「知らないと一生後悔する」資産価値の下がらない戸建てを買うたった一つの要諦
プレジデントオンライン / 2020年12月10日 11時15分
■コロナ禍に「新築分譲戸建」が売れているワケ
アベノミクス以降の金融緩和で、不動産価格は大きく上昇した。中でも図表1のグラフを見ると、マンション価格だけが上がり、戸建や土地は上がっていない。新築住宅の価格は土地代と建物代を足し合わせて決まる。都心の大規模用地は値上がりし、鉄筋コンクリート造の建築単価は上がったので、マンション価格は大きく上昇した。
これに対して、戸建は土地価格が横ばいで、木造の建築単価も横ばいだったために、価格は上がらなかった。結果として、マンションが5割も上がったのに対して、戸建価格は据え置きになったのだ。
この価格差は大きく、「戸建ての割安感」が出てきているのは事実で、コロナショック以降の「もう1部屋需要」の受け皿として新築分譲戸建が売れている。
■戸建ての建物評価は20年後にはゼロになる
マンション価格との差額の拡大によって戸建ての資産性は上昇したかというと端的にそうとは言えない。それは本来の居住資産としての建物価値を無視して、20年後にはゼロ評価となってしまうからである。
不動産の銀行評価は新築時からの耐用年数で決まる。マンションは鉄筋コンクリート造で建物と土地が一体で評価され、47年の償却期間を基本とする。つまり、大まかに言うと、100%を47年で割るので、年間2%強の価値下落を想定する。住宅ローンの10年後の元本の減り方は約25%なので、資産の下落幅(-20%)よりも元本(-25%)の方が大きくなっており、含み益が出やすい状況にある。
これに対して、木造の戸建は22年の償却期間で、物件価格の半分が建物とすると、50%÷22年=2.3%となり、10年後に23%の価値下落になる。これだと含み益は出るかどうかが微妙な水準になる。20年後には建物価値はゼロ評価になり、土地代が残る。
しかし、その土地代も建物の解体費を差し引かねばならないので、売却価格はかなり安くなる。これは土地代が下がらなかった場合であって、土地価格まで下がると売るに売れなくなるので注意が必要だ。
これに加えて、建物価値を築年数で決めることから、リフォーム価値は何千万円かけてもほぼゼロ評価になってしまう。
■戸建の資産性を下げない方法
戸建を購入する時に売ることを想定する人は少ない。そもそも売ることはない前提で買う人も多いが、現実に起こることは、転勤・転職・離婚・再婚・介護や世帯構成の変化などは望まなくてもやってきてしまう。
その際に、売るに売れない戸建は人生の足かせになりかねないことに加えて、多額の負債を残すことになる。そのリスクを軽減する方法は1つしかない。建物比率を小さくすることだ。
建物比率を少なくする方法はいくつかある。
そのためには、新築ではなく、中古戸建を購入するのは有効な手法の1つだ。気に入ったものを建てられない以上、気に入るものを丹念に探すことが条件になる。状態が良くて建物価値をほぼ見ていない価格設定ならば、減少する価値はほぼ土地代だけに限られてくる。
新築がいいのなら、土地代の割合が高い戸建を買う方法もある。新築であっても、土地代5000万円、建物代1000万円の6000万円の戸建なら、建物代の割合が少ない分、これも資産価値の目減りが少ない。
土地の値下がり幅が小さいなら、住宅ローンの元本の減り方の方が早いので、いつでも売ることができると考えられるからだ。しかし、土地価格を見極めないと落とし穴があるので、土地代が高いと安易に安心しては危険だ。
■地価の2つの落とし穴
住宅地価の需給バランスは出生と死亡人口で端的に説明することができる。死亡によって相続等の発生で土地が放出されることが多くなる。土地を購入する人は、ファミリー世帯が主であり、出生数が需要を生み出す。
日本の人口が減り始めるとこの需給バランスが逆転する。日本の人口は2008年には明らかにマイナスに転じており、当面その差は拡大が続くことが人口構成から決まっている。だからこそ、地方や郊外は地価が安くなるわけだ。
戸建を買う前にチェックすべきことは2つある。1つは地価の高値づかみをしていないかと、もう1つは地価の下落スピードが速くないかの2つだ。
前者の実勢地価は不動産屋に聞かなくても自分で分かる仕組みができている。それは、国土交通省が取引された人にアンケートを取り、取引価格を教えてもらった結果を公開している。
対象のエリアで検索し、データをダウンロードした上で、同様の容積率・建蔽率のサンプルを平均してみよう。それが土地単体の価格になる。これよりも高い土地価格で買おうものなら値下がりリスクがあると考えた方がいい。
次に、後者の地価の動きは立地によって違うので、確認するには地価公示・地価調査というデータを調べる。これで定点観測している立地の毎年の価格推移が分かる。これが上がっているところと下がっているところで将来価格も大きく違ってくる。
アベノミクス以降の最近7年は相対的に価格水準が高い。この間でも下落していたり、上昇幅が小さいなら、将来の土地価格は下がることを想定しておいた方がいいだろう。
上記2つの地価の調査は国土交通省の土地総合システムというホームページで事が足りる。前者はその中の「不動産取引価格検索」であり、後者は「地価公示・都道府県地価調査」になる。これらを調べれば、戸建での損得リスクが誰でも分かる。便利な時代になったものだ。
■首都圏・近畿圏の有望エリアはここだ
地価の安定しているエリアはそんなに広域ではない。東京23区は外周部を含めて安定しているが、都下では武蔵野市や三鷹市などの隣接した人気エリアなどに限られてくる。埼玉県では浦和などの一部の地域、千葉県では浦安などに限られる。神奈川県は横浜駅周辺と港北ニュータウンと川崎市の一部だけとなる。
近畿圏ではもっとエリアは絞られる。大阪市・京都市の中心部、兵庫県では神戸市の一部と芦屋市・西宮市といったところだ。滋賀県・奈良県・和歌山県では価格が下落することを見込むしかない。
自宅は1世帯で1つしか購入できない。また、1つだけに失敗もできない。大きな買い物だけに調査はきちんと行って、マイホームで人生を謳歌してもらいたいものだ。
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スタイルアクト代表
1988年、慶應義塾大学経済学部卒業。監査法人トーマツ系列のコンサルティング会社、不動産コンサルティング会社を経て、1998年にアトラクターズ・ラボ株式会社(現在のスタイルアクト株式会社)を設立、代表取締役に就任。著書に『マンションは10年で買い替えなさい』(朝日新書)、『独身こそ自宅マンションを買いなさい』(朝日新聞出版)など多数。分譲マンション情報サイト「住まいサーフィン」(https://www.sumai-surfin.com/)、独身の住まい探し情報サイト「家活」(https://iekatu.com/)を運営している。
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(スタイルアクト代表 沖 有人)
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