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新型PS5、小型化も値上げに賛否 「米国のみ価格変更なし」でも「日本軽視」とは言えないワケ

マグミクス / 2023年10月14日 9時10分

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■新型の投入は、SIEの既定路線

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)は先日、PlayStation 5(以下、PS5)の新しいモデル(以下、新型PS5)を発表しました。サイズの小型化や軽量化を行い、本体内蔵のSSDストレージは1TBに増量と、マイナーチェンジという言葉には収まらない改定を見せています。

 希望小売価格も判明しており、ディスクドライブ搭載版は66980円(税込)、デジタル・エディションは59980円(税込)とのこと。ストレージの増量や小型・軽量化などの恩恵もあるため単純な比較はできませんが、価格面だけで言えば、現行のものより約6000円~10000円ほど値が上がっています。

 SIEはなぜ、このタイミングで新型PS5を投入するのか。PS5の価格推移を踏まえ、どんな狙いがあるのかを読み解きます。

●新型の投入は、SIEお馴染みの展開

 ある程度精通しているゲームファンなら誰もが知っていますが、SIEによるゲーム機の新モデル展開はお馴染みの手法です。初代PlayStationは順次改良が行われましたが、マイナーチェンジ程度の違いが主でした。ただし、「据え置き機の携帯性」にいち早く注目し、小型化&別売りのモニタを接続できるPS oneを発売するなど、新型モデルへの意欲はかなり早い段階から見せています。

 またPlayStation 2では、薄くて置きやすくなったスリムモデルを発売し、好評を博しました。続くPlayStation 3では、初期モデルにのみPS2との互換機能を搭載しますが、価格の高さが普及に足止めをかけたため、後のモデルでは撤廃。一方で、スリムになりながらもHDD容量を増やすといったモデルチェンジが適時行われました。

 新モデルの展開はPlayStation 4(以下、PS4)でさらに顕著となり、スリム化と高性能なProの2方向を平行して実施し、どちらもユーザーに高く評価されました。

 高性能化のPS4 Proのみ例外ですが、モデルチェンジと共に設定価格は低くなる傾向にあります。新型投入で注目を集め、手頃な価格でお得感を出す──この戦略は、PlayStationファミリーの普及を後押しする一因となったのです。

 こうした販売戦略を、SIEは幾度となく行ってきました。そのため今回の新型PS5の投入も突発的な展開ではなく、あらかじめ視野に入っていた既定路線と言えるでしょう。

●販売台数から見るPS5の普及度

 SIEはこれまで、新型モデルの投入で普及に拍車をかけ、新たなユーザーを獲得してきました。しかし新ユーザーの獲得と一口に言っても、不足ゆえのテコ入れなのか、水準を満たした上での更なる囲い込みなのか、背景次第でその実情は大きく変わります。

 日本のゲームファンやカジュアルユーザーの間では、「PS5の普及は進んでいないのでは?」といった意見も多く見られます。では、今回の新型PS5の投入は前者の狙いが大きいのかと言えば、一概に決めつけることはできません。

 SIEの発表によれば、PS5の販売実績は4170万台(2023年6月30日時点)を超えています。発売から2年8ヶ月ほどで達したこの記録は、同期間のNintendo SwitchやPS4と比べても遜色ないほどです。

 しかもPS4の場合は、発売から1年7ヶ月後の2015年10月1日に、価格を34980円に改定しました。さらにスリムモデルを2016年9月15日に投入し、こちらの価格は29980円に。モデルチェンジと共に行った値下げで、普及を促してきました。

 一方PS5は円安の影響で価格を上げざるを得ず、2022年9月15日に5500円の値上げを実施しています。価格が段階的に下がったPS4と、やむを得ないとはいえ値上げを挟んだPS5が、普及台数では同程度の推移を見せています。その事情を考慮すると、PS5の方が好調にすら思えるほどの結果です。

 円安という逆風がありながらも、PS4と同等の水準で販売台数が推移しているPS5は、「明らかに普及が遅れている」とは言えず、「更なる囲い込み」の方が実態に近いと思われます。ただし過去の例を踏まえると、新型PS5の投入と同時に値下げを行い、購入意欲に拍車をかけたかったというのがSIEの本音かもしれません。その見込みを阻むほど、円安の影響は色濃いのでしょう。

