社説:補選で自民全敗 国民の憤りに向き合え
京都新聞 / 2024年5月1日 16時5分
自民党の裏金事件に対する国民の憤りが明確に示された。反省や改革に本気度が見えない政権与党への厳しい審判として、重く受け止めるべきだ。
衆院3補欠選挙で、いずれも議席を持っていた自民が全敗した。唯一の与野党対決となった島根1区は立憲民主党に大差で敗れ、東京15区と長崎3区では独自候補を擁立できず不戦敗となった。
自民への逆風の象徴となったのが、細田博之前衆院議長の死去を受けた島根1区の選挙である。
細田氏は裏金事件で所属議員3人が立件された安倍派の会長を長く務め、反社会的な活動が問題となった世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と深い付き合いがあった。だが、裏金づくりの仕組みや教団との関係について、説明責任を果たさないままだった。
竹下登元首相らを生んだ「保守王国」の島根でも自民票が離れ、小選挙区制で独占してきた議席を初めて失った。岸田文雄首相が応援に2度入っての大敗であり、深刻さが際立ったといえよう。
東京15区は江東区長選を巡り前議員が公選法違反(買収)で有罪となり、長崎3区は裏金事件で前議員が罰金刑を受けた。いずれも「政治とカネ」に絡み、劣勢とみた自民は候補者を立てなかった。
本来は裏金事件の全容をつまびらかにし、徹底した再発防止策を出して信を問うのが公党のあるべき姿ではないか。
岸田氏は「信頼回復に努める」と繰り返しながら、いまだ事実解明に後ろ向きである。自民の政治資金規正法改正案は議員への罰則適用が極めて限られ、国会で野党から「連座もどき」「なんちゃって改革」との批判を浴びた。パーティー収入の透明化や政策活動費の見直しは棚上げしている。
向き合うべきは補選全敗に示された厳しい民意であり、衆院解散の検討や自民総裁選をにらんだ内向きの駆け引きではない。再発防止に値する規正法改正を実現し、物価高や少子化といった政策課題に真摯(しんし)に取り組むべきだ。
立民は補選で3勝したが、不祥事対応に自民がもたつく「敵失」の面が大きい。投票率が軒並み低下しており、政権交代への強い期待が示されたとは言い難い。
勝利した島根で与野党の一騎打ちに持ち込んだように、次期衆院選に向けた野党共闘の戦略が問われる。補選の結果を背景に、規正法改正の野党案を束ねて与党に迫り、実効性のある改革につなげねばならない。
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