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だから坂本龍馬は大久保利通より人気がある…できる営業マンが使う「ツァイガルニック効果」とは

プレジデントオンライン / 2022年11月24日 11時15分

リモートでも効果的、自分の価値を上げるハロー効果(出所=『決定版 営業心理術大全』より)

結果を出す営業マンはどこが違うのか。営業コンサルタントの菊原智明さんは「営業マンのさまざまなテクニックは、心理学で説明ができる。たとえば話のオチを先送りすることで最後まで聞いてもらうというのは『ツァイガルニック効果』の応用だ」という――。

※本稿は、菊原智明『決定版 営業心理術大全』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。

■「有名大卒=仕事ができる」という思い込み

【ハロー効果/halo effect】
ハロー効果にはポジティブハロー効果とネガティブハロー効果の2つがあり、まったく逆の働きをします。ポジティブハロー効果とは、人や事物のある1つの特徴についていい印象を受けると、他のすべての特徴も実際以上に高く評価する現象のことを言います。ネガティブハロー効果とは人や事物に悪い印象を受けると、その他のことすべてに関して実際以上に低く評価してしまうことを言います。

ポジティブハロー効果の例として代表的なもので言えば、卒業した大学によって評価されることです。私が勤めていた会社に有名大学を卒業した新人が入社してきたことがありました。その新人が有名大学を卒業しているということと、営業として優れているかどうかは本来関係のないことです。

しかしまわりの人たちは大騒ぎします。「すごい新人が入ってきたぞ」「これは即戦力に間違いない」実力を確認などせずに、有名大学を卒業したというだけで新人を優れた人材であると評価するのです。本当に優れている人もいるのでしょうが、実際のところそれほどでもない人の方が多かったのです。

これは大学だけではなく会社の役職もそうです。名刺交換をした時に「○○会社 常務取締役」や「統括本部長」という肩書を見た途端に「すごい人なんだろうな」といった印象を受けます。こういった思い込みをハロー効果と言います。

■肩書や特技だけで「この人はすごい」と思わせる

また自分ができないことができる人は優秀な人だと思ってしまう傾向があります。初対面の人から、このように言われたことがありました。相手「私は英語とスペイン語を習っていましてね」私「それはすごいですね! 会話ができるのですか?」相手「ええ、日常会話程度ですけどね」たいていの人は、英語は勉強はしたものの話すことはできず、ましてやスペイン語に関してはさっぱりです。

本来、英語やスペイン語ができることと、仕事ができることはほとんど関係ないのに、優れたビジネスマンであると評価してしまいます。またそのような人が商談相手でしたら、実力を確認する前から信用してしまうでしょう。

私自身、ハロー効果を感じたことがあります。初対面の男性と名刺交換をしたところ「えっ! 大学の先生なんですか!」と驚かれたのです。それからというもの、その人は私を尊敬のまなざしで見ていました。私自身、特別優れているわけではありません。にもかかわらず、大学講師というイメージが私の評価を高くしてくれたのです。

名刺交換の日本人
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

また、本を出版しているだけですごいと思われるのもハロー効果の1つと言えます。大きな講演の候補に挙がった時のことです。私のほかに有名な人がたくさんリストアップされており「まず私になることはないだろう」と思っていたところ、なぜか私が選ばれたのです。その理由を聞くと「大学講師をしているし、本を多数出版しているのだから安心だ」ということでした。

これはまさにハロー効果のおかげです。

■「1行で自分の魅力を全部伝える」

ハロー効果を営業活動で応用してみましょう。もしあなたが何か資格を持っているなら、それを最大限利用してください。社労士、行政書士、宅建、建築士、コーディネーター、FP(ファイナンシャルプランナー)……どの資格も持っていない人からすればすごいと感じるのです。

また公的な資格ではなくマニアックな資格だとしても効果があります。何か持っている資格がある人はさっそく活用してください。「営業の菊原智明」より「ファイナンシャルプランナー菊原智明」の方が信用されます。名刺に入れるのはもちろんのこと、メールを送る際も署名欄に「○○診断士 佐藤大輔」のように表記してください。あなたは自分のことを知っていますが、お客様は何も知りません。しっかりと伝えてハロー効果を活用してください。

