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「この会社に定年までいられる気がしない」心理カウンセラーが転職を悩む人に出す"ある宿題"

プレジデントオンライン / 2021年9月13日 10時15分

※写真はイメージです。(写真=iStock.com/bee32)

あなたはいまの勤め先で無事に定年を迎えられるだろうか。心理カウンセラーの根本裕幸さんは「『転職するべきか悩んでいる』という相談を受けたとき、私は辞表を書いてみることをお勧めしている。辞める、ということに意識を向けてみると、視点が変わる」という――。

※本稿は根本裕幸『なぜ、あなたは他人の目が気になるのか?』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

■社会人になってから迎える反抗期とは

一般的に中学生くらいは反抗期の真っ盛りと言われています。親の言うことにいちいち反発したり、無視を決め込んだりする時期ですね。この反抗期は親からすれば面倒な時期ですし、本人としても自分の感情に振り回されて繊細な思いに悩む時期でもあります。しかし、これは「親から精神的に自立する時期」として成育上、とても大切なものなのです。

そして、この反抗期は何も思春期にだけ起こるものではなく、あらゆる人間関係で起きる問題でもあるのです。

恋愛でも付き合いはじめて数年すると関係性が変わります。それまで大人しかった相手がだんだん自分の意見を言いはじめて、2人の間に険悪な空気が漂った、という経験をされた人も多いでしょう。仕事においても、はじめは先輩や上司の言うことを素直に聞いていたのに、何年か経(た)つと自分のやり方や考え方を持つようになり、上司や先輩に反抗的になる時期がきます。

そして、「この会社にずっといていいんだろうか?」ということも考えるようになります。それを私は「社会における反抗期問題」としてよく取り上げています。

■「オレの気持ちを会社はわかってくれない、けど仕方ない」

「社会における反抗期問題」は先に挙げた疑問以外にも、さまざまな問題として感じられるようになっていきます。

「上司のやり方はもう古いのではないか?」
「今までのやり方よりも、このほうが効率的なんじゃないか?」
「新しい○○という方法を取り入れたほうがより生産性が上がるんじゃないか?」
「この会社のシステムはもう時代遅れだ。このままでは生き残れないんじゃないか?」

などの思いがどんどん強くなっていくのです。これは社会人として、あるいは組織人として、自分の意見を持ち、自信を持っている証拠で、それなりの実績や経験を糧に、自分なりのやり方や考え方を構築しはじめたことを表しています。

社会人としては実に素晴らしいことなのですが、とはいえ、そういう意見を持ったとしても、すぐに意見を通してくれる会社は少なく、たいていは否定されてしまうことになります。

すると、「オレの気持ちを会社はわかってくれない」となり、否定的な思いを持つようになりますし、そこから「独立して自分の会社をつくる!」という思いになればよいほうで、多くの人は「仕方がない。この会社は変わらない。ここにいるなら会社の方針に従うほかない」とあきらめてしまうものです。

ストレスのたまったビジネスマン
※写真はイメージです。(写真=iStock.com/kieferpix)

でも、それってすごくもったいないことですよね。

■会社から離れるメリットとデメリットを冷静に考える

私は30歳前後のまさに社会人としての思春期を迎えた方からの相談を受けることが多いのですが、その都度、その思いに賞賛を送りつつ、次なる課題を提案しています。それはやはり自分軸という話で、自分をしっかりと持ちつつ、その会社とどうやって付き合っていくか? という方法です。

自分というものをきちんと持つことがやはり前提になります。そのうえで、今の組織について、あるいは今の会社のやり方について理解を深めます。思春期というのは悪く言えば短絡的な「正しさ」にこだわってしまうところで、融通が利きにくいところなのです。

したがって、なぜこの会社がその方法を取り入れているのか? そのメリットは何なのか? その方法が生み出す問題点は何なのか? について、まずは「理解」してみることが大切です。すると、メリットとデメリットが見つかってくるものです。

■中身の薄い会議を改善するための成功の秘訣

ある事例をご紹介しましょう。職場から無駄な会議を一掃したケースです。

彼は毎週のように開かれる中身の薄い会議に疑問を持ちました。それに気づいた彼は「何の意味があるんですかね?」と先輩に毒づいていたんですね。しかし、その会議がお互いのコミュニケーションを図ることを目的としていることと、上司が部下の状況を把握することに役立っていることに気づきました。

そこで彼は先輩と相談を重ねつつ、懇親を目的とした場と、物事を決定する会議を別にすることを思い立ち、その先輩を巻き込んで上司に提案してみたのです。この「先輩を巻き込んだ」というのは彼の成功の秘訣(ひけつ)だったんですね。1人で提案するよりもより効果的に物事が進みますから。

そこで、懇親を目的とした場として「朝礼」を提案し、毎週月曜日か火曜日の朝、それぞれの状況について報告する場を設け、会議は議題が上がったときにのみに開催するようになったのです。

その朝礼では、公私を含めた今の自分の状況を部員それぞれが発表する場となりました。はじめはぎこちなかったものの、上司自ら最近の夫婦ゲンカによって小遣いを削減された話を面白おかしく暴露するなどして徐々にオープンな場となり、ある人は婚約を発表し、ある人は親の介護について告白する場ともなり、以前よりもずっと部内の風通しがよくなりました。その一方で、会議は短時間で目的を持ったものとなり、それまでのような数時間もだらだらと続くことはなくなったそうです。

■周囲を巻き込むと思いがけない道が開ける

彼はその後も、まわりを巻き込みながらさまざまな提案を通していくことに成功し、1年後にはその部署の業績が上がり、職位も年俸も一気に上がりました。今では、ほかの部署も、彼らのやり方を取り入れるようになり、全社的な変化を生み出しているそうです。

