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「80:20の法則」と「夫の支え」が導いた、大手金融機関初の女性CEOの誕生~アメリカの女性リーダー、日本においては「極端な例」なのか?~

LIMO / 2020年12月12日 18時45分

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「80:20の法則」と「夫の支え」が導いた、大手金融機関初の女性CEOの誕生~アメリカの女性リーダー、日本においては「極端な例」なのか?~

アメリカでは、カマラ・ハリス氏が米国初の女性副大統領に就任予定となり注目されています。またバイデン次期大統領は、新しい政権の重要ポストに積極的に女性を指名しています。

実は、アメリカの女性進出は政界だけではありません。”Boys’ Club”といわれ男性主体の生き馬の目を抜くかのような厳しいウォールストリート、金融業界でもついに超大手金融機関初の女性CEOが誕生しました。2020年9月、米金融大手シティグループはジェーン・フレイザー氏をCEOとして指名。2021年2月から就任するということで話題となりました。男性社会を上りつめたジェーン・フレイザー氏とは一体どういう女性なのでしょうか。また、日本では「指導的地位に占める女性3割」の目標はどうなっているのかも気になります。

母親の顔をもつ超エリート

フレイザー氏はスコットランド出身の53歳。英ケンブリッジ大学経済学部を卒業し、米ハーバード・ビジネススクールでMBAを取得したエリートです。YouTubeの本人のスピーチ(※1)(https://www.youtube.com/watch?v=ZIDK2PmHnVc)によれば、2人の息子さんの母親だそうです。旦那さんが夕食にピザだけでなく、野菜もちゃんと食べさせているかを心配したり、息子さんの歯磨き粉を仕事帰りに買って帰ったりと、普通の母親と同じことを考える時間も持つ優しそうな温かみのある女性です。

ゴールドマン・サックス、マッキンゼーと有名どころに勤めた後、シティグループに入りました。様々な分野、複数の国を経験し、シティでは16年間出世街道を歩み、頂点に立つことになったのです。

80:20の法則で子育てと両立

子育ての大変な時期は、マッキンゼーで5年間パートタイムという立場で働きながら、子育てを優先させたといいます。焦りはあったようですが、「いっぺんにやりたいこと全てを納得いくようにはできない。80:20の法則を身につけなくてはならなかった」と述べています。

80:20の法則、いわゆる「パレートの法則」ですが、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレート氏が発見した法則で、ビジネスでよく使われている考え方です。20%を極めれば80%は達成できる。全てを完璧にこなそうとするより、優先を決めてそれに集中した方が効率的だということです。さすが、ハーバード・ビジネススクール出身のキャリアマザーらしい発想です。

5年間、仕事を減らし、子育てに集中した後は、フルタイム勤務にもどりました。ワーキングマザーはそれまでの人生で最も大変なことだったといいます。子供への罪悪感もあったようです。

転勤をきっかけに、歳の離れたおなじく金融機関に勤めていたご主人がアーリーリタイヤする形となり、彼女の転勤に子どもと一緒について回り彼女を支えてくれたようです。そういえば、カマラ・ハリス次期副大統領のご主人も弁護士の仕事を辞め、次期副大統領となる妻を全面的に支える方針だと、伝えられています。

環境と経済力の土台

フレイザー氏が男性主体の金融業界で初の女性CEOにまでのぼりつめられたのは、彼女の並大抵ではない努力、才能、人間性はもちろんでしょう。しかしそれだけではなく、働く環境、家族、上司、同僚など周りの人々にも恵まれていたようです。スピーチの中でフレイザー氏は、不利な状況を優位な状況に変える方法などの貴重なアドバイスをくれる素晴らしいメンター達(上司・先輩)に恵まれたと述べています。そしていいメンターになろうと心掛けることも大切だといいます。

またフレイザー氏は、信頼できるしっかりしたベビーシッターを金に糸目をつけずに雇うに見合うだけの十分な収入もあったことでしょう。

日本も女性の地位向上を目指すも…

日本でも小泉内閣時代の2003年、「指導的地位」に占める女性の割合を2020年までに3割程度まで上昇させるという目標が掲げられました。しかし、目標ゴールの年である2020年、『「2020年」から「2030年までの可能な限り早期」』(※2)(https://mainichi.jp/articles/20200626/k00/00m/040/018000c)へと先送りされました。

そもそも目標3割というのは非現実的だったのではないでしょうか。改革はみられるものの、いまだに大企業で役員になるには、男性でも新卒入社し長年働き続けるという形が主流です。まして女性は出産後は「マミートラック」へ、出世コースから外されてしまうことが多いようです。

日本の女性がフレイザー氏のように人生のステージに合わせた働き方と転職を重ね、キャリアアップし大企業の「指導的地位」に就くというのはまだまだ難しいことでしょう。また、人それぞれ価値観、環境、能力に違いがあります。日本の場合欧米ほど、「指導的地位」を目指す女性がいるのかという点も疑問です。多くの日本女性は、能力は優れていても活かせる環境が整っていなかったり、男女不平等な給料体制から最初から諦めてしまうこともあります。

そのため、能力、環境、運に恵まれたフレイザー氏は日本の一般的な働く女性、ワーキングマザーにとっては極端な例なのかもしれません。ただ、男性主体の金融業界で自分に与えられた全ての力を駆使し、人の何倍も努力、苦労を重ね、女性CEOへの道を切り開いたことは「指導的地位」を目指す女性達にとっては励みになるでしょう。どの業種においてもリーダーを目指そうとする女性が増えるかもしれません。

参考

(※1)“Jane Fraser on Her Path to CEO of Citi Latin America”YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=ZIDK2PmHnVc)
(※2)「女性管理職3割目標 「20年30%」から「30年まで」に先送りへ 政府」毎日新聞(https://mainichi.jp/articles/20200626/k00/00m/040/018000c)

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