家族以外には外面がいい「モラ夫」。偽りの姿を演じ続けて、私からすべてを奪った【裏の顔】とは?
OTONA SALONE / 2024年4月28日 19時30分
夫婦問題・モラハラカウンセラーの麻野祐香です。自分を大切にしてくれ、本当に優しい人だから結婚をしても幸せになれると信じていたのに、結婚した途端に優しい姿が全て嘘だったとわかり苦しんでいる女性がたくさんいます。
モラハラだとわかっていても、経済的理由や子どもの養育の問題、夫がモラハラが治り優しくなってくれるかもしれないという期待から離婚を決断できない方がいます。モラハラ夫が「お前なんか離婚だ」と言うので離婚を決意しても、実際に離婚の手続きを進めようとすると拒否をされ調停や裁判にまで発展をする。モラハラの闇はとても深いものです。そんなモラハラについて長年に渡りカウンセリングを続けてきた私なりの対策をお伝えしています。
今回は30年以上モラハラ夫と暮らしているNさんのお話を書かせていただきます。
外では仏と呼ばれているモラハラ夫
Nさんの夫は本当に外ではいい人のフリが上手なんだそうです。近所の人や会社の人には、「何をしても怒らずに、優しい笑顔で見守ってくれている、本当に仏のような人」と言われています。
夫の家庭内での様子を知っているNさんや子どもたちにとっては、家の外で「仏」と言われているのは信じられないことなんだそうです。モラハラ夫の外面の良さがそう思わせるのでしょう。そのため、Nさんがいくら夫の愚痴を言っても、実の親でさえ「あんないい人の悪口を言うなんて」と怒られるほどなんだとか。
『夫が仏だとしたら、そんな人を怒らせる私がいけないのだ。きちんとしていないから怒られるんだ、もっとしっかりしないといけない…と自分をずっと追い詰めて何十年も暮らしていたのです。』
ご相談にいらっしゃる皆さんが口を揃えて言うことが、モラハラ夫の外面の良さのことです。
モラハラ夫が家以外でもモラハラ言動をして、誰もが「あの人はひどい人間だ」とわかってくれるのであれば、まだ共感してもらえるという点で “ 救い ” はあります。
でもモラハラ夫は外ではとてもいい人を演じるのが上手なので、誰も妻の悩みをわかってくれないのです。夫に対しての愚痴や不満を言えば「あんないい人の悪口を言うなんてひどいわ。贅沢よ」などと言われ、反対に自分が悪者になってしまうのです。
しかし、モラハラ夫は家に一歩入ると自分の機嫌だけで妻や子ども達に文句を言い、理不尽なことを言い出す。そして大きな声で怒鳴ったり、人を否定することしかないのです。妻は自分の気持ちのやり場に困り、誰にも相談できずに1人で悩むしかできないのです。
他の人は夫をいい人だと言うので誰にも相談できず、夫を怒らせる自分が悪いんだと徐々に思い心が壊れてしまうのです。
誰も夫のモラハラを信じてくれない
Nさんの夫がいい人からモラハラ夫に変わったと確信したのは、結婚して1週間目のことでした。
いつもは帰宅すると「お帰りなさい」「ただいま」の声がけをしていたのですが、その日はNさんが「お帰りなさい」を言っても夫は無視をして通り過ぎました。疲れているのかなと思い、「ご飯の前にお風呂に入る?」と聞いた途端に「うるせえ!お前のしつこさが鬱陶しいんだよ!」と大声で怒鳴られたのです。
Nさんはあまりのことに驚き、泣くこともできずに立ちつくしてしまったそうです。
それから1週間、夫はNさんと一言も口を聞きませんでした。
『私はどうしたらいいのかわからず、母に相談をしました。母は「あなたが夫さんを怒らせたのよ、あんないい人が怒るなんてよっぽどしつこくしたんだね。早く謝りなさい。」と私が悪いと決めつけていました。
実は私は一人っ子で夫は養子に入ってくれたのです。養子に入ってくれたという感謝の気持ちが両親とも強く、娘の私より夫を大切にしていると感じていました。』
夫に対して自分が何をしたのか、何が悪いのかもわからずに夫から無視をされ、それを相談すれば自分が悪いと言われるなんて、気持ちの持っていく場所がありません。
誰もわかってくれない辛さ、結局わかってくれないので誰にも相談できない、そんなことが続き孤独感が強くなるのです。
友人も両親も自分よりも夫の味方をする、「あなたが悪い」とみんなが言う、そんなことが続く孤立無援の状況では、正常な思考ができない状態になります。自分が悪い、自分が完璧じゃないのがいけない、怒られないようにするにはどうしたらいいのか、そんなことばかり考えて自己肯定感が日々なくなっていってしまうのです。
モラハラ被害者の方は皆、自己肯定感がほぼゼロ状態になっています。
親もモラハラ夫の外面の良さに騙され、家の名義も夫のものにしてしまった
夫のモラハラは日常的になっていましたが、Nさんの両親のいる前では本当にいい人を演じていたといいます。両親の前ではNさんに対して「後片付けは僕がやるからゆっくりしなよ。」「いつも美味しいご飯を作ってくれるNちゃんをお嫁さんにできて僕は幸せです」なんて言葉を平気で言っていたのです。両親は夫を「婿様」と呼び「本当にいい人が来てくれた。我が家の宝だ。仏様だ」といつも言っていました。
両親はNさんが結婚して10年経った日に夫を呼び「私たちが持っている家の名義を婿様に変更するので受け取って欲しい。これからもずっと家族として頼む」と、Nさんには一言も相談なしに夫に伝えたそうです。
『私は夫が心の中でほくそ笑んでいる様子が手に取るようにわかりました。後から両親に「家の名義は私にして。私が娘なんだから」といくら訴えても「旦那さん名義の方がいい」と相手にしてもらえませんでした。子ども達が成人したら離婚する」そう決めていたのに、家の名義を夫のものにされたので、家から出ていくこともできなくなりました。』
なぜモラハラ夫相手に離婚しないのか、と思う方もたくさんいると思います。離婚を選択できないのには以下のような理由があります。
- 経済的依存: 経済的な自立が難しい場合勇気が持てません。Nさんの場合は帰る実家が夫名義になり、両親も夫の味方になってしまったことが離婚できない理由となります。
- 子どもの存在: 親権や子どもの養育費などの問題、子どもが成人するまでは我慢すると言う方も多くいます。
- 恐怖と不安: 夫にずっと否定されてきたことで自己肯定感がなくなり、自分は社会で認めてもらえない、働く場所もない、1人で子どもを育てていける自信がない、夫が別れると言っても承諾してくれないと言う場合です。
- 希望: いつか優しかった時のように態度や言動を改めてくれる、と期待し続けることです。
それぞれの理由は当事者にとってはすべて大きな問題です。その問題をクリアできれば離婚を選べるのですが、問題クリアするにはどれもハードルが高く簡単には結論が出ません。
【前編】では、Nさんの周囲の友人はおろか実の両親までもが、夫がモラハラをしていると言っても信じてもらえない状況がつづき、自分の落ち度ばかりを気にして過ごしているNさんについてお伝えしました。
▶つづきの【後編】では、実の両親がモラハラ夫の正体を見破ることができなかったばかり、取り返しのつかない事態になってしまったという、Nさんの人生を左右することになる出来事についてお伝えします。__▶▶▶▶▶
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