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"複数の言語を話す"が脳の健康に良いという真実 人間がAI時代に外国語を学習する意味は何か

東洋経済オンライン / 2024年2月7日 17時0分

認知症や、認知機能の衰えに関する研究からわかるのは、教育レベルと、複数の言語を話すことは、病気の進行を遅らせる要素になるということだ。

この2つのライフスタイル要素は、運動、ストレス管理、そして生涯を通じて好奇心を保つことと並んで、年を取っても頭脳明晰でいる助けになってくれる。

もちろん、脳の健康に効果がある経験は、母語以外の言語を話すことだけではない。音楽は豊かな聴覚体験の一形態であり、聴覚処理能力を向上させる助けになってくれる。ただ読むことも一種の認知体験であり、単語と意味をつなげる働きがある。

またゲームをすることも、認知制御といった脳の機能にいい影響があるとされている。何か新しい挑戦を経験することも、それが旅行であれ、あるいはクロスワードパズルやジグソーパズルであれ、高齢になっても脳の健康を保つ助けになる。

中でも特に影響が大きい要素は教育であるようだ。最近の研究によると、学士号を持つ80歳の女性の記憶力は、平均すると高卒の60歳の女性の記憶力と同程度になるという。

研究者たちはこの結果を受けて、4年間長く教育を受けることは、20年間の加齢による記憶力の低下を補う力があると考えた。

「マルチリンガル」の特質

マルチリンガルには、音楽の訓練に伴う聴覚の向上、読むことに伴う単語と意味のつながりの強化、ゲームをすることに伴う認知制御の拡大、刺激のある活動をすることに伴う脳の健康向上、教育に伴う学習能力の向上、運動に伴う認知症の予防といった利点をすべて実現してくれる力がある。

メタ分析(複数の研究を対象にした分析のこと)によると、バイリンガルであることが認知機能に与える影響は、運動が認知機能に与える影響とだいたい同じだという。

マルチリンガルだけの特質をもう1つあげるなら、それは新しい言語を習得してしまえば、後は特に何もしなくてもマルチリンガルであることの利点を享受できるという点だ。

脳に刺激を与える他の活動、たとえば大学に通う、クロスワードパズルや数独を解く、運動をする、本を読むといった活動の場合、効果を上げるためにはその活動をずっと続けなければならない。そのためには時間が必要であり、ときにはお金が必要になることもあるだろう。

一方でマルチリンガルの場合は、ただ普通に日常生活を送っているだけでいい。複数の言語を管理するということは、それだけで認知機能のエクササイズになるからだ。

使う言語を選ぶ、使わない言語を抑制する、言語を使いこなす、言語を管理するといった認知機能のエクササイズが、マルチリンガルの脳内ではすべて自動的に行われている。

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