全国に名車続々登場、「私鉄特急」黄金期の記憶 近鉄「ビスタカーⅡ世」や東武DRCなどの勇姿
東洋経済オンライン / 2024年1月13日 6時30分
近鉄ビスタカーや小田急ロマンスカー、東武DRCなど、大手私鉄各社は昭和30~40年代にかけて工夫を凝らした各社自慢の特急列車を導入しました。東洋経済オンラインで懐かしの列車を中心とした記事を連載する鉄道写真家・南正時さんがこれらの列車の全盛期に撮影・取材した記録をまとめた『私鉄特急追憶乗車記』は、大手私鉄の有料特急列車を中心に走行風景や車内の様子など、往年の名車の姿を収録しています。同書の中から、近鉄「ビスタカーⅡ世」の項目と、当時の特急撮影を振り返る部分を抜粋(一部再構成)し、掲載写真の一部とともに紹介します。
近鉄が誇った2階建て特急車
近鉄は1958年に、2階建て電車の試作的な車両として10000系を製造した。いわゆる初代の「ビスタカー」で、7両編成1本だけが造られ、大阪と伊勢を結ぶ「阪伊特急」に投入した。残念ながら当時私はまだ小学生で、実物を見ても乗ってもいない。
この時代、近鉄は大阪線が標準軌、名古屋線が狭軌と軌間が異なり、名阪特急は伊勢中川で乗り換えを強いられていた。ところが10000系の登場翌年、1959年9月に東海地方を襲った伊勢湾台風によって名古屋線は壊滅的な被害を受けた。近鉄は予定していた名古屋線の改軌を前倒しし、標準軌で復旧することを決断。軌間を統一することで名阪間の直通運転を実現した。
その際に登場したのが10100系ビスタカーで、1959年12月に改軌が完了するとともに名阪ノンストップ特急として運転を開始した。近鉄は10100系を「新ビスタカー」と呼んでいるが、ファンには「ビスタⅡ世」や「ビスタカーⅡ世」の名で親しまれている。
10100系の車体設計は10000系を基本としているが、全体が丸味を帯びた流線形で、ヨーロッパの列車のデザインのようにスマートな形状になった。特徴ある2階のビスタドームカーは、当時の西ドイツのラインゴルト号のドームカーを参考にしたといわれ、その姿はヨーロピアンスタイルともあって流れるような形状が人気を博した。
1967年に登場した特急車「スナックカー」は車内の一角に軽食を調理して提供できる「スナックコーナー」を設置し、10100系も「ミニスナックコーナー」を設置した。これらのコーナー自体は短命に終わったが、車内販売や、飛行機のように温かいおしぼりを配るサービスはその後も行われた。
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