ゲルを塗るだけで働く気力が上がる! 定年制度がないアメリカではニーズ激高、93歳会社社長も続けている「テストステロン補充」の効果とは
集英社オンライン / 2024年5月1日 10時0分
〈最高の薬「運動のさまざまな効果を詰め込んだ一つのカプセル剤」の実現へ…「筋疲労は乳酸が原因」は誤解だった!〉から続く
アメリカでは一般的になりつつあるホルモン補充療法。やる気に関わるテストステロンを補充できれば、ビジネスパーソンがストレスに立ち向かう活力にもなるという。いったいどのように体に作用するのか、男性更年期に詳しい順天堂大学の堀江重郎氏に解説してもらった。
本記事は、書籍『金を使うならカラダに使え。老化のリスクを圧倒的に下げる知識・習慣・考え方』より一部抜粋・再構成したものです。
日本ではなじみの薄いテストステロン補充
LOH症候群(男性更年期障害)の治療は泌尿器科など男性更年期を診る科のほか、アンチエイジング医療を行うクリニックで受けられるが、テストステロン補充療法や、薬物療法、エクササイズ、食事療法、マインドフルネス、リラクゼーション等さまざまな治療法がある。
原因がテストステロンの減少なのだから、足りないものを与えるテストステロン補充療法が理にかなっていると思うのだが、日本では男性に向けたテストステロン製剤が少ないのだそうだ。
保険適用されるのは、なんと30年以上前に承認された筋肉注射剤しかなく、効果は数日程度で副作用も大きく、何より注射なので痛い。海外ではテストステロンを補充するゲルや経口薬などがあるというのに。
なぜ日本では、テストステロン補充を目的とした薬が開発されないのか?
「日本では、ホルモンを補充するという考えがまだ一般的になっていないんです。不安を感じたり、危険意識を持ったりする方も少なくありません。また、定年退職という制度があり、退職後は隠居して静かに暮らすという、ある意味〝枯れていく〞文化も背景にあるのだと思います。
ですが、少子化や高齢化社会の状況を鑑みると、このままで良いわけはありません。ストレスによって早期にLOH症候群になることを防ぎ、健康寿命を延ばすためにも、治療に使える新しいテストステロンゲルを開発しました。ゲルのタイプで経皮吸収されやすく、副作用が少ないのが特徴です」(堀江教授)
テストステロン補充療法の効果は、筋肉が増える、脂肪が減る、男性機能の回復、糖尿病リスクの低減、脂質異常症の改善などがあり、臨床テストでの主観的な効果としては、睡眠が深くなった、他者に左右されなくなった、不安感が減ったなどがあるそうだ。もちろん個人差はあるが、少量でも効果が現れるのも特徴だという。
ストレスにやられるのではなく、バネとして闘う気力に変えられるようになれば仕事を続ける期間も長く延ばせそうだ。
テストステロン値は唾液でも測れる
LOH症候群かどうかの診断はもちろん、テストステロンの数値を知りたい場合は血液検査で測定する。そのほか、簡易的な方法として、唾液で測定する方法もある。堀江教授によるとメリットの多い測定法だそうだ。
「テストステロンの数値は環境や感情によっても変わるので、日によってかなり数値が変化することがわかっています。この検査が一般的に広まれば採血よりも気軽に、測定する場所も医療機関に限らず、スポーツジムなどでも可能になるでしょう。エクササイズの後など、こまめに測ることで自己管理もしやすくなると思います」(堀江教授)
ビジネスにおいても使えそうなデータが出ている。
「研究によって、一番数値が低くなる時間帯が15時ごろだとわかりました。テストステロンは決断にも関わるホルモンなので、15時ごろは重要な意思決定は難しいかもしれません。スケジュールを組む際にも数値が参考になるでしょう」(堀江教授)
テストステロン療法について堀江教授から得る情報を聞くに、やる方が良いことばかり。しかし医療には必ずリスクがある。特に自費治療の場合はやれることの幅がかなり広くなるが、リスクの確認は必ずする。僕は、できうる限りのすべてを知った上でメリットとリスクを天秤にかけ、やるかどうかを決めている。
「テストステロン補充のリスクは非常に少ないです。ボディビルダーのように、一時的に大量投与する場合は注意しなくてはいけませんが、そうでない限りほとんどリスクはありません」と聞き、まずはテストステロン値を測ってみることにした。
ゲルを塗るだけで働く気力が上がる⁉
測定結果を聞くために、クリニックを再び受診して堀江教授の説明を受けた。堀江教授の所見はこうだった。
「総テストステロン値はあまり高くはありませんが、フリーテストステロン値は高いです。フリーテストステロンとは『遊離型テストステロン』とも呼ばれるもので、心身の症状との相関性も明らかになっています。我々はこの2つの数値を見て判断するのですが、良いパターンですね。血液のデータ自体も非常に良く、亜鉛の数値も十分で、食生活が良いことがわかります。ビタミンDもまあまあいいですが、サプリを少し足してもいいかもしれません」(堀江教授)
テストステロン補充が必要という結果ではなかったが、モニターとして試用させてもらうこととなった。堀江教授が開発に関わったテストステロンゲルである。チューブ入りで皮膚に塗るだけなので使い方は簡単。
基本的にはどこに塗ってもいいが、あまり毛が生えていないところがベターらしい。「会社ではやる気が出ない」という人はテストステロン値が低い結果が多いから、堀江教授はゲルの使用を勧めるそうだ。
「テストステロン補充に関して、ものすごくニーズがあるのがアメリカです。定年制度がないこともあるでしょうが、70歳を過ぎたお爺さんでも仕事をしているわけです。筋力が落ちて仕事に影響しないようにとか、93歳で会社の社長を続けているからという理由でテストステロン補充をしている。私が出会った高齢の方々は、皆、姿勢も話し方もとてもピシッとされていました」(堀江教授)
こんなに簡単に使える薬があるのに、テストステロン減少が原因とも知らず、さまざまな症状に耐えている人がいるのが日本の現状なのだ。
写真/shutterstock
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