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夜に美しく浮かぶ広島・備後庄原駅 古き良き「開業の大正時代にタイムスリップ」 休日に訪ねる

産経ニュース / 2024年5月8日 11時0分

街をめぐるため利用できるレンタサイクル

JR芸備線の前身、芸備鉄道の延伸によって大正12年に開通し、今年で開業101年を迎えたのが、備後庄原駅(広島県庄原市)だ。令和2年には開業当時の骨組みを一部利用しながら「大正ロマン」をイメージした駅舎に改修され、駅前のバスターミナルも整備。広島県と岡山県を結ぶ芸備線では現在、一部区間の存廃を含め議論の対象となっているが、市民のにぎわいを作り出す拠点になろうと努めている。

改修にあたっては、市と住民らが意見を出し合い、平屋建ての駅舎の内装は白壁と木の格子が施された落ち着いたデザインで、軒などは開業当時の木材をそのまま活用。はりなどもできる限り残し、屋根も原形をとどめている。待合室も広く取り、市民がくつろげる場所となっている。

住民や商店主らでつくる「庄原駅周辺地区まちづくり協議会」の会長で、駅前でガソリンスタンドなどを経営している西田学さん(59)は「すべてを新しくしようという案もあったが、昔のものを大切にしたいと。大正に開業したということで、大正ロマンを打ち出すことに決定した」と話す。

駅舎の明かりも大正時代の照明をイメージし、夜の駅舎が美しく浮かび上がるようになっている。最近では日本各地から鉄道ファンが同駅を訪れ、写真や動画の撮影を行う人も多いという。

かつては市民の利用も多く、「子供のころは、このあたりの人は修学旅行も新婚旅行も庄原駅から出発した。私も東京の大学に進学するとき、希望を胸にこの駅を出発しました」と西田さん。駅近くで育ち、現在は同駅で窓口係員として働く清原正明さん(69)も「昭和30年ごろには1日500~600人が利用していて、駅前に飲食店や飲み屋なんかも多かった。かつては急行も走っていた」と振り返る。このころ、駅前は牛の競り市場で、競り落とされた牛はこの駅から各地に出荷されていったという。

ただ、昭和後期に入りマイカーの普及や高速道路の整備が進み、利用客は減少。旧国鉄時代から約40年運転士などとして勤めていた清原さんは「今のダイヤは平日は上り4本、下り7本だけです。利用者も1日100人に届かない」と話す。

今年3月には備後庄原―備中神代(こうじろ、岡山県新見市)間の存廃などを話し合うため、全国初の再構築協議会が開かれた。国が調整役となり、沿線自治体やJR西日本、有識者らと協議した上で3年以内を目安に結論が出される。自治体側は、路線の存続を求めているが、利用低迷に悩むJR側との隔たりはまだ大きい。

備後庄原-備中神代間が廃線になれば、備後庄原駅は広島側からの終着駅になる。

駅隣に本社を置く地元のバス会社、備北交通(広島県庄原市)は電動自転車をレンタサイクルとして貸し出し、汽車の待ち時間を街めぐりで楽しんでもらおうと地元の名刹(めいさつ)や商業施設などを紹介する手づくりのガイドマップを作製し、支援する。

西田さんは「100年の歴史がある駅。次の100年に向け、恥ずかしくない駅にしたい。それは芸備線の存続なしにはかなわない」といい、今後も駅前でイベントを開くなど駅前のにぎわいづくりに取り組んでいく決意だ。(藤原由梨)

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