岸田首相の言葉はなぜ響かないのか?“昭和の名宰相”の演説・スピーチと比較する
日刊SPA! / 2024年4月12日 8時51分
『甦れ 田中角栄 人が動く、人を動かす 誰でも分かる「リーダー学」入門』(日本ジャーナル出版)
半世紀を超える永田町取材に関わっている政治評論家の小林吉弥氏。この間、佐藤栄作から岸田文雄まで26人の総理大臣を取材してきている小林氏が“別格”と評すのが田中角栄だ。決断力、先見力、構想力、勝負勘はもとより、“角栄節”と言われた演説・スピーチで大衆の心を掴んできたのは周知のことだ。裏金問題では玉虫色の答弁を繰り返し、内閣支持率は変わらずの低空飛行を続ける、岸田首相と何が違うのか。小林氏が4月12日に上梓した新刊『甦れ 田中角栄 人が動く、人を動かす 誰でも分かる「リーダー学」入門』より、一部を抜粋する。
◆岸田首相の演説には印象が残らない
岸田文雄首相の演説、スピーチを聞いていると、穏やかなしゃべり方には好感が持てるが、惜しむらくは感情の高まりがなく、聞き終わったあと印象に残らず物足りなさがある。演説という言葉は「演じて説く」という意味だが、岸田首相は根が正直なのか話に色付けする技術が欠けており、これが玉にきずである。
それにしても、永田町取材歴50年以上の筆者は、最近の政治家の演説があまりに説得力、迫力不足であるのに、半ば失望している。例えば、昭和40~50年代に活躍した民社党の春日一幸委員長などは、一癖あった政治家として印象深いが、なんと与党追及の際には衆院本会議場でじつに4時間に及び、原稿なしでしゃべりまくってみせる力量の持ち主でもあった。
もっとも、涙あり笑いあり、音吐朗々の「春日節」を初めは多くの議員が楽しんでいたが、2時間ほどすると大半の議員は議席で寝ていたのだった。いくら演説が得意でも4時間は長すぎる。ものには限度があることは言うまでもない。
そこへいくと田中角栄における演説、スピーチの類いは、「角栄節」として国民に圧倒的な支持を受けていた。笑いが随所にあり、数字と歴史の裏付け、迫力満点の脅し口調、難しい話でも分かりやすい例え話、絶妙の間の取り方など、説得力抜群、聴衆は誰もが満足して聞き入っていたものである。
◆人物を大きく見せる「スピーチ上手」
「まぁねぇ、皆さんッ、どうですか。学校の先生がデモで道をジグザグに歩いておってね、子供だけに真っすぐに歩きなさいよなんて、これ聞くもんじゃないねぇ。校長の言うことは聞かない、校長が首をくくるところまで追い込む。それでいて労働者でござあーいとくる。そんな馬鹿が許されますかッ(拍手)。教育は、民族悠久の生命なのであります!
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