「もしトラ」シナリオがはらむ安全保障の死角 知日・知米派韓国人からみえる日米韓協力関係の隙間
東洋経済オンライン / 2024年3月23日 8時0分
アメリカのジャーナリストであるボブ・ウッドワード氏やトランプ政権では大統領府安保補佐官だったジョン・ボルトン氏によれば、トランプ氏の側近らは、次のように忠告していました。
ミサイルの早期探知やアメリカ軍が前方展開するという戦略的重要性を主張しました。しかも、在韓米軍が駐屯する韓国中部・平澤(ピョンテク)基地は、海外における米軍基地の中で大規模であり、GDPの2.5%を軍事費として支出しているにもかかわらず、トランプ氏が韓国の防衛負担を過小評価する傾向がありました。
同時に、このような事実を大統領府スタッフや国防長官がトランプ氏に対し、懸命に事実を理解してもらおうとする苦労が描かれています。
それにもかかわらず、トランプ氏は「われわれアメリカは、韓国の生存を許しているんだ」「なぜわれわれは韓国の味方をしないといけないのか」と一歩も引かない姿勢を示していました。
このような実績のあるトランプ氏が再就任したらどうなるのか。現在不安視されているのは、トランプ氏は能力より忠誠心を優先した人事を行うことだ、とアメリカの有識者が見ていることです。
2019年のハノイでの米朝首脳会談が決裂した時、アメリカ政府関係者は胸をなで下ろしました。ボルトン氏は、核放棄とその検証を含むビッグディール・オア・ナッシングという考えを貫き、決裂に導いたことは幸いだった、と振り返っています。
ところが、それでもトランプ氏は金正恩氏に「何か他に譲歩できる項目はないのか」とか言い、「エア・フォース・ワン(大統領専用機)で平壌に送ってもよい」と粘ったとされています。
北朝鮮を核保有国として認める?
トランプ氏は何のために、こうした交渉戦術に固執するのでしょうか。1つは、1期目にも話題になりましたが、ノーベル平和賞候補になって、ひいては受賞して「朝鮮戦争を終わらわせた男」として歴史に名を残したいということです。
それ自体は必ずしも悪いことではないかもしれませんが、あまりにも自画自賛が強すぎます。米朝サミットの際にも、「これは大変なショーになるだろう」と側近に漏らしていました。自身の利害が絡みすぎていて公私混同の印象を持ちます。
次に、前任者を否定する傾向が強いことです。大統領選とはいえ、バイデン大統領に対し「アメリカ史上最悪の大統領」と呼びました。1期目が始まる直前にオバマ前大統領と引き継ぎ作業中に、「北朝鮮問題はあなたが直面する課題の中で最も難しい」と言われたことで、かえってトランプ氏がこの問題に挑戦しようとする起爆剤になったとも言われています。
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