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「体育を休まない生徒ほど東大に合格しやすい」運動するとアタマがよくなる理由

プレジデントオンライン / 2021年3月18日 11時15分

集中力を高めるための運動「背筋のばし」。身体に「1本の線を通す」イメージでのばすのがポイント - 画像=『5歳からの最新!キッズ・トレーニング』

ある中高一貫校で、6年間一度も体育を休まない生徒ほど東大への合格率が高まるというデータがある。これはどういうことか。スポーツトレーナーの木村匡宏氏は「小さな頃から運動に親しむことで、集中力や脳の実行力を高められる。運動は子どもの将来に役立つ“最高の教材”だ」という――。

※本稿は、木村匡宏『5歳からの最新! キッズ・トレーニング』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■子どもが動きたがるのは、脳の発達のため

子どもには将来、自分の思い描いたことを実現できるようになってほしい。大人なら誰もがそんなふうに考えるのではないでしょうか? これを最短で叶えるために、今すぐできることがあります。それは「運動(=身体を動かすこと)」です。

運動することで体力がつく、身体が丈夫になるといった身体的な好影響があることは想像できると思います。ただそれだけでなく、運動は脳にも非常に良い影響を与えるのです。人間は脳の指令によって身体を動かしています。脳はバランスよく全体的に発達するのではなく、場所によって司る役割が決まっていて、それぞれが順を追って発達していきます。

まず幼児期に発達するのが、運動をコントロールする「運動野」と呼ばれる場所。小さな子どもがとにかく動きたがるのは、この場所が発達しつつあるから。これは脳が発達するために必要なことで、子どもは動くことで自分の身体を認識して成長していきます。つまり、幼児期から運動に親しませることは、脳の発達から考えてもとても重要なことなのです。

■脳を正しく「興奮」させることが、「抑制機能」を育てる

キレる若者が多いと言われる昨今、幼少期の運動経験に原因があるとする説もあります。現在、日本の3〜6歳の子どもの約半数は、スマートフォンやタブレット、あるいは携帯ゲーム機などのデジタル機器を日常的に利用していると言います。前述したように、脳は幼少期に「運動野」から発達する大事な時期。動かなければいけない時期に、スマホやタブレット、ゲーム機だけで遊んでいたらどうなるでしょうか? 人間にとって必要なことをしなければ当然マイナス影響はあります。身体的な発達はもちろん、脳の発達にも影響を及ぼすのです。

子どもがキャーキャー言いながら追いかけっこをしたり、サッカーやドッジボールで夢中になって遊んだりして、楽しく、気持ちよく身体を動かすことは、脳全体のネットワークが高い次元でつながることを促し、それは複雑なことを考える力へとつながっていきます。夢中で遊んでいる時には、脳ではシナプス同士がパチパチと光を放ちながら、興奮状態に入っているのです。

そんなに興奮させてばかりいると、コントロールの効かない、落ち着きのない子になるのでは? と心配する方もいるかもしれません。これはまったくの逆で、正当な興奮を味わった脳のほうが、むしろコントロールが効くようになります。なぜなら「興奮」を経験することは、同時に「興奮を抑える」という経験を増やすことにもなるからです。

■「本物の興奮」を経験することで、脳が発達する

例えるなら、興奮を味わったことがない脳は、徐行運転の経験しかない車のようなもの。それではブレーキの使い方を練習できません。スピードを出すからこそ、ブレーキの使い方がわかるのです。興奮を味わってそれを抑えるというのは、これと同じことです。

ただし、気をつけなければいけないのは興奮の質です。スマホやゲームを使って騒いでいる子どももいますが、そうした興奮は本物の興奮ではありません。体を動かすことのようにさまざまな感覚、身体のあらゆる場所への刺激を伴う興奮こそが本物の興奮で、子どもの脳の発達を促します。人は身体を動かすことによって、脳の発達が進んでいくのです。

健全な興奮を経験せず、ゲームで偏った興奮のみを経験してきた脳は、ブレーキ機能を持っていません。その結果、感情のコントロールができず、ふとした瞬間にキレるという行動に走るのです。これが現在の若者が突然キレるメカニズムのひとつ。SNSで瞬間的にカッとなり、心ない誹謗中傷に走る根本の原因も同様で、自分をセーブできないのです。子どものうちに運動を通じて身体を使った興奮と抑制を経験することは、成長していく上で、とてつもなく大事なことなのです。

