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所得税 不動産取得税 法人税が全部タダ「お金持ちの国ドバイに教育移住増加」日本人子育て世帯の生活に密着

プレジデントオンライン / 2023年1月6日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Boarding1Now

世界一高いタワー、世界一大きい噴水などがある産油国の中東ドバイに移住する日本人が増えている。最大のメリットは、所得税、不動産取得税、法人税がかからないことだが、生活環境や文化が異なる現地でやっていけるのか。フリーランスライターの東野りかさんが移住した2組の子育て世代に密着した――。

※本稿は、『プレジデントFamily2023年冬号』の一部を再編集したものです。

■ドバイへの日本人家族の移住が増えている!

中東・アラビア半島にあるUAE(アラブ首長国連邦)を構成する首長国の一つであるドバイ。世界一高いタワー、世界一大きい噴水、世界一深いプールなど、リッチな産油国ならではの“世界一”を冠するゴージャスなスポットが多い。人口の9割が、インド系、パキスタン系、ヨーロッパ系などUAE以外の国籍の住民という多民族国家でもある。

そして今、ドバイに日本人の移住者が増えている。というのも、UAEは外国人であっても、所得税、不動産取得税、法人税などの税金がかからず、2020年には、諸々の条件さえ満たせば取得できる、バーチャルワーキングビザという1年ごとに更新する居住ビザの発行もスタート。それゆえ、日系企業の駐在員だけでなく、個人の起業家もドバイに移住し始めた。21年10月段階でUAEの日本大使館に在留届を提出している日本人は4428人で、16年より600人ほど増加(外務省のデータによる)。そのほとんどがドバイと首都のアブダビに集中している。

ドバイ在住歴20年の現地企業経営者によると、コロナ禍が落ち着いた22年はさらに移住者が増えているとのこと。しかも30、40代の働き盛りのビジネスパーソンが多いため、家族で移住というケースになることが少なくない。そこで問題になるのが、子供の学校だ。

UAEには大きく分けて2種類の学校がある。一つは主に“エミラティ”と呼ばれる現地人の子供が通う公立校で、もう一つは主に外国人の子供が通う私立のインターナショナルスクール(以下、インター)だ。

特にドバイでは、公立校も私立校も「一流の教育システムの推進」を掲げており、教育現場でのICT(情報通信技術)の導入、理数教育の強化なども図っている。最近では日本人モデルで実業家のMALIAさんが、5歳の子供の教育のためにドバイに移住したことも話題になった。

現地の公立校は厳格なイスラム教での宗教教育がベースにあり、小学校から男女別学でキャンパスも別。たとえ保護者であっても、男性は女子校に足を踏み入れることができない。しかし現地人の子供たちが入学する公立校は、幼稚園から大学まですべて無償というから驚きだ。

もし家族の転勤や起業でドバイに移住となった場合、または親子留学をしたいと思った場合、どんな学校を選んだらいいのか。ドバイの学校を徹底的に調べた中から、子供たちを英米系のインターに入学させた2つの家庭を紹介しよう。

■日本の学校の雰囲気に似て厳格で規律が厳しい

UAEは1971年に建国したが、それまでイギリスの保護領だったこともあり、イギリスとの関係がとても深い。ドバイに住むヨーロッパ系住民の中で多数を占めるのがイギリス人であり、インターもブリティッシュスクールが圧倒的に多い。

在住歴15年の秀己さん・祥子さん夫妻の子供たちが通う学校もブリティッシュスクールだ。10歳の奏太(かなた)くん、6歳の詩子ちゃんが通うのは、GEMSFoundersSchoolDubai(ジェムズ・ファウンダーズ・スクール・ドバイ。以下、GFS)というUAEでは最大手のGEMSグループのインターのPrimaryschool(小学校)。

出所=『プレジデントFamily2023年冬号』
出所=『プレジデントFamily2023年冬号』

父親の秀己さんは、日本の会社のUAE支社に駐在になり、支社長として働いている。母親の祥子さんは、大学を卒業後、日本の大手企業のドバイ支社に転勤になり、秀己さんと出会って結婚したそう。

「仕事の関係で、この先も長くドバイにいることになりそうなので、子供たちに英語力やグローバルな感覚を身につけさせたいと思ったのです。ならば日本人学校よりもインターに入れたほうがいいだろうと思いGFSに入学させました。イギリスのカリキュラムを取り入れているので、校風が厳格で規律正しい。その点が日本の学校と似ていて親和性があるようで、日本人の多くの生徒がブリティッシュスクールに通っています」(秀己さん)

GFSは、幼稚園から高校まで6000人ほどの生徒が在籍するが、1クラス20~30人と少人数で、低学年のうちからしっかりとしたカリキュラムで教育される。しかも英語ができない生徒のフォローアップもあるので安心して通わせることができるそうだ。

