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連載[おかえりインバウンド@新潟・妙高高原]<上>北海道、カナダより「エブリシングイズベター」 オーストラリアのスキーヤーを魅了する雪質、昔ながらの日本らしさ

新潟日報 / 2024年3月3日 6時10分

妙高市の杉ノ原スキー場

 冬の新潟県・妙高高原エリアが、インバウンド(訪日外国人旅行客)で活気づいている。新型コロナウイルスの水際対策の終了や円安を追い風に、訪日客数は増加している。宿泊施設や妙高市の関係者は「感染症流行前の水準に戻ってきた」と回復への手応えを感じている。訪日客は妙高にどんな魅力を感じ、受け入れ側はどんな工夫をしているのか、探ってみた。(上越支社・小澤楓花)=3回続きの1=

* [連載<中>体験で演出する「特別な旅」](https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/367551) * [連載<下>命と「スキー産業」を守る](https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/367581)

 レトロなたたずまいの温泉旅館、温泉まんじゅう屋に土産物屋、飲食店…。昭和の雰囲気を残す赤倉温泉の中央通りに、スキー板やスノーボードを手にした外国人が行き交う。

 オーストラリア南部の都市・アデレードから訪れたロバート・ブランクスさん(73)は妙高を訪れるのは「今回で7回目」といい、8日間滞在した。「妙高は宿とスキー場が近く周りに飲食店もある。町がコンパクトで落ち着いている。欧米化した北海道のニセコとも違う『昔ながらの日本らしさ』がいい」と笑顔で語った。

 冬の妙高高原に訪日客が集まるようになったのは、2007年に始めたPR活動がきっかけだ。妙高市観光協会(現・妙高ツーリズムマネジメント)が長野県白馬など周辺スキー場関係者と連携し、オーストラリアで宣伝活動を展開した。

妙高市の杉ノ原スキー場

 なぜオーストラリアだったのか。日本が冬なら、南半球に位置するオーストラリアは夏だ。夏期休暇で海外へ出かけやすい上、日本との時差が2時間ほどと小さく、旅行先での消費額が多いことからターゲットに据えた。妙高市や長野県白馬などの「信越連合」は、現地での旅行展示会に毎年出展したり、地元の新聞・雑誌広告に豪雪の写真を掲載したりして「スノーカントリー」をアピールした。

 当時その活動に携わり、現在は妙高市内で旅行業「ジャパンスノーアクセス」を運営する清水史郎代表(67)は「10年ほどかけて、無名の状態から知名度を高めた。リピーターも多く、口コミや交流サイト(SNS)で評判が広がった部分も大きい」と振り返る。

スキーを楽しむ訪日客。6日間の妙高滞在で杉ノ原、赤倉、赤倉観光の3カ所のスキー場を楽しんだ=妙高市

 訪日客は、妙高高原に1週間から10日程度滞在するのが一般的だ。その間、どのように過ごしているのか。オーストラリアから訪れているロバートさん一行の一日に密着した。

 曇り空の午前9時。氷点下の妙高杉ノ原スキー場で、ロバートさんは友人ら総勢7人でゴンドラに乗り込んだ。雪質を確かめるように滑るとバーン(雪面)が硬かった。それでも「質の高い天然の雪が豊富にある。雪の降る日はパウダースノーが最高だよ」と絶賛した。

 ロバートさんによると、オーストラリアでは人工降雪機で積雪量を確保するスキー場がほとんどで、標高の高い山でも緯度が低いと気温が上がりやすく「雪は水っぽくて重い」という。

 カナダのリゾート地ウィスラーも魅力を感じるが、ゲレンデが広大でチケット代は日本円で3万円前後と妙高高原の相場の5、6倍する。妙高高原は「エブリシングイズベター(どれもいい)」。一行は2度の休憩を挟み、コースを替えながら午後4時まで滑った。

スキーから旅館に戻って温泉などを楽しんだ後、食事へ向かうロバート・ブランクさんら=妙高市赤倉

 夜は「お楽しみ第2部」だ。まずは赤倉温泉の定宿・老舗「お宿ふるや」で温泉に漬かり、スキーの疲れを癒やす。毎年変わらず歓迎し、もてなしてくれ、ロバートさんは来るたびに「妙高に戻ってきた」と思う。

 一行は畳敷きの部屋で「サッポロ黒ラベル」の缶を片手にくつろいだ後、「3日前から予約して楽しみにしていた」という近くの焼き肉店へ出かけた。

 いつも夕食は宿周辺の飲食店に行く。ロバートさんはギョーザやお好み焼きが大好物。「せっかく来たんだから地元の味や食べ方を楽しみたいよね」

妙高へスキーをしに訪れたロバート・ブランクさん(左から2人目)ら。滞在中は他にもお好み焼きやラーメン、餃子などの日本食を楽しんだ=妙高市赤倉

 慣れ親しんだ妙高高原だが、変化も感じる。感染症の流行後、飲食店が減り予約が取りにくくなった。かけ湯をしないで温泉に入るなどマナーを守らない訪日客も目にするようになり、「ここはあなたの家じゃないんだ」と叱ったこともある。

 妙高高原では外資系ファンドが大規模リゾート開発を進めている。ロバートさんによると、そのことはSNSを通じて訪日客の間でも有名だという。「人の温かさも含め『変わらない良さ』が何度も訪れる理由。それが失われてしまったら、もう来ないだろう」。ロバートさんはつぶやいた。

* [連載<中>体験で演出する「特別な旅」](https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/367551) * [連載<下>命と「スキー産業」を守る](https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/367581)

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