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「深刻な薬不足」に陥る薬局に考えられる解決策 全国の薬局が供給不足に陥った複雑な要因

東洋経済オンライン / 2023年12月22日 11時20分

薬局が陥るさまざまな課題。どう解決できるのでしょうか(写真: IYO / PIXTA)

感染症の流行が薬不足に拍車をかけています。季節性インフルエンザの流行拡大と、まだ終息していない新型コロナウイルス感染症、そしてアデノウイルスによる呼吸器感染症や咽頭結膜熱(プール熱)の患者が急増しています。

このため、せき止め薬やたん出し薬の需要が高まり、全国の薬局で欠品が続いています。実際に調剤薬局で「処方薬がすぐに用意できない」と言われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

長く続く薬の欠品問題の背景と、その解決策として注目されている医療デジタルトランスフォーメーション(医療DX)の重要性について解説します。

薬不足はなぜ起こったか

「薬が足りない」――。薬局で処方薬を求めようとしても、いつもの薬がすぐには手に入らない。そんな異常事態とも呼べる薬の供給不足が全国各地で起こっています。

事の発端は、2020年に後発薬メーカーの小林化工株式会社で起こった品質不正です。爪水虫などの治療薬に睡眠導入剤の成分が混入し、服用した人が意識を失うなど重い健康被害が発生しました。こうした後発薬メーカーによる不祥事やトラブルは小林化工1社だけにとどまらず、業界全体で業務停止命令や改善指導が相次ぎました。

すると、不祥事を起こしていない製薬会社に薬の生産注文が殺到するわけですが、これらすべての増産に対応することは難しく、多くの薬で出荷が制限されるようになりました。この出荷制限は現在も解消せず、全国的な薬不足を生み出しています。そうした最中で、冒頭で挙げた感染症の流行が薬不足に拍車をかけました。

薬不足が後発薬メーカーの不祥事によって始まったことは確かですが、増産に対応できないほどメーカーの体力が乏しい理由についても注目してみましょう。国の方針と製薬業界の構造がこの事態を生んだと筆者は考えています。

厚生労働省が発表した「保険者別の後発医薬品の使用割合(令和5年3月診療分)」によると、日本では後発薬(ジェネリック医薬品)の使用割合が80.89%にまで達しています。この拡大には、医療費抑制を目的とした、政府による強い後押しがありました。

後発薬はすでに研究開発が終わった先発薬を後追いで作るため、医療用医薬品の価格である薬価は先発薬より低く設定されます。

政府は安価な後発薬を普及させるために、後発薬を一定割合以上処方する病院や薬局に対して診療報酬を加算するなどの措置を採ってきました。メーカーに対しても供給体制の拡充を求め、日本の後発品普及率は向上しました。

海外製薬会社の動向にも影響

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