『プレジデントFamily2023年冬号』(プレジデント社)
『プレジデントFamily2023年冬号』の特集は、「読解力」の家庭での伸ばし方。「文章を読める子が“新受験”を制す」「なぜ算数の“文章題”だと解けないのか」「食いっぱぐれないために大事なこと 自分で稼げる子にする!」などを掲載している。

また、日本の小学校より1年早い5歳から入学するので、もし帰国して日本の学校に転入したとしても、学年を落とさなくて済む場合が多い(習熟度にもよる)。

日本にあるインターは現地語である日本語が必修でないところもあるが、ドバイのインターはアラビア語が必修の場合が多い。しかし奏太くんと詩子ちゃんは、英語ほど得意ではない様子。アラビア語の授業で「自分たちの学校を説明しよう」という課題が出されたときは、手先が器用な奏太くんは段ボールなどで学校の模型を作り、そこにアラビア文字で説明書きを入れて提出。語学が苦手ならば、得意な図工で勝負というわけ。父の秀己さんが、工芸系の仕事に従事していて、その血筋を引き継いでいるせいか出来上がりは秀逸だ。

ちなみにGFSの学費は、一人につき年間120万円(22年10月時点)ほどなので、インターの中では比較的リーズナブルなほうだ。

きょうだいのクラスは、インド人やアラブ人の子供が多く、ドバイの人口構成そのままの多国籍状態。親はつい、「仲良くしているお友達はどこの国の子なの?」と聞いてしまうが、子供たちにとっては問題ではないようだ。

■学校行事や習い事でも、ドバイならではの学びが

「子供たちの能力を正当に評価する点がドバイの学校のいいところです。校内ミュージカルでは、何日にもわたる激烈なオーディションがあります。参加する生徒たちは皆、お目当ての役をもらうために必死に練習し、人気の役を巡って熾烈(しれつ)な戦いを繰り広げるのです。日本の学校はなるべく優劣をつけないようにするとか、子供たちも人前で褒められるのを嫌がると聞きました。でも、こちらでは公正に評価するので、人気の役を勝ち取った生徒は誇らしげです」(祥子さん)

奏太くんは、残念ながら希望の役は獲得できなかったが、他の役でミュージカルに参加できたのはいい経験になったようだ。

ところで本国イギリスではコスプレイベントが多く、老若男女を問わず、個性的な衣装を着て闊歩(かっぽ)している。

GFSでも各イベントに合わせてコスプレで登校することが多い。例えば奏太くんは半魚人、考古学者、アラブ人男性の伝統衣装の格好をしたり、詩子ちゃんは人魚姫、妖精、医者の格好をしたりとバラエティーに富んだスタイルに挑戦。本人たちは楽しそうだが衣装を用意するのは親なので、準備が大変だ。

出所=『プレジデントFamily2023年冬号』
出所=『プレジデントFamily2023年冬号』

「衣装を人から譲り受けたり、お面のデザインをネットから拾って、それを基にプリントアウトして手作りしたりと、結構手間がかかりますが、楽しみました」(秀己さん)

コスプレでも、競争意識をむき出しにする子もいるとか。

「エリザベス女王のプラチナジュビリー(即位70周年記念)を祝うコスプレデーで、クラスに女王の格好をしている女の子がいてびっくり! 彼女はベストドレッサー賞を受賞していました」(奏太くん)

さすが女王の国(取材当時)の学校だ。裾の長いドレスや手作りのティアラ姿はなかなかの風格だったとか。

また、奏太くんも詩子ちゃんも、お稽古事に熱中している。奏太くんはピアノと野球、詩子ちゃんはピアノとバレエを習っている。

「受講料は1カ月2人で5万~6万円ほどで、日本よりも少し高いと思います。でも、本人たちが楽しんでやれるのならお金は惜しくないです。普段の生活では出てこない単語を使った会話をするので、英語の勉強にもなります。それもまたお稽古事のメリットでしょう」(祥子さん)

■自由な校風、手厚いケア授業料はやや高め

ドバイのインターで、ブリティッシュに次いで数が多いのがアメリカンスクールだ。2人の子供をこちらに通わせているのは、コーリン・キーニーさんと嶋田容子さん夫妻。12歳のヒューゴくん、9歳のエメリンちゃんが通うのは、DwightSchoolDubai(ドワイト・スクール・ドバイ。以下、ドワイト)。

出所=『プレジデントFamily2023年冬号』
出所=『プレジデントFamily2023年冬号』

コーリンさんはアメリカ人で、世界的な会計事務所「デロイト・トウシュ・トーマツ」に勤務。容子さんは元世界銀行勤務で、現在は国連の保健機関で活躍するバリバリのキャリアウーマンだ。コーリンさんがドバイ支社に転勤を希望したので、家族で移住してきた。

