「英語を聞くだけ」は時間のムダ遣い…5年で12カ国語をマスターした日本人YouTuberが「絶対NG」という勉強法
プレジデントオンライン / 2024年5月6日 8時15分
※本稿は、Kazu Languages『ゼロから12ヵ国語マスターした私の最強の外国語習得法』(SB新書)の一部を再編集したものです。
■文法を最初に学ばないほうがいい
本書では、私が試行錯誤の末にたどり着いた言語学習法をお話ししています。しかし、巷にはあまり効率的でない学び方もあります。今までお話してきたことの裏返しと言ってもいいのですが、それを本項でまとめて紹介したいと思います。
みなさんの中には、ひょっとしたら、言語の文法を知ること自体におもしろみを感じる人もいるかもしれません。
それはそれで素晴らしい素質だと思いますが、「コミュニケーションツール」として言語を捉えた場合、文法ばかり学んでいるとスピーキングとリスニングを鍛えづらいという難点があります。
文法的な正しさに気を取られて、「きちんと文章を組み立ててからでないと発言できない」という現象が起こりがちなのです。相手の言っていることを聴き取る際にも文法が気になるあまり、大意をつかみ損ねることが多くなるでしょう。
すると、どうしてもコミュニケーションは滞ってしまいます。
もちろん、文法的に正しく話せるに越したことはありません。しかし、そのために口が重くなってしまうくらいなら、たとえたどたどしくても、口をついて言葉が出てきたほうが会話は盛り上がります。
■最短で語学を身に付ける2ステップ
リスニングにおいても同様です。常に文法が気になっていると、相手の発言でひとつでもわからないところがあったときに思考停止に陥る恐れがあります。そうなるくらいなら「だいたいこんなことを言っている」くらいの理解でよしとしたほうが、瞬時に言葉を返しやすくなります。
ですから、コミュニケーションツールとしての言語を習得したいのなら、いくら文法の勉強が好きでも、あえて「ステップ①ネイティブの発音を学ぶ」「ステップ②実践的な文法を学ぶ」という順序を踏んでほしいと思います。
このように言語を学んでいくと、予想外に早くネイティブと話せるようになったり、その言語でコンテンツを楽しめるようになったりと喜びが広がるでしょう。きっとこの本を手に取って頂いた皆さんにも「この順序で学んでよかった」と思っていただけるはずです。
■例文が載っていない・音声素材がついていない単語帳で学ばない
ステップ①のところで、「単語単体ではなく、フレーズごと覚えることが大切」とお話ししました。
おさらいになりますが、特に学び始めのころはフレーズごと覚えないと、ひとつひとつの単語がどのように使われるのか想像もつきません。いくら単語を単体でたくさん覚えても、それを実践の場で活かすことができないのです。
また、本書のメソッドでは、「ネイティブの発音を聴いて真似て、リスニングとスピーキングを同時に鍛えること」に非常に重きを置いています。
これは、ある程度ステップ①を繰り返し、ステップ②に進んでからもずっと続きます。したがって、たとえ例文が載っていてもネイティブの発音を確認できなければ、意味がありません。
例文がない単語帳、およびネイティブが例文を音読している音声素材がついていない単語帳で学ぼうとすると、本書で最も重視している点に適さない学び方になってしまうのです。
■フレーズや単語を「カタカナ読み」で音読しない
日本の教材で、よく外国語の会話文や単語に「カタカナのルビ」が振られているものを見かけます。わかりやすいように見えるかもしれませんが、カタカナ読みでフレーズや単語を音読するのはおすすめできません。
「自分で発音できる音は、聴き取れる」というのが、本書の言語学習法の考え方です。
そこにカタカナ読みが介在すると、どうなるでしょうか。
もちろん、正しく発音できなければ相手に通じないかといえば、必ずしもそうではありません。たとえば英語は、「スペイン語訛(なま)り」「フランス語訛り」「ヒンディー語訛り」などさまざまな言語の訛りと共に話されています。カタカナ読みをベースとした「日本語訛り」の英語であっても、たいていは通じるでしょう。
では、なぜカタカナ読みがよくないかというと、正しく発音できることがリスニングの向上につながるからです。
ネイティブの発音を聴いて真似ているうちに、ネイティブと同様に発音できるようになります。そしてネイティブと同様に発音できるようになると、その音が自分の耳に入るため、さらにネイティブの発音を聴き取れるようになります。
