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ボルボ系「ポールスター」、韓国でEV生産の裏事情 親会社は中国企業、米政府の対中制裁回避狙う

東洋経済オンライン / 2023年12月11日 15時0分

ポールスターは中国の吉利控股集団の実質的な子会社だ。写真は吉利の工場で2023年10月に生産を始めた新型SUV「ポールスター4」(同社ウェブサイトより)

スウェーデンの高級EV(電気自動車)メーカーのポールスター・オートモーティブは、同社の新型SUV「ポールスター4」を韓国の自動車メーカー、ルノーコリア自動車の釜山工場で生産し、北アメリカ市場および韓国市場で販売する計画を明らかにした。

【写真】ポールスターは特別買収目的会社との合併によりナスダックに上場したが、赤字続きで株価が低迷している。写真は2022年9月の上場式典

中国の民営自動車大手の吉利控股集団(ジーリー)、ポールスター、ルノーコリアの3社が、このほど提携に合意した。ポールスターは2017年、スウェーデンの乗用車メーカーのボルボ・カーとジーリーが共同で設立。ジーリーは2010年にボルボ・カーを買収しており、ポールスターの実質的な支配権はジーリーが握る。

ルノーコリアの前身は1994年に設立されたサムスン自動車で、2000年にフランス自動車大手のルノーが株式の8割を取得して子会社化した。2023年5月、ジーリーはルノーコリアの第三者割当増資を引き受け、現在の出資比率はルノーが約53%、ジーリーが約34%となっている。

販売伸びず収支改善が急務

ポールスターは2022年6月、特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じてアメリカのナスダックに上場。同社が2023年11月8日に開示した7~9月期の決算報告書によれば、同年1月から9月までの販売実績は4万2000台に過ぎず、通年でも6万台にとどまる見通しだ。

同じく決算報告書によれば、ポールスターは1〜9月の売上高が18億4000万ドル(約2742億円)だったのに対し、同期間に7億3500万ドル(約1095億円)の営業損失を計上した。9月末時点の現金および同等物の残高は9億5000万ドル(約1416億円)しかなく、収支の改善と追加の資金調達が急務になっている。

新型車のポールスター4は、2023年10月に中国のジーリーの工場で生産を始めたばかりで、同年末から中国の顧客に納車を始める予定だ。同社の将来は、その売れ行きにかかっていると言っても過言ではない。

ポールスター4は、当初は中国だけで生産して世界に輸出する計画だった。それをルノーコリアでも生産することにしたのは、中国から(大市場である)アメリカへの直接輸出が難しいためだ。

アメリカ政府は2018年、当時のドナルド・トランプ政権下で、自動車を含む中国からの輸入品に対する関税率を25%に引き上げた。現在のジョー・バイデン政権もそれを引き継ぎ、税率見直しは実施していない。

バイデン政権はさらに、2022年8月にEVの普及を後押しする優遇措置を盛り込んだ「インフレ抑制法」を成立させた際、中国を含む「懸念される外国の事業体」が関与する製品を対象から除外した。

思惑通りに運ぶ保証なし

インフレ抑制法は、アメリカと自由貿易協定(FTA)を締結する国からの輸入に関しては優遇措置の対象に含めている。そこでポールスターは、アメリカとFTAを結ぶ韓国でポールスター4を生産することで、高関税やインフレ抑制法の優遇措置の適用除外を回避しようとしている。

だが、ポールスターの思惑通りに事が運ぶ保証はない。インフレ抑制法が排除する「懸念される外国の事業体」の定義はあいまいだからだ。ポールスターの実質的な親会社は中国企業のジーリーであり、その点が問題視される可能性は否定できない。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は11月23日

財新 Biz&Tech

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