親世代不在の訪米、伝わった「本音」 日本政府には改めて奮起要望 拉致被害者家族
産経ニュース / 2024年5月4日 19時16分
北朝鮮による拉致被害者家族らが4日、米国から帰国した。このところ日朝情勢が「対話局面」にあるとの見方がある中で作成された新たな運動方針に関し、米側の理解を得ることに成功。一方、今回最も重視したのは、方針の背景にある「本音」の共有だった。
「個人の感情としては、北朝鮮には怒りや憎しみしかない」。現地4月30日の記者会見。横田めぐみさん(59)=拉致当時(13)=の弟で、家族会代表の拓也さん(55)は、面会した米側関係者らにそう訴えたことを明かした。
「独自制裁の解除」に初めて言及
今年の新たな運動方針では「独自制裁の解除」に初めて言及。人道支援を認めるとした昨年分と併せ、日朝交渉進展に何らか寄与すれば、との思いを反映させた。
米側には「融和的」と指摘される懸念もあった。だからこそ、背景にある感情を率直にぶつけ、局面打開に向けた「苦渋の内容」であることを丁寧に説明した。
方針では全拉致被害者の即時一括帰国が実現しないまま親世代が死去した場合、「強い怒りを持って制裁強化を求める」とも併記。一方的に対話路線へ軸足を移したわけではないことも訴えた。
視覚的にも訴え
全ての根底にある「親世代に残された時間の少なさ」については、視覚的にも訴えた。
拓也さんは、同行がかなわなかった母親の早紀江さん(88)の近影が写ったパネルを用意。田口八重子さん(68)=同(22)=の長男、飯塚耕一郎さん(47)も、八重子さんの兄で、再会を果たせないまま令和3年に亡くなった飯塚繁雄さんらのパネルを携え、米側に示した。関係者からは「私にも子供がいる」、「同じ気持ちに立つ」などと賛意が続いた。
日朝情勢を巡っては、北朝鮮が今年2月、日朝首脳会談の実現に前向きともとれる発信をした一方、3月以降は日本側との接触を拒否する意向を示すなど、再び強硬姿勢に転じている。拉致問題が「解決済み」との立場も崩していない。
この日の帰国会見で拓也さんは、今後の日本政府の奮起を改めて要望。家族会が大前提に据える「全被害者の即時一括帰国」を日朝交渉でも貫くよう求め、耕一郎さんも「私たちの方針に寄り添い、迷わず進んでほしい」と訴えた。(中村翔樹、外崎晃彦)
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