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心理学者が解明、「占い師の説明」が自分に当てはまる気がしてしまうワケ

プレジデントオンライン / 2020年12月7日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/9dreamstudio

無意識のうちに周囲に同調してしまったり、都合の良い部分だけ信じてしまうなど、人間の特徴と対処法を知っていれば、今よりもずっと生きやすくなるはず。数ある世界の科学的な研究を紹介します。

※本稿は堀田秀吾『図解ストレス解消大全』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

■人は同調圧力に屈しやすいもの

強い信念をもっていたとしても、まわりの圧力に押しつぶされそうになる──。いかにもストレスのたまりそうなシュチュエーションです。

多数派の意見や、周囲の反応に合わせてしまう人間の心理をあらわにした、スワースモア大学のアッシュによる有名な実験に、「アッシュの同調実験」と呼ばれるものがあります。

基準となる1本の線が書かれたカードと、長さの異なる3本の線が書かれたカードを被験者に見せて、前者のカードの線と同じ長さのものを、後者のカードのなかから選ばせるという実験を、以下の条件で行いました。

•7人の集団で12回行う
•7人中6人はサクラで、本当の被験者は7番目に回答する
•6人のサクラは12回のうち7回、全員が同じ誤答をする

アッシュの同調実験とは
※出所=堀田秀吾『図解ストレス解消大全』(SBクリエイティブ)

結果、37パーセントの被験者が、一度は間違った回答をしてしまったのです。間違うのは、サクラ6人が全員一致で誤答したときもっとも多く、1人でも正解を言うサクラがいると正解率は大きく上がりました。

37%の被検者が間違った回答をしてしまった
※出所=堀田秀吾『図解ストレス解消大全』(SBクリエイティブ)

この結果から、正しいものを選んだとしても、同調圧力が働き多数派の意見になびいてしまうこと、少数派であっても味方がいてくれれば自分の気持ちを正直に言いやすい傾向があることがわかりました。

■同調圧力に屈しないためには理解者が1人いればいい

人は、他者と違う行動をするとどうしても不安に陥りやすく、みんなと同じ行動をすることに安心感を抱きます。「アッシュの同調実験」は、まさに人間の不安定さを浮き彫りにした実験であり、一個人が“変わった人”で存在することの難しさを伝えていると言ってもいいでしょう。

裏を返せば、良き理解者が1人でもいれば、自信をもって行動できるということ。先のアッシュの実験では、すべての回で被験者と同じ線を選ぶ人(つまり味方)が1人いると、同調する確率は5.5パーセントまで減少し、本来の正解率に近づいています。

あなたのことを理解できない人は無意識に多数派の意見に従っているだけと割り切り、良き理解者を見つけることが大切というわけです。

■なぜ占い師の言葉はよく当たっていると思うのか

次に、批判的な意見を投げかけられたときの対応について考えてみましょう。

「だからお前はダメなんだ」と、そんなふうに言われると、「やっぱり自分は使えない人間なんだ」とひどく落ち込んでしまうもの。

思考に没頭する若いビジネスウーマン
写真=iStock.com/Masafumi_Nakanishi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Masafumi_Nakanishi

しかし、よくよく考えれば誰しも“ダメ”なところはあるわけで、「お前はダメだ」と言われて思い当たらない節がない人などいません。

占い師に、「アナタは真面目だけど、どこか抜けているところがある。でも、秘めている野心は素晴らしく、誰かを放っておけない優しさもある」と言われれば、ほとんどの人が「そうかも」と思ってしまうのではないでしょうか?

誰にでも該当する曖昧な言葉を、自分だけに当てはまるものだと捉えてしまうことは、「バーナム効果」と呼ばれる心理学の現象の1つです。

バートラム・フォアという心理学者が20世紀半ばに行った、バーナム効果を世に知らしめた実験があります。

■自分に都合の良い分析ほど信じやすい

実験では、学生に心理テストを実施したのですが、その結果を1人1人の診断結果に見せかけて、じつは全員に同じ内容の結果を渡し、学生たちの心理を調査しました。

心理テストの診断結果の内容は、「あなたの性格には欠点があるがふだんはうまく対処している」「あなたにはまだ上手に発揮できていないたくさんの能力がある」といった誰にでも当てはまるようなものでした。