カタカナ読みは、この好循環を断ち切ってしまうため、おすすめできないのです。
■自分の実力に合わないレベルの教材で勉強しない
使う教材のレベルは、学習者のモチベーションを大きく左右します。
簡単すぎてはつまらないし、上達を感じられない。かといって難しすぎると、ついていけなくて挫折しやすい。ちょうどいいのは「ちょっと頑張れば理解できるくらい」の難易度の教材です。
音声教材の宣伝で、「最初は一言もわからなくても、シャワーのように音声を浴びていれば、ある日突然わかるようになる」といった謳(うた)い文句を目にすることがあります。
しかし、まったく理解できないものを延々と聞き流すよりも、5分間、集中して1フレーズでも2フレーズでも覚えたほうが、はるかに実力につながります。ただ受動的に聞き流すだけでは、あまり効果はないでしょう。
早く上達するには、学習者の能動性が欠かせません。私の経験上、「ある程度は理解できるが、わからないところもある。そこを確認しながらアクティブに聴く」というのが、最も学習効果の上がりやすい学び方なのです。
このように「自分が簡単に理解できるラインよりも少し高く、努力すれば理解できるくらいのレベル」を、言語学者のスティーヴン・クラッシェンは「Comprehensive input(理解可能なインプット)」と呼びました。
それくらいのインプットができる教材を選ぶと、着実な上達を実感しながらモチベーションを維持し、学び続けることができます。
物語や会話文が載っている教材、言語学習系のYouTubeチャンネルやPodcastチャンネルは無数にありますが、「初見(初聴)で80~90%くらい理解できるもの」であれば、今の自分に適していると言えます。
10~20%分だけ頑張ればいいというのが、意外とハードルが低くて驚かれたでしょうか。しかし、この10~20%の差分を埋める道のりが、着実な上達の道のりとなるのです。これに慣れてきたら少し難易度を上げて、60~70%理解できる教材を選んで挑戦してみると、スムーズに進められると思います。
「大筋はわかるけれども、ところどころわからない単語や文法がある」くらいならば、投げ出したくなることはないはずです。「よし、ちょっとだけ頑張って、全部理解できるようになってみるか」と思えるでしょう。
■「苦手」を克服しようとしない
言語を学ぶ過程では、きっと誰もが苦手なことにぶつかるものだと思います。複数の言語を学んでいると、言語によって難しいポイントが違うと気付かされることもしょっちゅうです。
たとえばロシア語は文法が難解ですし、中国語とタイ語には「声調」と呼ばれる独特な発音体系があり、なかなか体得できません。
このように私も言語ごとに苦手とする部分はあるのですが、すぐに何が何でも克服しようと頑張ったことはありません。
文法や文字、発音が難しいと感じたら、とりあえず文法そのもの、文字そのもの、発音そのものには注力せずに、いったん脇に置く。そんなふうに苦手なところは何となくラフに捉えておいて、フレーズや単語にたくさん触れることを通じて、徐々に体得していけばいいか、くらいの気楽な感じです。
おそらくこれが、今までさまざまな言語を学び続けてこられた理由のひとつなのでしょう。
苦手なところにばかり目を向けていると、学びたい気持ちがなくなってしまいます。努力してもなかなか克服できないのはつらいものですし、つらいと感じるものは長続きしない。挫折の一大要因は、「苦手を克服しようと努力するあまり、つらくなってしまうこと」ではないかと思うのです。
裏を返せば、苦手を克服しようと頑張らないことが、挫折知らずのマインドセットにつながるということです。
■「話せる」のハードルを下げよう
外国の人と会うと、よく「日本語、話せるよ!」と言われるのですが、実際のところは「コンニチワ!」「サムライ!」だけだったりします。もちろん人によるのですが、外国の人のほうが、総じて外国語を話すことをカジュアルに捉えていて、「話せる」のハードルも低い気がします。
そもそも日本人の考える「話せる」のハードルが高すぎるのです。
もしかしたら、みなさんの中でも、母語と同じくらい自由自在に話せて初めて「話せるようになった」といえると思っている人は多いのかもしれません。だとしたら、もっともっと「話せる」のハードルを低くする必要があると思います。
生まれてからずっと触れてきた母語である日本語ですら、常に正しく話しているとは限りません。未だに知らない漢字や単語に出くわすことがよくあるでしょう。
