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リオ五輪閉会式「引き継ぎ式」への疑問

ニューズウィーク日本版 / 2016年9月30日 16時40分

 もうひとつ重要なのは、オリンピック閉会式に関わったアーティストの多くが、『バベル』日本公演を企画したのと同じ芸術的なコミュニティに加わっていることです。言い換えれば、今回の場合、偶然であるということはおよそ不可能だと思われます」(英語原文より抜粋翻訳。Eメールによるコメント)

シディ・ラルビ・シェルカウイ氏もコメントを寄せてくれた。

「我々の芸術的なアイディアは、限られた予算内で集団的に練り上げるという、特別な環境でつくったものです。それが、このような巨大マスメディアイベントにおいて、他の商業的なアーティストによって、そもそもの意図とはいかなる関係もない形で再利用されるのを見ると、辛い気持ちになります。

 以前にもこうした経験があります。個人的には大好きなポップアーティストのビヨンセが、我々のパフォーマンス『sutra(スートラ)』のアイディアを取り入れ、自分のライブコンサートに組み込んだのです。

 若いアーティストが年長のアーティストを模倣するとき、そこにはある種の魅力、ある種の純粋さがあります。それは、うれしくもあれば、美しくさえ感じられることです。

 巨大な予算の商業的組織が、予算が潤沢ではない現代芸術の世界から、原典を示すことなくアイディアを取り入れるとき、それは人を悲しませ、苦痛をもたらすものになりえます」(英文原文を全文翻訳。Eメールによるコメント)

【参考記事】期待を遥かに超える舞台、スーパー僧侶たちの『スートラ』初来日



「類似」が起こった理由

 今回のケースが起こった理由として考えられるのは、以下の4つだろう。

1:引き継ぎ式のスタッフは『バベル』を知らず、アイディアは偶然の一致だった。
2:引き継ぎ式のスタッフは『バベル』を知っていて、リスペクト、オマージュとして「流用(アプロプリエーション)」した。
3:引き継ぎ式のスタッフは『バベル』を知っていて、同じアイディアを用いるのはまずいかもしれないが、露見しないと考えて「盗用」した。
4:引き継ぎ式のスタッフは『バベル』を知っていたが、同じアイディアを用いてもかまわないと判断した。

 1は、ジャレ氏が書いているとおり、非常に考えにくい。『バベル』は2014年8月の札幌公演の後、東京でも上演されている。世界的彫刻家のゴームリー氏はもとより、2人の振付家の仕事も、クリエイティブ産業に従事する者なら知らない者はないはずだ。引き継ぎ式の制作スタッフには、『バベル』のクリエイターの直接の知己もいると聞く。

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