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「透明な淡い黄色」以外は要注意…専門医が「今すぐ病院に行ってほしい」と断言する「おしっこの色」とは

プレジデントオンライン / 2024年1月21日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Vonschonertagen

尿は、からだの状況を映し出す鏡と言われる。健康な尿と異常な尿にはどんな違いがあるのか。泌尿器科医の堀江重郎さんは「尿は本来、透明の淡い黄色。赤やピンク、紅茶のような色の尿が出た時は、迷わず病院に行ってほしい」という――。(第2回/全2回)

※本稿は、堀江重郎『尿で寿命は決まる 泌尿器の名医が教える腎臓・膀胱 最高の強化法』(SB新書)の一部を再編集したものです。

■「弱酸性の尿」が健康なからだの証

LDLコレステロール値、中性脂肪値、血糖値、尿酸値……。

健康診断というと血液検査にばかり注目が集まりがちですが、これからは、尿検査の項目にも、もっと注目してください。次のように、尿は、血液に引けをとらないくらい「からだの情報の宝庫」といえます。

【尿のアルカリ度と酸性度――健康体の尿は「弱酸性」】

肉など酸性の食べ物を多く食べたとき、発熱や下痢があるときは、尿はより酸性に、野菜などアルカリ性の食べ物をたくさん食べると、尿はよりアルカリ性になります。尿には体内の酸性物質を排出する役割もありますから、尿のpHは「弱酸性」になっているのが普通です。数値でいうとpH5.5~7.5が標準とされています。

ちなみに、酸性、アルカリ性というと、アルカリ性のほうがいいように思われている節がありますが、そんなことはありません。

アルカリ性では雑菌が繁殖しやすいため、もし尿が継続的にアルカリ性に傾いていたら、膀胱炎などの尿路感染になりやすいのです。逆に、もし尿が継続的に強酸性に傾いていたら、糖尿病や痛風の原因となる高尿酸血症が疑われます。やはり「弱酸性の尿」が健康なからだの証というわけです。

■目では確認できない血尿もわかる

【尿の比重――低すぎると、腎臓の不具合が疑われる】

水の比重は「1」ですが、尿には、腎臓でこしとられた老廃物や有害物質など、さまざまな成分が溶け込んでいます。したがって比重は「1」より重くなり、1.010~1.025が標準値とされています。

この範囲を外れると、血液をろ過する腎臓に、何らかの不具合が起こっていると考えられます。睡眠中に何回もトイレに行き、尿量が多い「夜間多尿」では、尿を濃縮するホルモンであるバソプレシンの分泌が悪く、比重が低いことがあります。

【尿潜血――尿路感染症、結石、さらにはがんのサインであることも】

尿検査では「尿中の赤血球」を検知するため、目で確認できないレベルの血尿もわかります。尿潜血は、赤血球の成分が尿に含まれているか検査します。「陽性」と出たら、膀胱炎や尿道炎、腎炎、前立腺炎、尿路結石、嚢胞(のうほう)(腎臓内に小さな袋ができ、そこに尿が溜まる)、さらには泌尿器系のがんなど重い病気が疑われることもあります。

とくに喫煙者で尿潜血がある場合には20%近くに膀胱がんが見られるともいわれていますので、タバコを吸っている人やその家族は定期的に尿潜血を調べるとよいでしょう。また、60代以上の女性では、閉経後に膣が収縮したり、抵抗力が落ちて尿道周辺が感染しやすくなったりする関係で、尿潜血が出やすくなります。

■尿の白血球で分かる感染症、炎症のリスク

膀胱炎や尿路結石の場合は、すでに残尿感や頻尿、排尿痛、発熱などの自覚症状も出ているはずです。嚢胞は、それ自体は病気というわけではありませんが、そこに悪い菌が繁殖したり、がんができたりすることもあるため、経過観察が必要です。

いずれにせよ尿潜血で陽性と出た場合、遠心分離機を使う「尿沈渣(にょうちんさ)検査」で、実際に尿に赤血球が見られるか詳しく調べます。肉眼ではわからないのに、顕微鏡で血尿が見られる場合でも、膀胱がん、尿路結石、腎炎などが見つかることがありますので、生活習慣などのリスクに応じた精密検査を行います。

写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu
【尿白血球――尿路感染症があると「陽性」になる】

白血球は、からだに侵入する外敵から自分を守る免疫に関係する細胞です。尿に白血球が見られると膿尿(のうにょう)といいます。「うみ」(膿)が尿に出ているということですから、尿白血球で「陽性」と出たら、何らかの尿路感染症にかかっていると考えられます。また結石やがんによる「炎症」により膿尿となることもあります。

尿路感染症では、通常痛みや排尿時の不快感、発熱が見られますが、残尿が多い場合の膿尿はあまり自覚症状がないことがあります。また頻尿で、膿尿もあるときには膀胱がんや膀胱結石の可能性があります。

