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車の「レース生地カバー」なぜ消えた? “もはや懐かしい”背面タイヤも電動アンテナも見なくなったワケ

くるまのニュース / 2024年1月1日 14時10分

クルマの装備品は「はやり廃り」があります。今回は、車内外周辺の装備品3点について、栄枯盛衰の歴史をたどってみました。

■レース生地のカバーはなぜ消えた?

 クルマの装備にも、はやり廃りがあります。かつて高級車の象徴やあこがれだったもの、かっこいいとされたものたちの栄枯盛衰を振り返ります。昭和の「あの装備」は、なぜ見なくなったのでしょうか。

最近、見かけることが減った「レース生地カバー」最近、見かけることが減った「レース生地カバー」

●レース生地のシートカバー

 クルマのシートは、かつてはビニールなどを表皮に用いていたものでした。ビニールは、高度経済成長期の初期は最先端の生地であり、汚れてもサッと拭き取るだけできれいになることも特長でした。

 しかし、シートに座る人は、目に見えなくても少しずつ汗をかいています。ビニール生地は布と異なり、水分をほとんど通しません。そのため、背中やお尻が汗で湿ってしまうことが難点でした。

 そこでカバーをかぶせると、シートと服の間に布が入り、通気性が改善されて汗染みを軽減できます。カバーは汚れには耐えられませんが、外して洗えば元のきれいな状態に戻ります。

 1970年代になってくると技術が進化し、大衆車に高級化の波が及んできます。シート地は起毛素材となり、手触りが良くなるとともに通気性も改善が進みます。

 そうするとカバーの役目は徐々に後退し、一種の装飾品のような存在に。形状もシートをすべて覆う形から上半分だけとなり、さらにデザインが加わることで高級感を演出するものになりました。特に1980年代半ばの高級セダンで流行した、ワインレッド色でベロア生地のシートには、レース生地はよく似合いました。

 しかし、流行は徐々に変化していきます。

 1980年代末になると、シート地は織物風などのシックなデザインが主流に。すると徐々にレース生地が似合わなくなり、装着する人は減っていきました。若者が仲間とドライブに出掛けるとき、座席にレース生地カバーが付いていたら「親のクルマに乗っている」とからかわれたものでした。

 また、1990年代末にサイドエアバッグが登場すると、エアバッグが開くときに破れる仕立てのシートカバーしか装着できなくなってしまったことも、シートカバーが減少した一因です。

 現在、シートカバーの一部に、革張り風デザインのものがあります。目的も汚れ防止になっており、カバー本来の位置付けに戻ったといえます。

 しかし、サイドエアバッグ付きのクルマにシートカバーを装着するときは、くれぐれも万が一の時に破れる構造のカバーにしてくださいね。

■背面スペアタイヤは、なぜ廃れたのか

●背面タイヤ

 タイヤは、不幸にして走行中にパンクすることがあります。そのためクルマには、スペアタイヤの搭載が法律で義務付けられていました。現在は、パンク修理剤を積んでおけば、スペアタイヤを搭載しなくてもよいと改正されています。

 このように以前はスペアタイヤをクルマに載せていたものですが、困るのはその場所です。乗用車はトランク内、トラックは脇に吊り下げる方式が一般的でしたが、一方でスペアタイヤをバックドアに背負うのがはやった時期があります。

 その嚆矢となったのが、1982年に発売された三菱「パジェロ」です。

三菱初代「パジェロ ショートボディ メタルトップ ロスマンズカラー」三菱初代「パジェロ ショートボディ メタルトップ ロスマンズカラー」

 パジェロは大ヒットし、各社はパジェロのようなクルマを多数発売します。そのパジェロは、三菱がライセンス生産をしていた米国の「ジープ」を乗用車的な装備にしたモデルでした。

 軍用車だったジープは、当然スペアタイヤを装備しています。そしてクルマの用途上、素早くタイヤ交換できるようにしなければなりません。

 ジープは、スペアタイヤを車体後部に搭載していました。そしてパジェロもそのまま、スペアタイヤをバックドアに装着しました。

 これがそのまま、SUV特有のスタイルとなっていきます。

 当時のSUVは、当時流行していたスキー場へ向かう快速ツールとして人気を博していました。パジェロは(どちらかといえば)高速道路よりも雪道を走るほうが持ち前の4輪駆動で生き生きと走ります。その後ろ姿を見せられて、悔しい思いをした人も多数いたことでしょう。

