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戦勝国の座を争う2つの中国、娯楽化した抗日神話の幻

ニューズウィーク日本版 / 2015年7月17日 18時0分

 それでも一度作られた神話は生き続ける。中国共産党の肝煎りで製作した『地雷戦』という抗日映画は今や古典中の古典となった。今年に入ると、女性の股間から手榴弾を取り出して日本兵をぶっ飛ばす荒唐無稽な作品(『一起打鬼子(一緒に日本の悪魔共をやっつけよう)』)まで登場。抗日の歴史も娯楽化してきた感じが否めない。

 すべては共産党自身が捏造した歴史の産物で、抗日戦を担わなかった歴史への皮肉でもある。「共産党も抗日を行った。ただし、娯楽映画の中で」と皮肉られるように、中国国民の多くも隠蔽された過去を知っている。

 習近平(シー・チンピン)政権は今、日中事変の舞台となった盧溝橋のほとりに立つ中国人民抗日戦争記念館に、国民党軍の抗日の実績を少し書き加えようとしている。馬総統のような「中国的心情」をまだ持っている人々への餌をまいて、台湾の分断を図るためだ。共産党は政権獲得後に無数の国民党軍兵士を「反革命分子」として処刑したり、長期間にわたる強制労働に駆り立てたりしてきた。そうやってさんざん虐待してきた「歴史の不都合な証人」に勲章を授けるという。

 ロシア軍とモンゴル軍は9月、満州やモンゴルでの勝利を胸に天安門広場を行進するだろう。では一体、中国人民解放軍は何を誇りに「戦勝」パレードを飾るのだろうか。

[2015.7.21号掲載]
楊海英(本誌コラムニスト)


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