ましてや大人になってから学んでいる外国語ともなれば、いくら学んでも間違えることがあって当たり前です。学んでも学んでも、まだ知らないことが残っている状態が普通なのです。
ですから、「語学の習得に完璧はない」と割り切りましょう。
その上で、「そもそも言語はコミュニケーションツールである」という基本を忘れないでいることも大切だと思います。
実際、相手の母語で簡単な挨拶や自己紹介ができるだけでも、多くの人は心を開いてくれるものです。おそらく相手の母語を学んでいるということ自体が、相手の国や文化に対する敬意と受け止められるからでしょう。
完璧にマスターなどしていなくても、まずは最低限のコミュニケーションさえ成立すればよしとする。それくらいリラックスしていたほうが、挫折することなく学び続けることができて、そのうち苦手なことも克服できるはずです。
■文法は「適当」でいい
言語を習得するには、とにかく毎日、その言語に触れる時間を作ること。壁にぶつかっても立ち止まらず、走り続けることが必要不可欠です。
これは「早く壁を打ち破れるよう、とにかく頑張れ」という根性論ではありません。
むしろ根性論は、私からすると言語学習の敵といってもいいくらいです。というのも、私の経験上、根性を発揮して無理に努力するよりも、無理のない範囲で楽しく学んだほうが、ずっと走り続けられるものだからです。
わからないことに遭遇するたびに翻訳ツールで調べたり、機会があればネイティブに確認したりすることは大切ですが、ここで必要とされているのは根性ではなく、むしろ気楽なマメさです。
言語は未知なる生き物のようなものです。マシンと違って絶えず移ろうものですし、いくら学んでも学び切るということがありません。だからこそ、あまり細かいところにはこだわりすぎず、大らかに、気楽に、適当に学んでいく。いってみれば「あまり構えすぎないという心構え」で言語学習に臨むことが、挫折を防ぐ秘訣だと思います。
これは、特に文法についていえることかもしれません。受験英語を引きずっていると、どうしても「文法を完全に頭に入れてから、リスニングやスピーキングを鍛えよう」という発想になりがちです。すると文法の完璧さにこだわり、そのため細部にまでこだわり、さらには苦手の克服にこだわり……と、こだわりだらけになってしまいます。
■まずは使えるフレーズから身に付けよう
しかし「コミュニケーションツール」としての言語を習得する上での文法の位置づけは、受験英語のそれとは根本的に違います。
ステップ①でネイティブの発音を真似しながら頻出フレーズを覚える、ステップ②で実践的な文法を学ぶという本書のメソッドにも現れているとおり、文法は、覚えたフレーズから逆算するように学んだほうが効率的なのです。
ステップ①では、ほぼ文法の知識ゼロのまま頻出フレーズを覚えることになるので、受験英語の記憶が色濃い人は、ひょっとしたらモヤモヤするかもしれません。
すると、文法のロジックを早く学んで納得したくなるかもしれませんが、そこをあくまでもラフに捉えたまま、まずフレーズから身につけていくというのを、ぜひ体験していただきたいと思います。
この「ラフで適当な学び方」の効果を、きっと実感していただけるでしょう。
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YouTuber、インフルエンサー
2000年3月4日生まれ。愛知県出身。スペインの音楽に関心を抱いたことをきっかけとして、独学で外国語学習を開始。以降、5年間で12カ国語を習得(スペイン語、英語、フランス語、アラビア語、インドネシア語、ロシア語、ポルトガル語、ドイツ語、トルコ語、中国語、タイ語、韓国語)。外国語学習の楽しさを発信するため、2022年に本格的に「Kazu Languages」というチャンネル名でYouTuberとしての活動を開始。年内に登録者数10万人を突破、翌年には台湾の急上昇ランキング3位を記録、そして日本国内でも急上昇ランキング18位となり、アメリカ、ロシア、ブラジル、ドイツ、インドなどさまざまな国からも視聴されるチャンネルになった。YouTube、TikTok、Instagram、Facebookの総フォロワー数は現在、のべ200万人となっている。
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(YouTuber、インフルエンサー Kazu Languages)
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