《抗日作品に出演する日本人女優の告白》反日デモ巻き起こる中「尖閣を返せ!」「南京大虐殺を知っているのか!」と怒鳴られ、涙が溢れ出た
NEWSポストセブン / 2024年4月23日 17時14分
米中関係の緊迫化とともに、冷え込んでいく日中関係。そんななか、両国のはざまで揺れ動く人生を送っていた日本人女優・井上朋子さん(44)。なぜ彼女は中国で「抗日作品」に出演し続けたのか。その中でどのような葛藤を抱いていたのか。知られざる「中国芸能界のリアル」とともに本人が振り返る。【前後編の後編。前編から読む】
乾いた銃声が鳴り響くと血しぶきが飛び散った。数々の悪事を働いてきた日本人の女スパイは断末魔の声を上げながら絶命する──。抗日ドラマのなかで井上さんが最も多く演じたのが日本人女スパイ役だった。
「抗日ドラマでの私の役は、ほとんどが悪役です。日本人は最後、死ななければいけないというようなシナリオになっているんですね。勧善微悪ドラマという意味では日本の時代劇と共通していますが、抗日ドラマでは日本人が悪で、最後は必ず滅びる。私の役は、ほぼ最後死ぬものが多かったですね。
私は演じることで精いっぱいで。いかにうまく死ねるか、ということを常に考えていました。日本人女スパイの正体がバレて、最後はピストルで撃たれる。お腹に血のりを仕込んでおいて、それを爆発させるわけです。爆発すると衣装も破れちゃうから、もう絶対一発で決めないといけないというプレッシャーがありました。やり直しがきかないから、監督からも『絶対変な死に方しないで』と言われる。
私の敵役のポジションは、ドラマで女優の三番手くらいのイメージでしょうか。下っ端の日本人役もあるのですが、だいたい中国人の俳優さんが演じます。一方、中国で活動している日本人女優はほぼいなかったので、私は抗日作品の中ではいいポジションをいただけました。
ドラマに出るたびにギャラは上がっていきましたね。中国のドラマはだいたい30~40話で構成されています。それを3~4か月で一気に撮影するのです。最初のうちは10万元くらいだったギャラが、私の場合は全話で40万元という水準まで上がっていきました。
事務所制作であれば30%、外部制作のドラマであれば10%が事務所の取り分となります。残りの28万~36万元が私のギャラです。30万元は日本円にして600万円くらい。税金を引かれた手取りで600万円なので、中国ドラマのギャラは良かったと思います。これまでテレビドラマには15本、2時間ドラマは3本、映画2本に出演しました。
所属していた事務所の作品だけではなく、他社が制作する2時間ドラマにもたくさん出ました。でも中国にはずるい助監督がいっぱいいて、『二重契約をしよう』とよく持ち掛けられました。例えば60万元で契約書を作るから、20万元を自分のところにバックしろ、と言うんです。日本で言うところのキックバックですが、私は断わっていました。
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