容子さん自身も高校から大学院までアメリカで教育を受けていたので、子供たちも迷わずアメリカンスクールを選んだのかと思いきや、今の学校に入学するまで何度か学校を変えたそう。

「ヒューゴをイギリス系の幼稚園に入れたことがあるのですが、そこはちょっと遅刻しただけで罰金を徴収されて……。いろんな面でものすごく厳しくて融通が利かないのが難点でした。ヒューゴは長髪なので(笑)、自由なスタイルや個性を容認してくれる学校がいいなと思っていたのです」(容子さん)。

そこで学校見学に行ったときに「ここはいいかもしれない!」とピンときたのが、ドワイトだった。自由な校風だが、教育面ではとても手厚いシステムを導入する。幼稚園から高校まで全校生徒500人と少人数なので、生徒一人一人の指導が丁寧。英語ができない生徒のケアはもちろん、各教科の先生同士が各生徒の習熟度を共有している。

3Dプリンターをたくさん備えてロボット製作を誰でもできるような部屋など、共有施設も充実している。授業料は年間1人約370万円(22年10月時点)と、一般的なブリティッシュスクールよりも高額だ。

こちらもブリティッシュスクール同様に生徒の国籍が多岐にわたる。クラスのディベートの時間では、ロシア人の生徒がロシアのウクライナ侵攻について「私はプーチン大統領のシンパ(支持者)じゃないわよ」と自分のポリシーをはっきりと発言したり、アラブ諸国とイスラエルの国交正常化やイエメン紛争について話し合ったり。

ヒューゴくんのクラスではIB(インターナショナルバカロレア)エキシビションという授業があり、「内戦・戦争」の課題で作文を書いた生徒もいるそうだ。学校でも家庭でも、世界的な出来事をよく話題に取り上げる。

■IBプログラムで世界中の大学受験も可

容子さんがドワイトの教育方針で引かれたのがIBという国際的なプログラムを採用している点だ。小学校課程のIBは、物事を探究するための基礎教育を学び、必要な知力・体力・精神力のバランスが取れた人間になることを目指すというもの。前述のIBエキシビションのように本質的なものの考え方や、創造性も大事にしている。

出所=『プレジデントFamily2023年冬号』
出所=『プレジデントFamily2023年冬号』

高校でディプロマ資格試験に合格すれば、世界中の大学の受験が可能になるのも大きなポイントだ。

ヒューゴくんとエメリンちゃんは、学校でも家庭でも英語を使うネイティブスピーカー。ただし日本語があまりできないのが容子さんの悩みで、日本人の家庭教師を呼んで教えてもらっている。日本語の読み書きの宿題が毎日出されるので、苦労しているようだ。

キーニー家はドバイ以外にもドイツやアメリカなどの海外生活が長いが、容子さんは子供たちのルーツである日本の文化も知ってほしいと願っている。インターナショナルデー(国際交流イベント)では、ドワイトに所属する総勢40カ国の生徒たちが、ブースを出して自国の文化を紹介する機会を与えられる。

「うちは日本料理を作ったり、きょうだいで剣道着や着物を着たりと、日本文化のアピールに奮闘しました」(容子さん)

キーニー家では、ゲストを招いてガーデンパーティーをよく開催する。子供たち同士で遊んでいる間に、大人たちはお酒を飲みながら、お互いのビジネスや、次の休暇はどこに行くかなどのよもやま話に花を咲かせる。旅先として人気があるのは、地理的にも近いトルコやヨルダン、ヨーロッパなど。さらには政治や教育面も俎上(そじょう)に載せる。

ちなみにアメリカンスクールは日本の学校と同様に6歳から入学する。帰国して、日本の学校に入学する際には、学習進度に合わせて学年を落とすケースが少なくない。受験などで帰国が決まっている場合は、アメリカンスクールからドバイの日本人学校に一度転入して、日本の学校に順応してから帰国することもあるらしい。

冒頭の通り、家族での移住者の増加、バーチャルワーキングビザの発行開始で親子留学というケースも増えていきそうだ。紹介した二つの家庭の子供たちのように、英語力やグローバル感覚を習得させるいいチャンスになるだろう。

しかし、いきなりインターに子供を入学させるのは不安なことも多い。その場合は、ドバイのどのインターにも、「サマーキャンプ」という夏の課外活動があるので、まずはそこにお試し参加するのもあり。子供と学校の相性を見極めて、入学を決めるのもよいかもしれない。

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東野 りか フリーランスライター・エディター
ファッション系出版社、教育系出版事業会社の編集者を経て、フリーに。以降、国内外の旅、地方活性と起業などを中心に雑誌やウェブで執筆。生涯をかけて追いたいテーマは「あらゆる宗教の建築物」「エリザベス女王」。編集・ライターの傍ら、気まぐれ営業のスナックも開催し、人々の声に耳を傾けている。

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(フリーランスライター・エディター 東野 りか 写真=一部写真は取材家族提供)

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