・POINT
ポジティブなハロー効果で自分の価値を上げる


「1行で自分の魅力を全部伝える」くらいの気持ちで考えてみる。その1行でチャンスをつかむこともある。

■相手の行動を真似ることで好感度を高める「ミラーリング」

【ミラーリング/mirroring】
ミラーリングとは、人間が自分と同じ仕草・行動をする人は仲間と認識してしまう習性を利用しています。鏡のように相手の行動を意図的に真似ることで、顧客との信頼関係を築こうとするものです。
初対面のお客様から共感を得るための「 ミラーリング」
初対面のお客様から共感を得るための「ミラーリング」(出所=『決定版 営業心理術大全』より)

ミラーリングはNLP(神経言語プログラミング)の代表例の1つとして紹介されます。知られているのは、

●飲み物に手を伸ばしたタイミングで自分も飲み物を飲む
●相手がアゴに手をもっていったら、自分もアゴに手をやる
●お客様が資料を見たら、自分も一緒に見る

といったテクニックです。ミラーリングの本質は「類似性の法則」とも言われ、自分と共通点の多い人に人は好意を抱きやすいという性質を活用したものです。うまくできれば相手に「この人は仲間だ」といった好印象を与えることができます。

お客様の身振りや動作を鏡合わせのように真似ることですが、やりすぎに注意です。まったく同じタイミングで同じような動きを行うと、「この営業はこちらの真似をしている。なんだか気持ちが悪い」と不信感を持たれてしまうことになります。これでは本末転倒になってしまいます。

■「どちらの出身ですか?」で一気に打ち解けることも

ミラーリングはお客様の動作を真似するだけではありません。お客様との会話から共通点を見つけ、合わせていくといった方法もあります。例えば、自分と同郷の人に会うと、それだけで一気に距離が縮まる感じがします。

私は群馬県に住んでいますが、都会で“北関東の人”に会うと仲間意識を持つものです。これはミラーリングの応用版とも言えます。以前、生命保険のトップ営業とお会いした時のことです。若い方だったのですが、イントネーションになまりを感じました。気になってこのように質問しました。

【私】「なまりがあるようですが、どちらの出身ですか?」
【トップ営業】「私は栃木なんですよ」
【私】「栃木ですか、私は群馬県なのでお隣ですね」
【トップ営業】「それじゃ、お仲間ですね」
【私】「そうですね」

これで一気に打ち解けました。しばらくいろいろな話をしているとき、このトップ営業がネタをバラしてくれました。

【トップ営業】「実を言うと、なまらないで普通に話もできるんです」
【私】「えっ! そうなんですか?」
【トップ営業】「菊原さんが群馬県出身だと知って、あえて使ってみました」
【私】「よく使うテクニックなんですか?」
【トップ営業】「はい、お客様の情報が手に入ればやります」

また大学は関西だったため、お客様が関西だと知れば“関西弁”を使うと言います。「さすがトップ営業だな」と思ったのです。

これはミラーリングの上級のテクニックです。もしあなたがいろいろな地域に住んでいたのでしたら、使う言葉をお客様に合わせることも可能です。

また趣味やスポーツネタなどで合わせていってもいいでしょう。ミラーリングは行動を真似するだけでなく“相手に寄り添うことを意識する”ということがポイントになります。方言に限らず、話し方のペース、会話のテンション、笑うタイミングを少し合わせるようにするだけでも効果があります。いろいろなミラーリングを使い、お客様との距離を一気に縮めてください。

・POINT
相手に寄り添う気持ちで接してみる


面談するお客様の情報が分かるときは、服装や小物も合わせてみる。色使いやファッションが近い人に親近感を持つ。

■人は完成されたものより、未完成のものに興味を引かれる

【ツァイガルニック効果/zeigarnik effect】
ツァイガルニック効果とは、人間の記憶において「未完の課題についての記憶は、完了した課題についての記憶より想起されやすい」という現象のことを言います。簡単に説明すると、「人は完成されたものより、未完成のものに興味を引かれる」というものです。
じらし作戦で印象度を上げる「 ツァイガルニック効果」
じらし作戦で印象度を上げる「ツァイガルニック効果」(出所=『決定版 営業心理術大全』より)

うまくいった過去の恋愛よりも、片思いで終わってしまった相手の方が何年経っても忘れられない。そのような経験がある人もいるかもしれません。知人が「高校生の時にフラれた彼女のことがいまだに忘れられない」とよく言っています。成就しない恋は記憶に残るものです。過去を美化しているとも言えますが、これはツァイガルニック効果の1つです。

戦国大名では徳川家康や豊臣秀吉より織田信長のほうが人気がありますし、幕末の志士では大久保利通より坂本龍馬のほうが魅力的と感じます。「志半ばで倒れたあの人がもし生きていたら……」と想像を掻き立てられるからでしょうか。このように人は完成されたものより未完成なものに興味を引かれるのです。地味で目立たないタイプだとしても、ツァイガルニックテクニックをうまく活用することで、お客様にインパクトを与えることが可能になります。

■「その詳細ですが…」で話を中断されると余計に気になる

経営者が集まる勉強会に参加した時のことです。1人の中年男性の方と名刺交換をさせて頂きました。見る限り特徴がなく、いわゆる“パッとしないタイプ”の典型のような人です。その男性とこんなやり取りをしました。

【男性】「以前から部材がうまく調達できず困っていましてね」
【私】「そういった話をいろいろなところから聞きます。困っている人が多いですね」
【男性】「そうなんです、当社も困っていましてね。ただ少し改善されてきました」
【私】「どう改善されたのですか?」
【男性】「実は特別なルートがありましてね。その詳細ですが……」

といったところでスマホに連絡が入ったようで、席を立ちます。10分程度して戻ってきました。その間“その詳細”について知りたくて、たまりませんでした。他の人との会話が上の空になるくらい気になったのです。この会では10人前後の人と話をしましたが、結局、この男性が一番印象に残ったのです。

もし「詳細はこうこうこれです」とスッと話が進んだらどうでしょうか? おそらく、ここまで印象には残らなかったと思います。あれが実際は、電話は鳴っておらず、テクニックだった……、とすれば「さすが!」としか言いようがありません。

■人間は“完了したもの”ほど忘れてしまう

ツァイガルニック効果は日常生活でもさまざまなシーンで活用されています。テレビ番組が盛り上がったところで「続きはCMの後で!」といってクライマックスシーンを引き延ばしにします。ネット記事では前半部分は誰でも読めて、後半部分は会員登録しないと読めなくなっている、というものがあります。

菊原智明『決定版 営業心理術大全』(明日香出版社)
菊原智明『決定版 営業心理術大全』(明日香出版社)

途中まで読んだ記事のオチはどうしても知りたくなります。こうして会員登録を増やしているのです。知りたいことが途中で遮断されると、続きが気になってしまうものです。これはお客様に送るメールでも応用できます。

お客様に情報提供する際、途中まで公開し「詳しくお知りになりたい場合はこちらへご返信ください」とするのです。今は情報が溢れています。ただ単に「こんなお役立ち情報があります」ではまったく印象に残りません。ツァイガルニック効果で知ってもらいたいのは「完了したものほど忘れてしまう」ということです。完了したものより、完了しなかったもの方が記憶に残るという心理を活用し、あなたの印象を何倍にもアップさせましょう。

・POINT
最後まで言わず寸止めで情報を伝えてみる


説明の途中で「この件については最後に詳しく説明します」と言って中断してみる。これでお客様は何倍も興味を持ってくれる。

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菊原 智明(きくはら・ともあき)
営業コンサルタント
営業サポート・コンサルティング代表取締役。関東学園大学経済学部講師。社団法人営業人材教育協会理事。群馬県高崎市生まれ。工学部機械科卒業後トヨタホームに入社し、営業の世界へ。約600名の営業の中においてMVPを獲得。2006年に独立。営業サポート・コンサルティング株式会社を設立。現在、経営者や営業向けのセミナー、研修、コンサルティング業務を行っている。主な著書に『訪問しなくても売れる!「営業レター」の教科書』(日本経済新聞出版社)、『売れる営業に変わる100の言葉』(ダイヤモンド社)、『面接ではウソをつけ』(星海社)、『5つの時間に分けてサクサク仕事を片づける』(フォレスト出版)、『トップ営業マンのルール』『「稼げる営業マン」と「ダメ営業マン」の習慣』『残業なしで成果をあげるトップ営業の鉄則』(明日香出版社)、『営業1年目の教科書』『営業の働き方大全』(大和書房)、『リモート営業で結果を出す人の48のルール』(河出書房新社)、『仕事ではウソをつけ』(光文社)などがある。

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(営業コンサルタント 菊原 智明)

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