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意見が出ない会議の8割は「進行の仕方」に問題がある

プレジデントオンライン / 2020年10月8日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

「意見があまり出なかった」という会議を避けるにはどうすればいいのか。プロファシリテーターの園部浩司氏は、「模造紙と付箋を使う『KJ法』という方法なら、全員の意見の洗い出しと整理が短時間で同時にできる」という——。

※本稿は、園部浩司『ゼロから学べる! ファシリテーション超技術』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■いい意見はいい問いから生まれる

──重要なことは、正しい答えを見つけることではない。正しい問いを探すことである。

これは、経営の神様と言われるピーター・ドラッカーの名言です。

「会議で意見があまり出なかった」という場合、8割に近い確率で「ファシリテーターの問いの立て方が良くなかった」と言い切れます。意見が出ないと、つい参加したメンバーのせいにしたくなりますが、違います。ファシリテーターの問いの立て方が小難しくなっていたり、的を射ていなかったり、不明確なだけです。

会議の中でも、「問題発見・解決会議」では、「現状を把握する」「あるべき姿を描く」「原因を洗い出す」「解決策を考える」というプロセスがあります。そのときどきで参加者から「意見を集め」、それを「整理し」、最終的に「合意形成する」のもファシリテーターの重要な仕事です。

最初の「意見を集める」というのは非常に大切なことで、意見が出なければ会議は進みません。しかも、どんな意見でも集まればいいかと言えばそうではなく、その会議のテーマにふさわしい的確ないい意見を拾うことができて初めて「精度の高い意見が集まった」と言えるのです。

では、いい意見をたくさん集めるには、どうしたら良いか。それは、「いい問い」を用意することです。「問い」を立てるときは、小学生でも分かるぐらい簡単なものにすることが鉄則。難しく考えることはありません、誰もが迷わず答えを出せる問いにすればいいのです。

■「問い」を聞いてすぐさま意見を3つ以上出せるか

例えば、「職場の“あるべき姿”を教えてください」と聞くと、一瞬、「ん? あるべき姿?」と立ち止まってしまいますよね。

でも、「“こんな職場だったら最高!”というのを教えてください」と聞いたら、「最高? そりゃ、残業が少なかったらいいよなあ」「部署のメンバーがみんな潑剌(はつらつ)として仲が良い環境だったら最高」「やったことが正当に評価されたらすごくうれしいな」という具合にポンポン出てきませんか?

問いを立てるときはここがポイントで、みんなが最低3つぐらいの意見をポンポン出せるような問いであれば、「いい問い」と言えます。

難しければ、“自分がその「問い」を聞いてすぐさま意見を3つ以上出せるか”を考えてみてください。

会議室
写真=iStock.com/Evening_T
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Evening_T

こんな感じで問いを立てて、自分でも答えを考えてみて、どれがよりたくさんの意見が出そうな「問い」かを考えていけばいいでしょう。

「いい問い」の目安は、「問いの中に問いが含まれていない」こと。

「会社のあるべき姿を教えてください」という問いを立てたときに、参加者の中から、「あるべき姿って何ですか?」という“新たな問い”が出てきたら、その「問い」は「いい問い」ではないと言えます。

「“こんな職場だったら最高だな”というのを教えてください」という問いからは、新たな問いが生まれるとは考えにくいですよね。「問い」は分かりやすく、かつ、シンプルにいきましょう。

■「問いの抽象度をコントロールする」ことも頭に入れておく

もう1つ、ファシリテーターが「問い」を考えるときに注意したいのが、抽象度の高低です。例えば、以下で比べてみましょう。

「会議で困っていることを教えてください」
「経営会議で困っていることを教えてください」
「経営会議の進行部分で課題と思っていることを教えてください」

この3つでは、抽象度がまったく違いますよね。下の「問い」にいくほど抽象度は低い、すなわち具体性が高くなります。

「問い」を立てるとき、必ずしも具体性が高いから「いい問い」とは限りません。その逆も然り。抽象度が高いから「いい問い」とも限りません。

ならば、どちらにしたらいいのかと言えば、そのときどきの会議により、「どちらのほうが、よりテーマに合った意見を拾えるのか」を考えてみてください。具体性のある意見を拾いたいなら抽象度が低めの「問い」を立て、自由に意見を述べてもらいたい場合は、抽象度が高めの「問い」を立てれば良いのです。

「経営会議の進行部分の課題について教えてください」と抽象度は低く具体性のある「問い」を聞けば、「ああ、進行についてピンポイントな意見を言えばいいんだよね?」と思い、その範疇で意見を述べますよね。

