多様性の名の下で忘れ去られる「白人男性」...彼らもまた支援が必要ではないか?
ニューズウィーク日本版 / 2024年3月29日 19時30分
私たちが出会ったのは3年前。重要な社会的実験であり、コミュニティーとしても機能する活動団体に、カルッチがメンバーとして、スペンサーハリスが顧問として加わったのがきっかけだ。
今は「人種平等を支持する白人男性(WMRJ)」という名のこの団体には創設以来、アメリカ各地の白人男性400人以上が参加している。活動の焦点は、週単位のカリキュラムやコミュニティー体験を通じた学習と、知識の問い直しを目的とする学習解除。団体が誕生した背景には、2つの重要な前提がある。
第1に、非白人の人々は白人、特に白人男性に「やるべきことをやる」よう求めてきた。啓発という重荷を非白人に押し付けず、白人男性ならではの特権や権力について自ら時間をかけて学んでほしい、と。
第2に、白人男性が自身の生活や体験を進んで検証し、人種差別が構造化した社会制度に必要な変化について考えるには、同じ問題に関心を抱く白人男性の仲間と一緒に取り組むことが、より効果的だ。
DEIの文脈では、「ビロンギング」は時に、少数派がより大きな集団の中に存在可能であるという意味でしかない。だが実際には、この言葉の定義は、ジェンダーや人種的アイデンティティーに左右される。帰属意識は社会的アイデンティティーと密接に結び付いていると考えるよう、私たちは条件付けられ、帰属意識の強化を求めて自分と同様の人々に目を向ける。
しかし帰属意識とは、誰かが誰かに「行う」ものではない。排除されがちな人々を受け入れることは行動として可能だが、それだけで包摂性は実現しない。多くの場合、そうした行為は「お情け」と感じられ、当然ながら帰属感は生まれない。
真の帰属意識とは、条件を問わない人間同士の深い絆だ。自己検閲も、話す内容や話し方を変える必要も、迎合する必要も感じずに、安心して「もろい自分」でいられる。階層やジェンダー、人種の相違がそれほど問題にならず、尊厳や思いやりが当たり前のことになる。それは純粋なつながりであり、誰かのためにではなく、誰かと共につくり出すものだ。
ジェンダーに対する固定観念では、男性は理性的で論理的で、強い存在とされる。その結果、傷つきやすさや感情表現が社会的に許されない。
そのせいで、白人男性は孤立し、近年ではメンタルヘルスの問題が急増している。一方、多くの人は富や地位、権力を握り続ける彼らに共感するどころか、少数派をめぐる対話に招き入れる気にもなれない。だが真の意味での帰属意識と切り離せない「弱さ」を、白人男性が受け入れることをより難しくしているのは、こうした文化規範だ。
この記事に関連するニュース
-
「黒人のリズム感」みたいな幻想は百害あって一利なしなのでもう手放したほうがいい
Rolling Stone Japan / 2024年5月13日 17時30分
-
焦点:「反白人感情」と対決誓うトランプ氏、支持者に被差別意識
ロイター / 2024年5月8日 13時54分
-
アイヌに会ったことないって本当?『ゴールデンカムイ』の前に知るべきアイヌの歴史ーー2024年前半BEST7
CREA WEB / 2024年5月5日 9時0分
-
ISC2、サイバーセキュリティ業界で働く女性に関する調査結果を発表
PR TIMES / 2024年4月26日 12時45分
-
社会的に優位な位置にいるはずのマジョリティが、自分より不利な位置にいるマイノリティの成功を妬むのはなぜか?
集英社オンライン / 2024年4月22日 11時0分
ランキング
-
1米大使、初の与那国島訪問=台湾情勢巡り中国けん制
時事通信 / 2024年5月17日 21時8分
-
2北朝鮮の孤児院で乳幼児7人が栄養失調で死亡 職員らが子どもに与える食糧を横領していたとして逮捕、食糧事情の悪さが浮き彫りに
NEWSポストセブン / 2024年5月18日 7時15分
-
3ニュース裏表 峯村健司 中国監視船内に2カ月拘留中の台湾軍人…軍事行動・スパイ活動の嫌疑「意図的に拘束」か 台湾有事〝最前線〟金門島ルポ・第2弾
zakzak by夕刊フジ / 2024年5月18日 10時0分
-
4米テキサス州ヒューストンでハリケーン並み暴風雨、4人死亡
日テレNEWS NNN / 2024年5月18日 11時12分
-
5ロシア軍前進も「状況安定化」 ウクライナ、東部態勢強化
共同通信 / 2024年5月17日 19時41分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください