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実現できず結果オーライ? 『ドラクエ』に込められた「涙ぐましい創意工夫」

マグミクス / 2023年11月7日 21時10分

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■堀井雄二氏がファミコンにもたらしたRPGの世界

 1986年5月に発売されたファミコンソフト『ドラゴンクエスト』はその後シリーズ化されて、日本を代表するRPGとなりました。

 最近の作品では3D化されたキャラクターがサクサク動き、インターネットを介してマルチプレイが可能になるなど、技術の飛躍的な進歩に驚かされます。

 しかし、初代『ドラクエ』の制作前、堀井雄二氏は容量の少ないファミコンでRPGを制作するのは不可能だと言われたことがあるそうです。

 そこで本記事では、制約の多いファミコンで、初代『ドラクエ』を完成させるに至った苦労話を紹介します。

 任天堂の公式サイト内では、当時社長だった岩田聡氏が各メーカーのクリエイターにインタビューした企画「社長が訊く」が公開されています。2009年7月3日に公開された『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』の回では、「ドラクエ」の生みの親であるゲームデザイナーの堀井雄二氏が、「ドラクエ」誕生について語っていました。

 そのなかで、当時PCゲームの『ウルティマ』や『ウィザードリィ』といったRPGにハマっていた堀井氏は、一方で手軽に遊べない敷居の高さを感じていたことを明かしています。

 そこでRPGの面白さを幅広く伝えるべく制作に臨んだのが、初代『ドラクエ』でした。しかし、当時のファミコンソフトの小さな容量でRPGを作るのは「絶対にムリ」と言われたそうです。

 初代『ドラクエ』の容量はたったの64KBです。PS4版『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて S』の容量が約40GBだとすると、その約65万分の1になります。

 それでも諦めず、できるだけRPGの面白い要素を詰め込み、ムダな容量を極力省いて生まれたのが初代『ドラクエ』でした。

 その工夫のひとつが、キャラクターのグラフィック表現です。初代『ドラクエ』の主人公は常に正面を向いていて、横に移動するときはカニ歩きをしているように見えます。要するに、横や後ろを向いたキャラのグラフィックを省くことで容量を削減を図ったのです。

 それに伴い、NPCに話しかけるときも人のいる方向を向けないため、「はなす」のコマンドを選んだあと「きた」「みなみ」「にし」「ひがし」と方角を選ぶシステムになっています。

 今となっては手間に感じる仕様ですが、少しでもムダな容量を削るための苦肉の策だったのです。

■実現できなかったことも結果オーライ?

王様に話しかける時ですら、正面を向いたままの主人公。画像は初代『ドラクエ』のプレイ画像

『ウィザードリィ』に大きな影響を受けたという堀井氏は、初代『ドラクエ』のときから複数の仲間を率いるシステムを採用したかったことを、『ウィザードリィ』の生みの親、ロバート・ウッドヘッド氏との対談(電ファミニコゲーマー)にて明かしています。

 もちろん当時のファミコンソフトの限界により実現しませんでしたが、逆に堀井氏は「それが良かったのかな」とも述べています。まだ、あまりRPGを知らない当時のファミコンプレイヤーには、「『ドラクエ3』のようなキャラメイクは難しすぎたかもしれない」と理由を語っていました。

 ちなみに初代『ドラクエ』は、主人公が階段の上に立っても自動的に別の階に移動せず、「かいだん」というコマンドをわざわざ使用する必要がありましたが、実はこれも『ウィザードリィ』にあった要素です。

 今となっては少々不便に感じますが、洞くつ内の視界が狭い初代『ドラクエ』の場合、うっかり階段を踏んで勝手に階を移動しないという利点もありました。

 このように初代『ドラゴンクエスト』はRPGの世界観を大事にしながら、ファミコンソフトの低容量というハンデを乗り越えて誕生しました。そこにはRPGをこよなく愛する堀井氏の、並々ならぬ思いと苦労があったことは間違いないでしょう。

 もし、このとき堀井氏が諦めていたら、日本の家庭用ゲームにおけるRPGの普及は数年遅れていたかもしれません。

(LUIS FIELD)

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