反対に、「会議で困っていることを教えてください」という抽象度の高い「問い」であれば、「困ってることね。話し合いの結論がいつも出ないことがストレス」「上司がいると自分の意見を言いにくくて困る」「時間が長くなりがちで困る」などいろいろな会議を想定した自由な意見が出ます。

ファシリテーターになりたての頃は、「問いの抽象度をコントロールする」といっても難しいと思いますが、頭の片隅に入れておいてください。

■短時間で意見を整理できる「KJ法」

私がよく使うビジネスフレームワークである「KJ法」は、整理することに長けた手法です。地理学者である川喜田二郎氏が編み出した優秀な整理術で、いきなりみんなで意見を言い合うのではなく、まずはみんなで意見を出し合う。この状態なら、100%全員が自分の意見を伝えることができます。

さらにこのKJ法は、全員の意見を短時間で集めるだけでなく、短時間で整理・集約することができます。会議の基本である参加者の意見を集め、整理する。この2ステップを短時間で誰でも簡単にできる手法なのです。

KJ法はちょっとしたコツと手順を押さえれば簡単にできます。この手順に従ってファシリテーターが進行することでKJ法は威力を発揮します。逆に言うと、手順を理解していないと時間ばかりかかってしまい、実務では使えない……となってしまいます。まず、KJ法でまとめる表のイメージを確認します。

<手順1 模造紙に問いを記入する>

KJ法は模造紙と付箋を使っていきます。模造紙の一番上に「問い」を書きます。これにより「問い」を「見える化」できるので、参加者は何を質問されているのかを確認、認識することができます。

<手順2 参加者に付箋への記入をお願いする。時間は3分>

次に、参加者に「問い」に対する意見を付箋に記入してもらいます。付箋に書くときには、ルールがあります。

・1枚1ネタ(要素)

1枚に複数の意見を書くとカテゴライズできなくなるので、必ず1枚1ネタを厳守します。いくつも意見がある場合は複数枚の付箋を使って書くようにお願いします。

・サインペンを使う(シャープペンシル、ボールペン禁止)

サインペンでないと見にくい。見えにくい意見の書かれた付箋が何枚、何十枚もあると、けっこうなストレスになります。模造紙に貼り、みんなが一目で分かるようにサインペンは必須なのです。ちなみに、付箋は下から上に向けてはがすとノリ部分が丸まってしまう性質を持っているため、横にはがしましょう。

付箋に書いてもらう前に、書き方の例を2~3伝えると、よりスムーズに進みます。

付箋のまとめ方

■付箋を模造紙に貼りながら整理していく

<手順3 付箋を回収し、整理する>

付箋に書き込んでもらったら、回収し、模造紙に貼りながら整理していきます。手順は、次の通りです。

1 一番近くにいる人に、「なんでもいいので1枚ください」と言って付箋を受け取る。
2 その人が書いてくれた意見を読みながら、模造紙の左端に貼る。
3 「似たような意見を持っている人ください」と声をかけ、付箋をもらう。
4 似た意見の付箋を回収したら、2で貼った付箋の下に順番に貼っていきカテゴライズする。

ここで縦1列が完成します。その縦1列は、似たような意見が集まった列ですから、おのずと1つのカテゴリが完成した、と言えます。2列目も同様の手順で進めていきます。これを、全員の付箋がなくなるまで繰り返していきます。

すべての付箋を貼り終えたときには、いくつものカテゴリができているはずです。その数は、7~10を目安にしてください。

また、もし、単独の意見が出て、他に類似の意見もないような場合は、「その他」のコーナーへと、いったんまとめておきます。

■意見が可視化されるので議論の質が高まる

<手順4 カテゴライズされたグループに「見出し」をつける>

すべての付箋を模造紙に貼り終え、いくつものカテゴリに分け終えたあとは、それぞれのグループを一言で表す見出しをつけていきます。

見出しをつけるのに迷ったときは、集めた意見の中から、最も分かりやすく表現されている付箋を1枚見つけて、そのまま見出しにすればOKです。

すべての見出しをつけたら完成です!

