「もしトラ」シナリオがはらむ安全保障の死角 知日・知米派韓国人からみえる日米韓協力関係の隙間
東洋経済オンライン / 2024年3月23日 8時0分
前政権時のように再び、トランプ氏と金正恩氏の首脳会談が行われると想定し、次はどのような会談になりそうか。1期目当時の2回の首脳会談の交渉過程から考えてみましょう。
まずトランプ氏は、相手への信頼関係よりも取引を優先するディール・メーカーという姿勢を示します。これについて、故・安倍晋三元首相は次のように回顧しています。
〈トランプが「金正恩と会う」と明言したので、すぐにトランプと電話で会談しましたが、トランプの頭の中は、すでにディール・モードになっていました……(彼は)根がビジネスマンですからお金の勘定で外交・安全保障を考えるわけです。例えば、”米韓合同軍事演習には莫大なお金がかかっている。もったいない。やめてしまえ”、と言うわけです〉
(安倍晋三著、橋本五郎ほか聞き手『安倍晋三回顧録』中央公論新社、2023年)
最近の候補者指名争い期間中も、トランプ氏は「ウクライナ有事を24時間で決着してみせる」と豪語しています。確かに安易な譲歩をすれば、早く終わるでしょう。しかも、トランプ氏は即興的に譲歩に踏み切る傾向があります。
実際に2018年、シンガポールでの初の米朝首脳会談では、米韓合同軍事演習を中断させるというサプライズが飛び出しました。
翌2019年2月、ベトナムのハノイで行われた2回目の米朝首脳会談では、さらに大きなリスクをはらむものでした。
当時、韓国の文在寅大統領やその一部支持層の強い希望もあり、朝鮮戦争の「終戦宣言」が取引の材料に上がっていました。停戦状態にある朝鮮戦争による不安定な状態を「終戦」させることは、一見、よい展開に見えます。
しかし、いったん「終戦宣言」が安易に合意されると、在韓米軍の存在理由が弱まります。すると、次は在韓米軍の削減、もしくは撤退に追い込まれる確率が高まってしまいます。
在韓米軍という地政学的重要性
在韓米軍という強力な軍隊がいなくなれば、韓国に対して実力行使をする誘惑を北朝鮮に与える可能性があります。例えば、経済的に苦しい北朝鮮は韓国にある半導体工場などを手中に入れたいと考えるとしても、なんら不思議なことではありません。
実際、韓国にあまり好意的ではなかったと思える安倍氏もトランプ氏に「在韓米軍を撤退させてもらっては困る」と主張したことが回顧録に出ています。
トランプ氏は大統領就任中、金正恩氏と3回会いました。そのたびにトランプ氏の周辺からは、たとえばアメリカ政府関係者や外国首脳からの忠告や牽制の言葉が絶えませんでした。
この記事に関連するニュース
-
就任2年の韓国大統領、国民生活の困難について謝罪…岸田首相とは「お互い十分信頼し合っている」
読売新聞 / 2024年5月9日 18時44分
-
尹錫悦大統領が1年9カ月ぶり会見 「岸田首相と信頼関係十分」 日本重視変わらず
産経ニュース / 2024年5月9日 12時10分
-
【手嶋龍一氏×佐藤優氏対談】「ネタニヤフ首相が降りても変わらない」イスラエルが持つ「全世界を敵に回しても戦い生き残る」という内在的論理
NEWSポストセブン / 2024年5月8日 10時59分
-
南北の板門店宣言発表から6年 双方が軍事力誇示で緊張
共同通信 / 2024年4月27日 19時7分
-
田中均が予測 「日本が備えるべき地政学リスク」 世界の構造変化は9.11同時多発テロから始まった
東洋経済オンライン / 2024年4月15日 7時20分
ランキング
-
1「結婚前提」供述も交際の形跡なし=容疑者、一方的に好意か―東京新宿の女性刺殺・警視庁
時事通信 / 2024年5月9日 21時38分
-
2「3分でマイクオフ」環境省の司会の台本に明記 「後でしゃべらせろと言われた場合」も想定 水俣病の懇談会でマイク切った問題
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月9日 20時8分
-
3告発の兵庫県職員停職、吉村知事は「外部の通報機関も設置を」
産経ニュース / 2024年5月9日 20時47分
-
4東和銀行の25歳男性行員が自殺 上司からのパワハラなどが原因として労災認定 「取り返しのつかない大変な事案」と頭取謝罪
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月9日 20時22分
-
5JR東日本「みどりの窓口」削減から維持に、でも実は…並ばなくても「指定席券売機」で出来ること【Nスタ解説】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月9日 21時49分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください