NIMSと筑波大、呼気から肺がんを診断する技術の開発に向けて大きな進展
マイナビニュース / 2024年4月26日 13時1分
物質・材料研究機構(NIMS)と筑波大学は4月25日、嗅覚センサと機械学習を組み合わせることで、肺がん患者の術前と術後の呼気を高い精度で識別できる可能性を実証したと共同で発表した。
同成果は、筑波大 附属病院呼吸器外科の佐伯祐典病院講師、同・大学 医学医療系の巻直樹客員研究員、同・北澤伸祐講師、同・佐藤幸夫教授、NIMS 高分子・バイオ材料研究センターの根本尚大エンジニア、同・南皓輔主任研究員、同・今村岳主任研究員、同・吉川元起グループリーダー、NIMS マテリアル基盤研究センターの田村亮チームリーダー、茨城県立中央病院の稲田勝重研究員、同・磯田愉紀子研究員、同・小島寛副院長らの共同研究チームによるもの。詳細は、欧州臨床腫瘍学会が刊行する肺がんおよび胸部悪性腫瘍に関する全般を扱う学術誌「Lung Cancer」に掲載された。
肺がんは、日本でも世界でも最も多い死亡原因であり、たとえば日本の場合は、厚生労働省が2023年9月に発表した「2022年の人口動態統計(確定数)」によると、がん(悪性新生物〈腫瘍〉)による死亡は38万5797人(全体の24.6%)で、そのうちで肺がんは5万3750人(がん全体の13.9%)で1位となっている。
その死亡率を下げる鍵は早期発見と早期治療にあるとされるが、早期の肺がんはほとんど症状を示さないため、多くの場合、発見と治療が遅れがちだという。現在、肺がんのスクリーニングには主に低線量コンピュータ断層撮影(CT)が用いられているが、この方法は放射線被曝のリスクを伴い、コストが高く、さらに早期肺がんの発見においては偽陽性率が高い(56~96%)という課題も指摘されている。これらの課題を解決するため、安全かつ簡便で、低コスト、非侵襲、かつ高精度な新たなスクリーニング方法の開発が強く望まれていた。
期待される新規スクリーニング方法の1つが、呼気による診断法である。ヒトの呼気には多くの化合物が含まれており、その一部は、健康状態や病気の有無に関連する可能性が報告されている。そのため、呼気を分析することで肺がんなどの疾患を早期に検出できる可能性があるという。しかし、呼気による肺がんの早期診断法の開発には、呼気に含まれる情報の複雑さに加え、環境や個人差など、さまざまな影響を受けることが大きな課題となっていたとする。そこで研究チームは今回、最先端の計測・解析技術により、呼気による肺がんスクリーニング技術の可能性を実証することにしたという。
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