建設業・運輸業の「2024年残業規制問題」の実情は? 約3割の企業にマイナスの影響、売上・利益の減少も
OVO [オーヴォ] / 2024年4月1日 10時30分
大同生命保険(大阪市)は全国の中小企業経営者を対象に、景況感に加えさまざまなテーマを設定したアンケート調査「大同生命サーベイ」を2015年10月から毎月実施している。2024年2月度調査の主要テーマには、「時間外労働の上限規制(2024年残業規制問題)」を設定した。全国の7295社の中小企業経営者を対象とし、2月1日~28日に訪問またはZoom面談で調査を行った。
働き方改革の一環による労働基準法改正で、時間外労働の上限が法律に規定され、大手企業では2019年4月、中小企業では2020年4月から適用されている。一方で、建設業や運輸業については、業務の特性が長時間労働の背景にあることから、5年間の猶予が適用されていた。2024年4月に猶予期間が終了し、建設業や運輸業にも「時間外労働の上限規制」(原則月45時間・年360時間)が適用される。
今回の調査で、建設業(1783社)の経営者は、39%が「時間外労働の上限規制」適用により経営に「マイナスの影響がある」と回答した。運輸業(362社)では59%だった。具体的な影響の上位は、運輸業では「売上・利益の減少」(50%)、「従業員の収入の減少」(49%)、「長時間勤務の見直し・廃止」(43%)、建設業では「特に影響はない」(41%)、「売上・利益の減少」(28%)、「従業員の収入の減少」(24%)だった。
「時間外労働の上限規制」に対する対応策を、建設・運輸業の経営者に尋ねる(複数回答)と、運輸業では、「取引先との値上げ交渉」が63%と最多に。以下、「ドライバーの待機時間、荷役作業時間等の見直し」(50%)、「取引先との納期調整」(35%)と続いた。建設業では、「取引先との納期調整」(23%)が最多、次いで「取引先との値上げ交渉」(17%)となり、建設業の約4割の企業は「取り組む予定はない」と答えた。
「時間外労働の上限規制」に対して「特に対策予定はない」と回答した経営者以外に、今後実施予定の対策を尋ねたところ、「人材の確保」(17%)、「業務の効率化(人材育成・DX推進など)」(14%)、「就業規則の整備」(12%)と続いた。「時間外労働の上限規制は経営にマイナスの影響がある」と回答した割合が高かった「運輸業」では、「人材の確保」(35%)、「賃上げ」(30%)、「就業規則の整備」(23%)、「業務の効率化」(19%)と、他業種に比べてさまざまな対策を講じる傾向が見られた。
また逆の立場から、建設・運輸業以外の経営者4175人に、建設・運輸業の取引先からの「時間外労働の上限規制」に伴う値上げ要請についても質問した。その結果、「なし」が55%、「あり」が22%、「取引先に建設・運輸業者がいない」が23%だった。「あり」と答えた経営者のうち、「値上げに応じた」企業は76%、「値上げを検討している」企業は20%だった。また、値上げ要請を受けていない企業でも、今後要請があった場合は「内容に納得すれば値上げに応じる」と回答した企業が61%だった。
建設業・運輸業の経営者たちからは、「売上が減少し、労務管理の手間も増えるので、何も良いことがない」(運輸業/東北)、「荷待ちでの時間ロス削減など荷主の協力がないと、自社の経営努力だけでは限界がある」(運輸業/南関東)など、厳しい現状を訴える声も。一方で、「時間外労働の状況をグラフで共有するなど、従業員みんなで危機感をもって仕事を分担するなど工夫している」(建設業/南関東)、「残業を減らすなど生産性の向上に取り組む良い機会となった」(建設業/九州・沖縄)といった工夫点やメリットも寄せられた。「運賃の値上げ幅が小さいため、賃上げは厳しい。業界を超えて広く荷主の協力が必要」(運輸業/関西)、「従来よりも納期に遅れが生じる可能性があるので、今後は早めの納品手配を心がける必要がある」(宿泊・飲食サービス業/北海道)などの課題も寄せられた。
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