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バイオマス由来難重合性モノマーの効率的な重合技術を開発

PR TIMES / 2020年10月5日 14時45分



 株式会社日本触媒(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:五嶋祐治朗、以下「日本触媒」)と国立研究開発法人理化学研究所(以下「理研」) 環境資源科学研究センター バイオプラスチック研究チーム(阿部英喜 チームリーダー、竹中康将 研究員)の共同研究チームは、バイオマス由来の難重合性モノマーの重合において、効率的に高分子量化できる重合システムを開発し、高性能なポリマーを得ることに成功しました。

 バイオマス資源からは、不飽和炭素―炭素二重結合を有する脂肪族化合物や芳香族化合物が数多く得られます。例えば、ケイ皮酸モノマーは、非可食バイオマスであるリグニンの分解生成物として知られるリグニン誘導体に含まれる化合物です。また、クロトン酸モノマーは、生物が合成を行うバイオ生産によって得られる3-ヒドロキシブタン酸(3HB)やポリ3-ヒドロキシブタン酸(P3HB)の熱分解生成物として入手することが可能な化合物です。これらのモノマーは、β位に置換基を有するα,β-不飽和カルボン酸化合物(β置換アクリレート)に分類することができ、重合して得られるポリマーはモノマー単位当たり2つの光学中心を有し、高度に立体規則性を制御することができるため、バイオマス由来の高性能・高機能な新規樹脂素材の創出が期待されます。

 しかしながら、β置換アクリレートは、β位置換基の立体的、あるいは電子的要因で通常のラジカル重合法では高分子量化が困難な難重合性モノマーの1つとして知られています。また、数少ない重合例においては、工業的には実現困難な反応条件を必要とするなど、実生産においては多くの課題もありました。日本触媒と理研の共同研究チームは、β置換アクリレートの重合に対して、モノマーを活性化させることで重合を進める点が特徴的である有機酸触媒を用いたグループトランスファー重合(GTP)技術が適用可能であることを見出しました。そして、技術開発を進めるとともに、重合メカニズムを解明することで、高分子量化を阻んでいた要因を特定し、重合を効率化するための知見を見出しました。さらに、用いる有機酸触媒や開始剤の置換基構造を検討して重合条件を最適化することで、温和な条件下で効率的に高分子量化を実現する重合技術の開発に成功しました。

 得られたケイ皮酸系ポリマーは、エンジニアリングプラスチックとして知られるポリカーボネートと同等、あるいはそれ以上の耐熱性を示すとともに、多くの薬剤への耐薬品性を示します。また、機械的性質については、高強度な材料への展開が期待できます。一方、クロトン酸系ポリマーは、有機ガラスとして知られるポリメチルメタクリレート(PMMA)に匹敵する透明性を持ちつつ、メタクリレートポリマーに比較して高い耐熱性、及び耐薬品性を示します。これらの特徴は、高度に制御された立体規則性によって発現する液晶性に起因するものであると考えられます。

 今後、生産技術の確立を進めるとともに、ポリマー用途開発を加速します。

 今回の研究成果は、Polymer Chemistry (Royal Society of Chemistry) 2020, Vol. 11, Issue 37, Pages 5981-5991、及びMacromolecules (American Chemical Society) 2020, Vol. 53, Issue 18, Pages 7759-7766に掲載され、それぞれFront Cover、Supplementary Coverに選出されました。

DOI: 10.1039/d0py00353k
[画像1: https://prtimes.jp/i/54162/18/resize/d54162-18-827117-0.jpg ]


DOI: 10.1021/acs.macromol.0c01122
[画像2: https://prtimes.jp/i/54162/18/resize/d54162-18-953633-1.jpg ]


関連論文:
Communications Chemistry 2019, 2, 109. (DOI: 10/1038/s42004-019-0215-3)
Macromolecules 2019, 52, 4052. (DOI: 10.1021/acs.macromol.9b00272)

関連リンク:
リグニン誘導体からアクリル樹脂の開発に成功(2019年10月17日理研プレスリリース)
https://www.riken.jp/press/2019/20191017_2/index.html

【用語説明】
クロトン酸モノマー:α,β-不飽和カルボン酸化合物において、β位置換基がメチル基であるモノマー。
ケイ皮酸モノマー:α,β-不飽和カルボン酸化合物において、β位置換基がフェニル基であるモノマー。
グループトランスファー重合(GTP):(メタ)アクリル酸エステルの精密重合法として、1980年代に開発された重合技術。シリルケテンアセタールを開始剤としてマイケル付加反応を繰り返すことで重合が進行する。
シリルケテンアセタール:一般構造R-C=C(OSiR3)(OR)で表される有機化合物群。

【バイオマス由来難重合性モノマーのGTP】
(上)ケイ皮酸系ポリマー、(下)クロトン酸系ポリマー
[画像3: https://prtimes.jp/i/54162/18/resize/d54162-18-899236-2.jpg ]

[画像4: https://prtimes.jp/i/54162/18/resize/d54162-18-854704-3.jpg ]



 日本触媒について:
 1941年の創業以来、自社開発の触媒技術を核に事業を拡大。酸化エチレンやアクリル酸、自動車用・工業用触媒などを世の中に送り出し、現在では紙おむつに使われる高吸水性樹脂で世界1位のシェアを誇っています。日本触媒は「テクノロジー(技術)」を通じて「アメニティ(豊かさ)」を提供する、という企業理念「TechnoAmenity」のもと、グローバルに活動する化学会社です。
https://www.shokubai.co.jp

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