ビジネス人材
※写真はイメージです。(写真=iStock.com/SunnyVMD)

社会人としての反抗期もやり方次第によっては会社そのものを変えるきっかけになるのです。もちろん、1人で孤軍奮闘する必要はなく、自分の意見に耳を傾けてくれる先輩や同僚がいてこそ成り立つのです。

このことは冒頭でもお伝えしたように、恋愛や夫婦関係にも言えることです。急に冷めることや、これまで溜まっていた不満が爆発するときがあるでしょう。そこで一気に解消する前に、もう一度冷静に関係性を問い直せば、また、周囲の人たちに相談することで、思いがけない道が開けることもあるのです。

■カウンセリングで「自分がしたいことは何?」と尋ねる理由

仕事を続けるのがいいのか、転職すべきなのか……カウンセリングでは当然そうした話題に触れることも多くなります。私はカウンセラーなので、「どうして辞めたい気持ちになるのか?」という感情、気持ちについての質問が多くなります。

たとえば、「仕事が面白くないから」という気持ちにも、さまざまな感情的背景が考えられます。仕事の中身が単純作業の繰り返しで飽きてしまっている場合もありますし、職場の人間関係がギスギスして居心地が悪い場合もありますし、苦手な上司と馬が合わなくて苦労している場合もあります。

そのとき、私は「自分がしたいことは何?」という質問をよくさせていただくんです。正直な気持ちは何? という意味で。

たとえば、上司が変わったら今の会社にいることが幸せに感じられるのでしょうか? それとも、上司が変わろうが変わるまいがこの仕事を辞めたいと思うのでしょうか?

そこでポイントとなるのが「自己評価」です。

■転職しようか悩む人には「辞表を書いてみてください」

あなたは自分のことをどれくらい信じられるでしょうか? どれくらい自分のことを高く評価しているでしょう?

なぜ、あなたは他人の目が気になるのか?書影
根本 裕幸『なぜ、あなたは他人の目が気になるのか?』(フォレスト出版)

つまり、どれくらい今の自分に自信が持てるか? が大事なんです。ここで自己評価が低いと、他者評価に依存することとなり、他人軸になってしまいます。それだと自分が行動を起こす際にどうしても受け身に回ってしまいます。

「こんな実力のない自分なんて転職しても同じことを繰り返すだけ」とか「ほかの人はうまくやっているのにあの上司とうまくできないのは自分がダメだからだ」と思い込んでしまったら、思い切った行動はできませんよね。

それは転職すべきかどうか? という課題のときはもちろんですが、自分が取り組みたいプロジェクトがあってもそれを提案することに躊躇(ちゅうちょ)してしまうでしょうし、部内の意思疎通に問題があると気づいたときも改善案を提出する勇気が持てないでしょう。

そんなときにちょっと過激な宿題を出してみることがあります。

「辞表を書いてみてください」

■「辞める気になりゃなんでもできる」

一度、辞める、ということに意識を向けてみることで、視点を変えるのです。「死んだ気になりゃなんでもできる」という昔ながらの言葉がありますが、それをアレンジしたようなものです。

何人ものクライアントさんにこれを書いてもらいました。そうすると、不思議なことに気持ちが強く、大きくなって、今までなら我慢してしまっていたことも上司にどんどん言うようになったし、取引先に対しても今までとは違うより強い態度に出られるようになったのです。

中年のアジアの実業家が就任。ビジネスコンサルティング。
※写真はイメージです。(写真=iStock.com/metamorworks)

もちろんその一方で、辞表を書いたら清々しい気持ちになって、「やっぱり本当にこの会社を辞めたいと思っていたんだ」と本音に気づいた方もいます。

■辞表や離婚届は悩める人を強くさせる

ある人は、いつもスーツの内ポケットに辞表を忍ばせて出勤していました。

彼は古い考え方の上司といつも衝突し、ずっと我慢を繰り返してきたのですが、「いざとなればこの辞表を叩(たた)きつけてやる!」と思いながら、上司と話をしてみると、不思議なことにそんなに抵抗なく彼の意見を上司が受け入れたのです。

その後も、不思議と彼の意見を上司は尊重してくれるようになったんです。ある日、上司との面接で彼は意外な言葉を耳にします。

「最近の君はとても頼もしく思っている。以前は実力はあるがどこかひ弱な感じがして、素晴らしい提案を持ってきてくれてもイマイチ説得力に欠けていた。しかし、最近の君は一皮剥けたように意志の強さを感じるし、きちんと筋が通った提案をいつも上げてくる。何かあったのかね?」

辞表を書く、というのは「覚悟を持つ」ことにつながります。そうすると自分では気づかないうちに意識が変わり、積極的だったり、強く出られたり、意思をはっきり持てるようになったりするのです。

ご紹介したのは仕事編ですが、夫婦編でも相談に来られた方に「離婚届」を書いてみることをおすすめすることがあります。一度、意識を反対側に振ってしまうことで見方が変わるし、しっかり「今」と向き合おうという覚悟が生まれるのです。

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根本 裕幸(ねもと・ひろゆき)
心理カウンセラー
1972年静岡県浜松市出身。2000年にプロカウンセラーとしてデビューし、延べ1万5000本以上のカウンセリングをこなす。01年、カウンセリングサービス設立に寄与。以来、14年間企画・運営に従事し、03年からは年間100本以上の講座やセミナーをこなす。15年3月に独立。フリーのカウンセラー、講師、作家として活動を始める。著書に『人のために頑張りすぎて疲れた時に読む本』(大和書房)、『敏感すぎるあなたが7日間で自己肯定感をあげる方法』『つい「他人軸」になるあなたが7日間で自分らしい生き方を見つける方法』(あさ出版)など著書多数。

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(心理カウンセラー 根本 裕幸)

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