 スキーブームとともにSUVブームも起こり、街中にはスペアタイヤを背面に背負ったクルマが多数走ることになりました。

 しかし、ファッションとなった背面スペアタイヤには、いろいろな問題が出てきました。

 まず、雨が降ると汚れとタイヤの成分が雨筋となって流れ、バックドアなどに黒くこびり付きます。ワイルドさを狙ったSUVユーザーも、雨垂れ汚れは許せなかったようです。

 また、スペアタイヤが太陽光で著しく劣化することも問題になります。スペアタイヤがいざという時に使えなかったり、車検時に劣化を指摘されて使わないまま交換を余儀なくされた人もいたことでしょう。

 そこで1990年代半ばになると、スペアタイヤにプラスチック製カバーを装着するようになっていきます。カバー装着により、汚れと劣化の問題は解決します。

 ところが2000年頃になると、「都会派SUV」なるジャンルがはやり始めます。

 それらのSUVは、“土の香り”がするSUVとしての走破性を捨て、舗装路での使用を狙ったファッション的商品でした。シャシーは乗用車のものを用い、駆動方式も前輪駆動が設定されていました。悪路走破性より、ボリュームあふれるスタイルと、都会的かつ乗用車的イメージの方が重要でした。

 そのため、背面スペアタイヤは“土の香り”を象徴している装備品であるとして、徐々に排除されてしまいました。

 SUVブームが背面スペアタイヤを生み出し、SUVブームの変革が背面スペアタイヤを追いやったわけで、スペアタイヤの不憫さを感じます。

■スイッチ一つでスルスル伸びる「電動ロッドアンテナ」

●電動ロッドアンテナ

 クルマには当初、FM放送受信用に、フロントフェンダーやフロントピラーに手動で伸縮させるタイプのアンテナを搭載していました。しかしこのタイプは、いちいち人が降りて伸縮する必要があり、特に雨の日や高速走行中には非常に不便でした。

 そこで、ラジオの電源をオンにすると電動で伸縮するアンテナが登場しました。人がアンテナを操作しないため、主にクオーターパネル部分に搭載されたものです。

電動格納式のアンテナが伸びた状態電動格納式のアンテナが伸びた状態

 手動アンテナ車と比べると、スイッチがオンになってアンテナがスルスルと伸びる様子が、高級車のたたずまいを醸し出していました。

 この電動ロッドアンテナは確かに便利でしたが、伸縮させるモーターやギヤ機構の重量が意外にかさんだり、アンテナの隙間から浸水するのか意外に寿命が短かったりしました。また、アンテナがクルマのスタイルを崩してしまうという見方もありました。

 こうしたことから、ルーフパネルの前端に短いアンテナを立てたクルマや、リアガラスの熱線式ウィンドーデフォッガーの熱線を、そのままアンテナとして用いるクルマも登場しました。

 ここ10年間では、サメの背びれに似たシャークフィン式のアンテナを、ルーフパネル後端に装着する方式が主流です。

 結果として、電動ロッドアンテナは古くなってしまいました。「ラジオが聞けるなら、アンテナは目立たないに越したことはない」というのが、多くの人の意見だったのかもしれません。

※ ※ ※

 今回取り上げた3つの装備品は、いずれも一時は「おしゃれ」ないし「かっこいい!」とされたものばかりです。しかし、いずれも、時代が変わったり別の技術が出てきて、すっかり前世代のものとなっていきました。

 レース地のシートカバーは、高級車の象徴から古臭いものに。背面スペアタイヤは、かっこいいから土臭いへと変わったのですから、時代の変化は残酷なものです。ファッションなども同じで、大流行した服ほど廃れるのも早かったりします。すなわちクルマも、道具でありながらファッションアイテムなのかもしれません。

 クルマを使う私たちには、いろいろな楽しみであっても、装備品を作っている人たちは日夜苦労の種かもしれません。今これらの装備品を使用している人は、どうか大切にしていってください。

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