■日本国内では値上げとなる新型PS5、しかし米国では据え置き

Ultra HD Blu-rayディスクドライブが着脱可能なのも、新型PS5が持つ特徴のひとつ

 過去の展開を踏まえて見れば、新型PS5が出るのはごく当然の流れです。新型を出すことで改めてPS5に注目を集め、新規ユーザーの更なる取り込みを狙っていると見ていいでしょう。しかし、ひとりのゲームファンとして気になるのは、取り込み先としてSIEがどこを狙っているのかという点にあります。

 日本におけるPS5(ディスクドライブ版)の価格は54978円で始まり、価格改定を経て現行機は60478円に。そして今回の新型PS5は、サイズダウンやストレージの拡大などを含みますが、もう一段階上がって66980円となります。

「小型化し、ストレージも増えたので、単なる値上げじゃない」といった意見もありますが、「現行モデルは在庫がなくなり次第、販売を終了いたします」とSIEは告知しており、今後は新型PS5が標準モデルになります。現行機は近いうちに買えなくなるので、実質的な値上げと見てもおかしくありません。

「それでも、日本はまだ恵まれている方だ」という意見も多く見受けられます。それはまったくもって正しい指摘と言えます。2022年の価格改定を経て、欧州やイギリスでの価格は、日本円に換算して8万円台後半(現時点のレート換算)に突入しました。新型PS5の国内価格(66980円)と比べても2万円ほど高いので、「まだ恵まれている方」なのは確かでしょう。

●唯一の例外から見えてくる「注力の先」

 一方で無視できないのが、米国向けの価格です。米国のPS5は499.99ドルでスタートし、2022年の価格改定時には据え置き、そして今回の新型PS5の価格も499.99ドルのままです。欧州などは価格改定時に値上げしているので、PS5発売以降から新型まで含めて価格が変わらなかったのは、唯一米国だけでした。

 PS5の値上げは円安の影響と言われており、その深刻度は実際かなりのものと考えられます。通例とは真逆の値上げに踏み切ったのも、SIEにとって苦渋の選択だったかもしれません。新型PS5同士で比較しても、米国の499.99ドルはざっと7万円中盤なので、日本向けの価格はかなり健闘している範囲です。

 ずっと価格を変更していない米国と、徐々に値が上がっていく日本向けの展開を見ていると、円安に苦戦しながらも国内市場を懸命に維持したい姿勢が見えてきます。とはいえ、ユーザー視点ではどうしても値上げの大きさが目立つので、PS5普及の流れに足止めがかかる可能性も否定できません。

 先ほど示した数字上では順調に普及しているように見えますが、あちらは全世界を対象とした実売台数です。国内に限った正確な販売台数は公開されておらず、「国内でも順調」「手こずっているように見える」と、日本における普及状況は見る者によって意見が分かれます。

 仮に、国内での普及が伸び悩んでいるとしたら、その分の販売台数をカバーしているのはおそらく米国でしょう。ゲーム市場全体で見ても、米国が最も大きな販路なのは間違いありません。国内では伸び悩み、米国では順調となれば、米国での価格を据え置くのも納得です。

 前述の通りPS5の価格は、値上げされた新型を参考にしても日本が最も安いため、「日本市場を軽視している」とは言えません。ですが、PS5の価格を変えずに堅持する米国での展開は、日本と同等かそれ以上にSIEが注力している結果に他なりません。

 実質的な価格では、日本を最も優遇しています。それは、SIEによる努力の証なのかもしれません。しかし、米国に向けた力の入れようを見ていると、その「努力」がいつまで、そしてどこまで続くのかと、不安に駆られる気持ちが湧くのも否定しきれません。

 そんな不安を吹き飛ばすような魅力的な展開を、SIEがこれから見せてくれることを切に願うばかりです。そのためにはまず、新型PS5投入による更なる普及が大前提となるでしょう。

(臥待)

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