■沈黙の臓器の異常を検知する

【尿タンパク――出続けたら腎臓病の疑い】

腎臓は血液をろ過し、尿をつくりますが、そこでタンパクはこしとられず、血液に残ります。つまり本来、タンパクが尿に出るというのはありえないことであり、出たとしたら腎臓のろ過機能に問題が起こっているということです。血液をろ過するフルイの目が粗くなっているか、壊れてしまっていると考えられます。この場合も「尿沈渣検査」で、さらに詳しく調べることになります。

尿タンパクで「陽性」と出たら、疑われるのは、腎盂腎炎(腎臓内の原尿の「一時貯蔵タンク」である腎盂の炎症)、糸球体腎炎(腎臓内の血液の「ろ過装置」である糸球体の炎症)、ネフローゼ症候群(尿にタンパクが出てしまうために血液がタンパク不足になる病気)です。膀胱炎なども考えられます。

これらの病気は、継続的に尿タンパクが陽性と出た場合に、疑うべきものです。例外的に、激しい運動の直後や過労があるとき、高熱が出たとき、女性の場合は生理前後に、一時的に陽性になることもあります。また、子どもや20代の若い世代だと、健康であっても、腎臓の位置によって尿タンパクが出やすい場合もあります。

■万病のもと・糖尿病になるリスクが把握できる

【尿糖――高すぎたら糖尿病予備軍かも】

「糖尿病」は、その名のとおり、一症状として尿に糖が含まれる病気です。血中の糖濃度が高くなりすぎたために糖を処理し切れず、尿に漏れ出てしまうのです。「糖尿病の人のおしっこは甘い匂いがする」と聞いたことがあるかもしれませんが、重度の糖尿病だと、たしかに、代謝物のためにほのかに甘く香ることがあります。とはいえ、尿糖で「陽性」と出たら血糖値の検査をしてください。

一方、糖尿病の薬には、SGLT2といって尿中に糖を排泄して血糖を改善するものもあります。この薬は慢性腎臓病にも効果が認められています。ただし、この場合は尿糖がたいへん高くなるために、細菌感染にかかるリスクが高まります。

からだは変化するものですから、できれば日々、向き合い、微細な変化もとらえていきたいものです。といっても、病院で行う健康診断となると「年に一度」が普通で、それすらも億劫だと思っている人は多いと思います。

血液は病院でないと検査できませんが、尿は、市販の「尿検査テープ(試験紙)」で多くの項目を検査できます。尿検査テープは、街なかのドラッグストアやネットショップでも入手可能なものがほとんどです。「自宅でマメに尿検査」というのも、健康長寿を目指すために、習慣の1つとしてみてはいかがでしょうか。

■尿のどこに気をつければいいのか

尿に関心が向いてくると、毎日の排尿時に気になることが出てくるかもしれません。

尿の「色」や「泡立ち方」「にごり」「臭い」――尿はからだの状況を映し出す鏡とはいえ、小さな変化に神経質になりすぎて、気にしなくてもいいことまで気になっては精神衛生上、よくありません。

いったい、どんなときに、どれくらい気にしたほうがいいのか、ここでまとめておきましょう。

3つのガラス容器のイメージ
写真=iStock.com/someone25
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/someone25
【尿の「色」――濃いおしっこは問題なし、血尿はすぐに病院へ】

尿は本来、透明の淡い黄色ですが、主に尿の水分濃度によって、色の濃さが変わります。前にも説明したように、バソプレシンによって夜間の尿は水分濃度が低くなっていますから、朝一番の尿は、色が濃くなります。日中の尿も、水の摂取量が少なければ比較的濃くなります。

ですから、単に「濃い尿が出た」というのは、多少、水分が足りていないと考えられるくらいで、気にする必要はありません。

尿の色で気をつけたいのは、やはり血尿です。

■血尿は「真っ赤な尿」とは限らない

血尿は、鮮血のような赤やピンクっぽい色をしている場合もあれば、茶色っぽい色をしている場合もあります。茶色っぽい血尿でも、紅茶のように赤みがかった色ですから、単に濃い尿の色とは明らかに違うと気づけるはずです。

とくに高齢者の場合、ある日突然、明らかな血尿が出た場合は、真っ先に膀胱がんを疑います。もしトイレで排尿したあとに「なんだか血っぽい色だな」と思ったら、迷わず病院へ行くことをおすすめします。

じつは、転ぶなどして腰を激しく打ちつけたあとや、テニスやマラソンなどかかとを強く打つようなスポーツを激しく行ったあとに、しばらく血尿が続くこともあります。こうしたケースでは重い病気の可能性は除外されますが、どのみち、詳しく調べておいて損はありません。

トイレの前に立つイメージ
写真=iStock.com/eugenekeebler
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/eugenekeebler

血尿では、痛みなどの苦痛は生じません。でも尿に血が混じるというのは、打撲やスポーツなど外部刺激によるものを除き、泌尿器系に問題があるということです。現に、血尿が出てすぐに精密検査を受けた結果、膀胱がんや腎臓がんが判明したケースも少なくありません。

さらに、喫煙は、肺がんのみならず、膀胱がんのリスクも高めます。タバコに含まれる発がん性物質が、肝臓、腎臓を経て尿の一成分として膀胱に流れ込み、そのうち一部が、膀胱の組織に蓄積してしまうからです。