そして、その結果が「どれくらい正確に自分に当てはまっているか」を学生たちに5段階で評価してもらったところ、平均で4.26という結果につながったのです。

面白いほど、全員がその分析内容が正確だと思い込んでしまったわけです。また、内容が自分に好都合なときほど、正確だと思い込む傾向もわかりました。

占い師も使う「バーナム効果」とは
※出所=堀田秀吾『図解ストレス解消大全』(SBクリエイティブ)

人は、曖昧な言葉をかけられると、その言葉が自分に当てはまると思いがちです。ですから、具体的な指摘にかける「お前はダメだ」「お前は甘い」といった、誰にも当てはまる批判的な意見に対しては、思い悩む必要はありません。逆に、自分にとってうれしいことを言われたら、それは素直に受けとりましょう。

人間はとても都合の良い存在ですから、「誰だってそうじゃないか」、そう割り切って次に進めばいいのです。

■ポジティブな言葉が痛みに耐える能力を上げる

疲れやストレスが溜まってくると、ついついイライラしてネガティブな言葉を発したくなりますが、「ポジティブな言葉を使っていると、痛みや調子の悪さへの耐性が高まる」という南デンマーク大学の研究があるのです。

研究を行ったヴェイグターらは、83人の被験者に対して3つの説明文を読んでもらいました。

①「ポジティブな言葉による説明文」
②「ネガティブな言葉による説明文」
③「中立的な説明文」

それぞれを読んでもらったうえで、被験者にスクワット運動をしてもらったところ、①の説明文を読んだケースは大腿筋の耐性が22パーセントもアップし、逆に②の説明文を読んだケースでは4パーセントもダウンし、痛覚過敏まで引き起こしたというのです。

ネガティブな言葉を使うと、よりネガティブな気持ちになってしまい、痛みを感じやすくなることが示唆されたのです。

■誰もが陥る「ネガティビティ・バイアス」とは?

そもそも人間には「ネガティビティ・バイアス」という認識の傾向があります。

堀田秀吾『図解ストレス解消大全』(SBクリエイティブ)
堀田秀吾『図解ストレス解消大全』(SBクリエイティブ)

つまり、ポジティブな情報よりも、ネガティブな情報に注意を向けてしまいがちな性質があるのです。

また、ネガティブな情報ほど記憶に残りやすいという傾向もあります。

それを示す好例がスワースモア大学のアッシュが行った実験です。

彼は、被験者たちに、とある人物を評価するために、以下のようなことばをリストとして見せました。

【リストA】知的な 器用な 勤勉な 温かい 決断力がある 実践的な 注意深い
【リストB】知的な 器用な 勤勉な 冷たい 決断力がある 実践的な 注意深い

リストAとリストBの違いは「温かい」と「冷たい」だけです。

しかし、「温かい」を含むリストAを見せられた90人は、その人物を「優しい」「社交的」「面白い」という具合に相対的に高く評価したのに対し、「冷たい」を含むリストBを見せられた76人は、全体的に低く評価したのです。

たったひと言のネガティブな言葉が、大きく印象を変える力をもっているというわけです。

■ネガティブな言葉があなたの評価を低くさせる

ネガティブな言葉は、人の注意を引いてしまいます。ですから、たった1つでもネガティブな言葉を使ってしまうと、発したあなたへの評価も低くなってしまう可能性があるのです。

一方、ポジティブな言葉にはやる気や体力さえも向上させる力があります。ですから、他者へはもちろん、自分自身に対しても、ポジティブな言葉を投げかけるように努めてください。

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堀田 秀吾(ほった・しゅうご)
明治大学法学部 教授
専門は社会言語学、理論言語学、心理言語学、法言語学、コミュニケーション論。研究においては、特に法というコンテキストにおけるコミュニケーションに関して、言語学、心理学、法学、脳科学など様々な学術分野の知見を融合したアプローチで分析を展開している。執筆活動においては、専門書に加えて、研究活動において得られた知見を活かして、一般書・ビジネス書・語学書を多数刊行している。アイドルのプロデュースから全国放送のワイドショーのレギュラー・コメンテーターなど、研究以外においても多岐にわたる活動を見せている。

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(明治大学法学部 教授 堀田 秀吾)

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