SNSを使いこなす3つのコツ「悪口をいわない、専門家ぶらない、批判しない」
プレジデントオンライン / 2020年11月30日 11時15分
※本稿は、成毛眞『アフターコロナの生存戦略』(KADOKAWA)を再編集したものです。
■一次情報を集め、仮説を立てる重要性
私はしばしば新型コロナウイルスについて仮説を話したり、フェイスブックに書いたりしている。もちろん自分は医師ではないので、それらの仮説の多くは直接知り合いの専門家から聞いた仮説に過ぎず、これらが正しいかどうかの判断を下すこともできない。
ではなぜそんな仮説をわざわざ書くのか。それは、世の中の情報に騙されないためにはこうした仮説を立てることが大事であって、そのためには専門家の情報を直接仕入れる必要があるといいたいからだ。
「専門家に会えるのは成毛さんだからで、普通は一次情報は仕入れられない」という声が聞こえてきそうだが、決してそんなことはない。こう見えて、私はけっこうな工数を割いて情報をとりに行っている。
私が普段していることといえば、雑誌やネットの記事を読んで、「おもしろい人がいるな」と思ったなら、フェイスブックで探して、ダイレクトメッセージを送るという作業だ。
たとえば、小児心臓外科の医師に連絡をして、「現場を見たことがないので、見学に行ってもよいでしょうか」と自分でメッセージをして、アポイントをとって、病院を案内してもらったこともある。
■医師や学者は、思ったよりずっと「会ってくれる」
医者や学者というのは、よほど怪しい人間でない限りは、会ってくれる。こちらが有名人であるとかそうでないとかはほとんど関係ない。そもそも小児心臓外科に興味を持つ人はほとんどいない。100万人に1人くらいしかいないので、ある意味で大歓迎なわけだ。
大切なのは、常日頃からそうしたアセットをつくっておくことだ。小児心臓外科の医師とつながったのも、4、5年くらい前の話で、コロナだからといって、急につながったのではない。
いまでは大の仲良しになっている仲野徹教授(大阪大学大学院生命機能研究科・医学系研究科)も同じで、「研究室を見に行っていい?」とメッセージしたら「いいよ」というから会いに行ったのだ。また、同じく阪大の理論物理学者・橋本幸士教授にメールで連絡したら、「いいよ」というので、仲野徹氏を連れて行った。今では二人が仲良くなって、チームを組んでいろいろやっているようだ。
彼らが口を揃えるのは、とりわけ高校生などから「研究室を見学したい」といわれたら、絶対に応じるということだ。彼らは研究者であると同時に教育者であるわけで、普通の人が思っているよりも彼らの門戸というのはずっと開かれているのである。
年齢や地位は関係ない。「おもしろい人がいるな」と思ったら、そんなことを気にする間にとっとと突撃したらいい。即突撃できて、うまくいけばつながれるのだから、いい時代だ。
■つながった“奇人変人の輪”をつなげる会
そんなことをやっていると、失礼ないい方になるが、奇人変人の輪がいつのまにか広がってしまった。だったら、そういった人たちを集めてみようということになり、2018年、1年限定で「表参道パルプンテ」という会を開催した。
メンバーは150人、1カ月に一度、会費5000円で、始まりも終わりも挨拶なし、自己紹介コーナーなし、ファッショナブルなご飯を出すというルールの会だ。友人の友人を招くのはNGで、すべて私と直接つながりのある方々がメンバー。150人のうち毎回3分の1程度が出席したため、1回あたりの出席者は毎回50人程度となった。
■ニッチな領域の研究者がわんさか集まった
これがおもしろいのなんので、あるときなどは、カラス研究者2人が参加し、「おお! 来ていたのか! あと1人来れば、全員揃うな」と、ニッチな領域の専門家がわんさか集ってしまったのだ。他に火山学者、理論物理学者、生物学者といった学者連中もいたし、飛驒高山の瓦屋3代目でなぜかわからないけれど無人島ビジネスをやっている方がいたりと、役者に事欠かない会となった。
そういえば、伊勢で一番古く、戦国時代創業の餅屋の当主も来ていた。東北大で微生物を学んだこともあって、酵母を扱えるからと、いきなりビール会社をはじめて世界中のクラフトビールを飲み歩いていたら、グローバルなコンペの審査員になってしまったという人間だ。