ですから、とくに喫煙者で血尿が出た場合は、いっそう膀胱がんの疑いが強まります。「しばらく様子を見よう」なんて考えず、すぐに泌尿器科を受診しましょう。

尿の色といえば、寝たきりの高齢者など、排尿のための管をつけていると、尿道などに雑菌が繁殖しやすくなり、結果として尿が「青く」なることもあります。

が、タンパクが菌によって分解された結果、尿に青い色素が出る場合があるのです。これを「ブルーバッグ症候群」と呼びます。

■白濁した尿は病気のサイン

【尿の「泡立ち」――泡立ちが多く、しばらく消えないなら病院へ】

尿の泡立ち方も、たいていは気にする必要はありません。勢いよく排尿すれば、泡立つのが自然です。ただ、以前より泡立ちが多くなり、しばらくしても泡が消えない、という現象が毎日続くようなら、尿タンパクや尿糖が出ている可能性もあります。病院できちんと尿検査を受けたほうがいいでしょう。

【尿の「にごり」――感染症のサインかも?】

健康な尿は、色が濃くても薄くても、透き通っています。これが白濁していたら、塩類の結晶が混じっているか、膿が混じっているかのどちらかです。

塩類の結晶は、たいていは心配ないものですが、尿路結石や、蓄尿や排尿の信号がうまく伝わらなくなる「神経因性膀胱」のサインである場合もあります。

膿によって尿がにごっているとしたら、腎盂腎炎や、女性の場合は膀胱炎、男性の場合は前立腺炎や尿道炎が起こっているということです。尿道炎は、淋菌(りんきん)やクラミジアなど、性交渉によって感染する性感染症であり、性交した相手を感染させてしまう危険があります。

■性病なら直ちに治療が必要

とくに男性から女性へと感染させてしまうと、菌がからだの奥にまで侵入して卵管炎や骨盤炎、さらには不妊になる場合もあります。こうした深刻な状況を招きかねないという意味でも、直ちに治療が必要です。

尿に白っぽい浮遊物が混ざることもありますが、女性の場合は生理的なものであり、問題ありません。男性の場合は、やはり前立腺炎や尿道炎が疑われます。尿のにごりで疑われる病気では、たいていは排尿痛や、腰や背中の鈍痛、発熱、頻尿なども見られます。

前立腺肥大症の手術や投薬治療を受けている男性では、射精後に尿がにごる場合もあります。通常、射精するときには膀胱の出口が締まりますが、手術や薬の影響で、精液が膀胱へ逆流してしまう「逆行性射精」が起こることがあるためです。

逆行性射精は、健康上、問題があるわけではありません。とはいえ、尿のにごりでは感染症の可能性も否めませんから、気になったらすぐに泌尿器科の受診をおすすめします。

■病院に行ったほうがいい「尿の臭い」の特徴

【尿の「臭い」――多くは「気のせい」、ほかの症状も見られたら病院へ】

通常、尿の臭いのベースはアンモニアですが、飲み食いしたものに左右されることもあります。たとえば、お酒を飲みすぎた翌日に、尿が臭うように感じられたら、それはアルコールを分解する際に生じるアルデヒドという物質の臭いです。

堀江重郎『尿で寿命は決まる 泌尿器の名医が教える腎臓・膀胱 最高の強化法』(SB新書)
堀江重郎『尿で寿命は決まる 泌尿器の名医が教える腎臓・膀胱 最高の強化法』(SB新書)

また、稀に子宮筋腫や膀胱がん、子宮がんの手術で膀胱と大腸が癒着してしまい、尿がウンチ臭くなることがあります。これはかなり深刻な症状です。

このように、尿が通常とは違う臭いになることはありますが、薬や飲み食いしたものによって変化するのは基本的に問題ありませんし、ウンチ臭くなるケースは稀です。したがって尿の臭いには、それほど神経質になる必要はありません。

しかし、明らかにいつもと違う悪臭がしたら、からだに何らかの異常が起こっている可能性が考えられます。尿から甘いような香りがするのは、糖尿病が進んでいるサインであるということは、前にも述べました。

その他、炎症性や化膿性の病気が泌尿器に起こっていると、尿が悪臭を放つことがあります。その場合、多くは尿がにごるなど、ほかの症状も起こります。

尿の臭いは気のせいであることが多いのですが、もし、臭いに加えてにごりなど複数の症状が見られたら、念のため泌尿器科を受診するといいでしょう。

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堀江 重郎(ほりえ・しげお)
順天堂大学大学院 教授
1960年生まれ。東京大学医学部卒業。日米で医師免許を取得し、国立がんセンター中央病院などを経て、42歳で帝京大学医学部主任教授に就任。日本初の男性外来であるメンズヘルス外来を開設。2012年より現職。日本メンズヘルス医学会理事長、日本抗加齢医学会理事長。著書に『ホルモン力が人生を変える』(小学館101新書)、『ヤル気がでる!最強の男性医療』(文春新書)などがある。

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(順天堂大学大学院 教授 堀江 重郎)

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