引く動作は、足腰の力を目いっぱい使います。人数がそろえば、つな引きはかなり有効なトレーニングです
画像=『5歳からの最新!キッズ・トレーニング』
引く動作は、足腰の力を目いっぱい使います。人数がそろえば、つな引きはかなり有効なトレーニングです - 画像=『5歳からの最新!キッズ・トレーニング』

■運動能力向上は、将来の勉強や芸術活動でも役立つ

子どもの頃から運動に親しみ、体力をつけていると、心もタフになります。運動によってつけてきた体力は、学年が進むにつれて難しくなる試験や、受験勉強などを乗り越える際にも必ず役に立ちます。「身体を動かして汗をかくとスッキリする」という経験を積んでおくことで、勉強続きでモヤモヤしている時でも、不安やストレスに対応できるようにもなっていくでしょう。

身体を動かしていれば、運動能力も向上します。ここで言う運動能力とは、「自分がイメージしたことを身体を使って実行する能力」のことを指します。つまり、スポーツに限らず、勉強や芸術活動においても、「実現したいことをイメージして実行できる力」のことです。この運動能力を子どもの頃から高めておけば、スポーツのみならず、いろいろな場面で効果を発揮します。

登り棒をしたり、的当てをしたりという遊び、あるいはボールを打ってみる、投げてみるというスポーツで、「こうやってみよう」と思い描いて、それを実行するために「どうしたらできるか」を考えて工夫をすることは、脳にとってきわめて大事なことです。予測を立てながら、身体を動かす遊びやスポーツは、「目的的活動(特定の目標到達を目指しておこなわれる行動)」を達成するために非常に大事な「脳の実行機能」を育てるのです。

傾斜のきつい斜面や崖への上り下りは、子どもが大好きな活動。跳び箱などで人工の崖をつくって体験させてあげて
画像=『5歳からの最新!キッズ・トレーニング』
傾斜のきつい斜面や崖への上り下りは、子どもが大好きな活動。跳び箱などで人工の崖をつくって体験させてあげて - 画像=『5歳からの最新!キッズ・トレーニング』

■「体育出席率」と「東大進学率」の相関関係

遊びやスポーツの場面で、自分で考えて取り組み、大人からその成果を褒められると、子どもにとっては貴重な成功体験となり、身体を通して“よい体験”として記憶に刻まれます。こうした体験を日常の中で重ねていくことで、脳の欲望や感情を扱う大脳辺縁系を刺激し、運動が「楽しい」「達成感」という意欲につながります。そして「次は何をやろうかな?」と先の予定を計画しながらイメージを繰り返すことで、さまざまな知的活動をおこなう大脳皮質を使いつつ、脳全体のネットワークがつながっていきます。

「脳の実行機能」が育ち、成功体験による意欲向上を積み重ねていくと、スポーツはもちろん、勉強の面でも確実に好影響を及ぼします。実際に運動能力の向上が脳の発達にもつながっていることを示す事例があります。

木村匡宏『5歳からの最新!キッズ・トレーニング』(KADOKAWA)
木村匡宏『5歳からの最新! キッズ・トレーニング』(KADOKAWA)

ある有名私立中高一貫校では、体育への出席率と東京大学への進学率に相関関係があることがデータで導かれました。6年間一度も体育を休まない生徒ほど、東大への合格率が高かったということです。また、0時限目に体育を取り入れた高校で、多くの生徒の成績が上がったという研究結果もあります。こうした事例は、運動することが脳や勉強にもよい影響を与えることのひとつの証明と言えるでしょう。

小さな頃から運動に親しむことで、感情がコントロールできるようになり、キレなくなる。そして集中力や脳の実行力が高まることで学力にも好影響がある。「子どもには自分の思い描いたことを実現できようになってほしい」と考えるのなら、思い切り身体を動かすことから始めてみましょう。運動は子どもの将来に役立つ“最高の教材”なのですから。

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木村 匡宏(きむら・まさひろ)
IWA ACADEMY チーフトレーナー
岩隈久志氏(元読売ジャイアンツ投手)監修のスポーツジム「IWAアカデミー」設立メンバーで、現在はチーフディレクターを務める。小さな子どもからトップアスリートまで幅広く競技サポートをおこなっている。

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(IWA ACADEMY チーフトレーナー 木村 匡宏 文=佐久間一彦)

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