわしくない、という議論もあります。現場としては悩むところですが、当面「教師の身の安全を守る」という意味では必要な対応かもしれません。しかし、他に対応策はないのでしょうか?
学校だけで抱えるのではなく、地域や社会と連携した取り組みも
校内の取り組みの一つの例として、アメリカの校内暴力を激減させた「ゼロ・トレランス方式」(「割れ窓理論(壊れた窓をそのままにする無関心さが、よりエスカレートした犯罪を引き起こす)」に基づき、小さな問題でも見逃さないで対応する方法)を導入し、荒れた学校を落ち着かせたという実例もあります。しかし、強圧的に実施しては、しこりが残るかもしれません。
また、学校だけで抱えるのではなく、地域や社会と一緒に取り組んでいくという観点からは、先日、大阪府・市が打ち出した「個別指導教室」、あるいは警察官OBなどを中心としたスクール・サポーター制度、地域住民の学校参観・開放など、他の関係者・団体と連携を取る対策も図られています。
ノウハウを共有し、フィードバックする連携システム作りが必要
さらに観点を広げてみると、この暴力の問題は学校教育だけに限った問題ではないとも言えます。「怒りをコントロールできずに暴力に訴える」という意味で、他の領域に広げてみると、日々、暴力事件がメディアで取り上げられています。目を覆うような残虐な暴力事件から虐待、DVまで、年齢・状況・程度は違っても「暴力」と言う点では同じです。
そういう個々の案件に対し、例えば、従来の非行問題に対して少年院では矯正教育・治療教育の取り組みが、また、児童養護施設内での暴力に対しては、児童相談所・学校・養護施設などが連携して「安全委員会方式」と呼ばれる取り組みがされているところもあるとも聞きます。参考になるかもしれません。また、DVや虐待などの加害者には、加害者更生プログラムが用意されています。成人の犯罪行為であるとはいえ、共通の課題に対して「怒りのコントロール」「アンガー・マネージメント」という取り組みがなされているのです。
今後は、それぞれの領域で個別になされているさまざまなノウハウや経験知を共有し、フィードバックしていく連携システム作りが求められるでしょう。そして、それは学校での暴力に対しても有効な対策をもたらしてくれるはずです。あらゆる取り組みの成果を取り入れるとともに、同時に成長期の可能性を視野に入れた個別の心理的アプローチを組み合わせていくことが大切となるのではないでしょうか。
(岸井 謙児/臨床心理士・スクールカウンセラー)
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