<「アメトーーク」のテーマフリーはスタッフの手抜き>ベテラン芸人さえもつまらなくする「立ちトーク」は批評さえできない
メディアゴン / 2015年10月9日 7時30分
高橋維新[弁護士]
* * *
2015年10月1日放映のテレビ朝日「アメトーーク」は「立ちトーク」というテーマ。いつものように特定のテーマが決まっているわけではなく、出てきた芸人にテーマフリーでおもしろい話をしてもらうという回である。
「台本なし」「オールフリー」と言えば聞こえはいいが、要はテーマを決めずに芸人の自由に任せるという「スタッフが手を抜ける」回である。スタッフが忙しくなるスペシャルの前後には間々見られる企画であり、現に今回の放映でも翌日に「アメトーーク3時間スペシャル」を控えていた。
「台本なし」とは言っても、さて、「アメトーーク」には毎回ざっくりとした台本しかないはずである。各回の大きなテーマ、その大きなテーマの中にある小さなトークテーマ、テーマごとに誰がどういうことをしゃべるかまでは決まっていると思われるが、しゃべる内容の一言一句まで指定された台本はないはずである。あとは、基本的に出ている芸人の自由に任されており、台本がある部分の展開にどう乗っかっていくかはそれぞれの芸人たちの手腕が問われている。
そういう意味では「アメトーーク」は、「生活笑百科」(NHK)やかっちりとしたコント番組・ネタ番組みたいな台本を守る番組よりは、ハネる可能性を大いに秘めている。台本なしに芸人が自由に絡むので、学校で友達と遊んでいるような、あるいは学校のおもしろい奴のおもしろい絡みに混ざっているようなリラックス感を視聴者が共有できるのである。だから「台本がない」というのは「立ちトーク」の回のみに特有のメリットではない。それをメリットのように押しているということは、他に特に言うべきメリットがないから、その点を糊塗するために敢えて言っているのではないかという話になってしまう。実際、十中八九そうなのだが。
「台本なしでこそできる芸こそ至芸である」と筆者は考えているが、全く何にもなしにただしゃべるのが一番面白いという話をしているわけではない。多少は、指針があった方がいい。ざっくりとしたテーマや、大まかなキャラ設定ぐらいはあった方が芸人も動きやすい。その中で、台詞の一言一句や誰がどういう順番までしゃべる指定はしない方がいいという話である。
だから「立ちトーク」はテーマ設定がない時点で手抜きの誹りを免れない。
今回も、基本的に単発の「おもしろい話」が何個も積み重ねられたというだけであったため、あれだけの芸人を一つの場に集めて話させる意味が全くなかった。全部別撮りでも作れた映像である。実力者は何人もいたので、もっと人の話にその場で絡むことを意識してもらいたかった。
筆者は「アメトーーク」批評をする時、芸人たちを5点満点で採点するようにしていたが、今回は採点のしようがない。全員個々のエピソードではそれなりにおもしろいものがあったが、それだけだったので、全員2.7点である。司会であるはずの蛍原(雨上がり決死隊)に至っては、ほとんどしゃべってなかったので0点である。プラスマイナスの兼光はオール巨人のモノマネがウケていたので、他よりは若干高く、2.9点をつけられる。
宮迫博之・品川祐・千原ジュニア・陣内智則・土田晃之のような「実力派」でさえも自分の話をしていただけであった。それではダメである。
鬼越トマホークの2人は今回初めて見た。2人ともいかつい風貌とそれに基づくエピソードが売りになるだろうが、それ以上の強みは出せていなかったので、及第点はあげられない。この出来だと今後が不安である。
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