<手順5 完成した表を見て感想を共有する!>

KJ法で完成した表を見ながら1人ずつ感想を共有したり、ディスカッションに移っていきます。

模造紙に貼りつけた段階で全員の意見は可視化され、整理されているので議論の質はグッと高まります。

ここまでの手順を踏むと、20分程度かかります。1つのテーマに対してたくさんの意見を洗い出し、大まかな整理をするまでが20分でできてしまうのです。

これを話し合いしようものなら大変です。ああでもない、こうでもないと時間ばかり過ぎてストレスのたまる会議より、はるかに効率的に進めることができます。

続いて、KJ法を使って会議をするときのコツについてお伝えします。

■説明はすべての整理が終わってから

<コツ1 話を聞かない! 話させない!>

手順3で付箋を受け取って模造紙に整理するときは、その内容について当人が「説明するのは厳禁」です。

1枚1枚の説明を聞いているといつまでたってもカテゴライズできず、参加者が飽きてくるからです。

説明や、感想の共有などは、すべての整理が終わったら行います。整理する時間と議論する時間は分離する。「混ぜるな危険」ですね。

ファシリテーターは、付箋をもらって貼っていくときは、その内容を読みながら貼りましょう。良い意見だなと思ったら「いいですね! 最高ですね! こういう考えもありますよね!」などと一言程度コメントします。参加者は共感してもらえた、受け入れてもらえたと感じるので、場の雰囲気が良くなります。

■テンポとスピードを重視する

<コツ2 カテゴライズはだいたいでちょうどいい。それよりテンポを重視!>

「カテゴライズの仕方がわかりません」と質問されることがあります。カテゴライズは、「だいたいでいい」ぐらいの感覚で捉えてください。会社の課題を付箋に書いてもらったとき、「コミュニケーション不足」と「コミュニケーションがスムーズではない」と書かれた意見を同じカテゴリにできるのはすぐに分かると思いますが、「笑顔が足りない」「話しかけにくい雰囲気」「パーテーションで仕切られていて和気あいあいになりにくい」などの意見が出てきたら、「ん? これらのカテゴリはコミュニケーション不足でいいのか? それとも、新たなカテゴリを立てるべきか?」と躊躇するかもしれません。

こういうときこそ「だいたい、でいいんだ」と思い、ひとまずすべて「コミュニケーション不足」のカテゴリに一緒に入れておきます。

そして、他の付箋の意見を整理する中で、「黙々と仕事をして笑わない人が多い」「笑顔が少ない」などの意見がたくさん出てくれば、「さっき、コミュニケーション不足のカテゴリに『笑顔が足りない』を入れたけど、『笑顔』のカテゴリを新たに作ったほうがいいかもしれない」などのように見えてきます。付箋は、あとからいくらでも移動できるので、神経質になる必要はないのです。

それよりも、優先するのは、テンポとスピードです。1枚ごとにいちいち立ち止まらず、「お、コミュニケーション不足」「あ、Aさんもコミュニケーションに課題を感じてるんですね」「Cさんもですか。コミュニケーションって職場の大きな問題なんですね~」といった具合に、テンポよく進めていくほうに集中してください。だいたいの意見が可視化できれば、そこから本格的にディスカッションしていけばいいのです。100点を目指す必要はありません。

■質の高い会議をすると圧倒的に仕事が楽しくなる

<コツ3 カテゴライズは7~10個>

園部浩司『ゼロから学べる! ファシリテーション超技術』(かんき出版)
園部浩司『ゼロから学べる! ファシリテーション超技術』(かんき出版)

カテゴライズは、だいたい7~10個に分類できればちょうどいいと思っていればOKです。5つ以下だとカテゴライズがざっくりしすぎ、5〜6だと少し足りない、10を超えると細かすぎるという認識でいればいいです。

以上のプロセスを踏めば、メンバーの意見を引き出し、さらに整理することがあっという間にできるでしょう。ファシリテーションを学ぶと、単純に会議の時間を短縮できるだけでなく、「圧倒的に仕事が楽しくなる」という副次的効果も期待できます。質の高い会議ができれば、チームのメンバー、関係者などたくさんの仲間を巻き込んで問題解決という1つの目標達成に向かって一緒に突き進んでいくことができ、その後、必ず高い成果を創出できるからです。

ぜひ、みなさんもファシリテーションを通して社内の活性化を促し、「いい仕事」「いい人生」に直結させてください。

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園部 浩司(そのべ・こうじ)
プロファシリテーター
神奈川県横浜市出身。1991年、NECマネジメントパートナーに入社。経理部に配属され、その後、事業計画部へ異動し36歳でマネージャーに昇格。その後業務改革推進本部に異動し、最年少部長に抜擢される。2016年に独立し、人材育成や組織改革、風土改革のコンサルティングを行う「園部牧場」を設立。ベンチャーから大手企業までの会議を仕切るほか、年間2500人以上のファシリテーターの育成に携わる。

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(プロファシリテーター 園部 浩司)

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