会のタイトル通り「何が起こるかわからない」そんな集まりとなった(パルプンテとは、ドラクエの何が起こるかわからない魔法の名前だ)。あとは、重めのノンフィクションを担当している編集者も多く、プロフィールのばらばら加減には我ながら驚いた。結果、メンバー同士が仲良くなり、さまざまなプロジェクトが生まれ、この集いから新刊が4冊、会社も4つできたと聞いている。
■SNSでは悪口をいわない、専門家ぶらない、批判しない
実は、そうしたつながりをつくるのに一役買っているのが、フェイスブックだ。これは断言できるが、私がそうしたツールを使って発信していない限り、150人も奇人変人を集めることはできない。
なぜフェイスブックがよいかというと、単純にメールや手紙、電話が面倒だからだ。フェイスブックであれば、すぐにメッセージが送れるし、何かのグループをつくりたいときも即座にできる。
もちろん、フェイスブックをやっていない人と出会う可能性をゼロにしてしまっているが、もし分子生物学者が日本に400人いるとしたら、400人全員と知り合いになる必要はない。
カラスの学者はたまたま3人ともフェイスブックにいたが、たとえば日本に40人くらいいる火山学者でフェイスブックを使用しているのは10人くらいだとしても、10人と知り合えれば十分だ。餅屋も日本中に何千軒もあるのだから、全員とつながろうと考えるのにはそもそも無理がある。
フェイスブックやnoteに定期的に投稿することも重要だ。まず、まともな発信をしている人だと認識してもらう必要があるからだ。たとえば、極度に保守的であったり、人の悪口をいっている人は他のメンバーの悪口をいう可能性があるからダメだ。ある程度知的でありながら、専門家ぶらない。そして、批判ではなく、基本的に褒めることしか書かない。
そうしたことに気をつけていれば、大抵の人は「この人は大丈夫そうだ」と判断してくれる。
■褒めているとお礼を言われてつながりが生まれる
さきほど、「基本的に褒めることしか書かない」といったように、SNSは褒めるツールと思ったほうがいい。たまに罵詈雑言を書いている人がいるが、いったい何が楽しいのだろうか。
褒めることのメリットは、褒めているだけなのに、相手がお礼をいってくることがある。書評サイトのHONZをやっていることも大きいが、作家のなかには、お礼をいわれたことで付き合うようになった人も多い。たとえば、森功氏などはその筆頭で、どこかで森氏のことを褒めたら「お読みいただいて恐縮です」というメッセージをくれたので、その筋の話が聞きたくて、もう何度も飲んでいる。
あとは、元『週刊新潮』の記者連中など、普通は書いてはいけない人のことを書いている人たちとも、SNSが縁でたくさん知り合うことができた。褒められてうれしくない人はいない。
■サラリーマンはフラットな人付き合いが苦手
そうはいってもなぜそんな気軽に突撃できるのかと疑問に思われる方もいるだろう。これは性格もあるが、サラリーマンをやっていた時期が短いことも大きい。サラリーマンの方には申し訳ないが、上司のほとんどは年上で、大半の部下が年下という、年齢と権力の上下関係が一致してしまう環境に身を置いていると、フラットに人付き合いするのが難しくなってしまう。
逆に、自由業をやっていたり、自分で事業をやっている人というのは、意外と腰が低い。小説家だってそうで、世間の人は怖いと思っているかもしれないが、大作家の林真理子氏などは、私が「あなたのことを知らない人もたくさんいるんだから、サイン会でもやったら?」と失礼なことをいっても、受け入れてくれるくらいのフラットさを持ち合わせている。
他にもお坊さんなどもフラットな職業のひとつだろう。寺の中はどうなっているか知らないが、いわゆるサラリーマン的な働き方をしたことがないから、年上には頭を下げるという習慣がない、というか知らないので、フラットなのだ。
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HONZ代表
1955年、北海道生まれ。中央大学商学部卒業。自動車部品メーカー、アスキーなどを経て、1986年、日本マイクロソフト入社。1991年、同社代表取締役社長就任。2000年に退社後、投資コンサルティング会社インスパイア設立。2010年、書評サイト「HONZ」を開設、代表を務める。
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(HONZ代表 成毛 眞)
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