多様化する葬儀プラン いざという時に注意すべきことは?
JIJICO / 2020年12月8日 16時30分
多様化する葬儀プラン いざという時に注意すべきことは?
■コロナ禍で変わりつつある葬儀のあり方
近年家族のみで行う家族葬の割合が増加していたところに、新型コロナウィルス禍によって行動様式の変化が起こり、ますます一般葬の割合は減少しました。葬儀規模は年々小さい方へと移行する傾向にあります。近親者が亡くなった際、多くの場合において速やかに葬儀社との打ち合わせが始まります。故人が生前予約をしていなければ、葬儀のタイプをいくつか示され、遺族がその中から選択することになります。最近提示される葬儀プランは、安価で規模の小さい方から、「火葬式」「家族葬」「一般葬」の三つに大別されます。この中で「火葬式」という言葉は数年前まではなかった言葉ですので、ご存じない方も多いと思いますが、実は内容は昔からあったものです。都市部では、現在亡くなった方の20%以上がこの方式で送られているそうですので、ご存じの方も少なくないと思います。火葬式とは、直葬(ちょくそう或いはじきそう)のことなのです。念のために直葬について説明しておきますと、亡くなった方を自宅なり斎場なりに安置した後、通夜・告別式といった葬送儀礼を何も行わずに火葬することを直葬と言います。
■増えつつある火葬式
日本人の個人主義化や家族性の変化から、コロナの流行が始まる前から「葬儀はしなくていい」という声が増加し、直葬の割合は増えつつあります。元々は、身寄りがなくご遺体の引き取り手がいない場合に、警察や役所の方が火葬のみ手配することを直葬と呼んでいました。そのためか、直葬が何かを知る人であれば「父は(母は)直葬にしたんです」と言いにくいという罪悪感が少々伴いがちです。そこで葬儀社が、直葬のことを火葬式と名を変えてその罪悪感を軽くし、依頼しやすいようにしたのです。では、なぜ葬儀社は、安価な家族葬よりさらに儲からない火葬式を扱いたいのでしょう。それには、通販ビジネスの拡大が少なからず関係しています。実際に通販サイトで検索してみると、個人でも棺などを手配できることが分かります。「通販で何でも揃うし、葬儀をしないのだから葬儀社は頼まない」という家庭が多くなれば商売あがったりですが、たとえ葬儀をしなくても、棺、枕飾り、ドライアイス、搬送等、一連の注文を取りつければ、15万~25万くらいの売上になります。こうして、火葬式という名に変えたことで遺族の罪悪感は小さくなり、葬儀社にとっては直葬ビジネスが盤石なものになりました。
■葬儀プランを選ぶ時に気をつけること
そこで、万一の際、気をつけていただきたいことがあります。昨今の終活ブームの中、希望の葬儀の形式を家族に伝える方も多くなりました。故人から「にぎやかにやって」と言われていれば一般葬を検討するでしょう。「こじんまりと家族だけで」と言われていれば、遺族は家族葬を検討します。「葬儀になるべくお金をかけないで」と言われていた場合は要注意です。パンフレットに「火葬式・家族葬・一般葬」とプランが並んでいると、火葬式は故人が望んでいた【一番安い葬儀のプラン】だと認識しかねない紛らわしさがあります。もちろん、殆どの葬儀社は「火葬式は直葬のことで、直葬とは…」と説明をしてくれるでしょうが、説明が十分でないこともあるかもしれませんし、中には火葬式を「よりシンプルな家族葬の形」などと定義している場合もあるので、注意が必要です。理解した上で直葬を選んでも、後悔する遺族が後を絶ちません。ましてや何らかの葬儀をやってあげたいと思っている方は、誤って選択されないよう、火葬式=直葬とは「広義での葬儀ではない」ことを、消費者の知恵として知っておきましょう。
(薩野 京子/上級終活カウンセラー)
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