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紅麹問題で注目される「腎臓」が持つ重要な働き 腎臓専門医が指摘する「カビ毒」の危険性とは

東洋経済オンライン / 2024年3月30日 9時30分

ただ、その変化は少しずつ起こるので、自覚症状はなかなか現れません。むくみや痛み、だるさを感じるようになっているときには、すでに腎臓の機能低下はかなり進行しているので、「非常にまずい状態」になっています。

もしも体から腎臓がなくなれば、汚れ切った血液が全身を巡り、脳や心臓、肝臓などはゴミだらけです。そのために、全身の臓器は本来の機能を果たせなくなるのです。

腎臓で尿がきちんと作られることで、血液中のゴミが取り除かれて、細胞が本来の働きを行える状態になっています。生命を維持するために、とても重要な働きなのです。

カビ毒は、主に腎臓の「尿細管」という部位に影響を与えると言われています。

心臓から腎臓に送られてきた血液は、糸球体でろ過されて、水分や老廃物などが原尿という尿の元の液体になります。糸球体から出てきた原尿は「ボウマンのう」という袋で受け止められて、その後は尿細管に流れていきます。

尿細管は体内のミネラルバランスを保っている

1日当たり原尿は約150リットルも作られています。その原尿の99%が、尿細管で再吸収されて、血液に戻されます。

原尿の時点では、尿素窒素やクレアチニンなどのゴミ(老廃物)だけでなく、アミノ酸やブドウ糖、ビタミンなど有用な成分もたくさん含まれています。有用な成分は、水分と一緒に尿細管で再吸収されるのです。そして、ゴミだけを尿として体外に排出します。

いわば、尿細管は原尿の水分量や、含まれている成分を感知するセンサーのような役割を果たしています。

例えば、食事をして水分を取ったり、運動をして汗をかいたりすると、体から水分や塩分などが出入りします。

水分を取り過ぎたときには、体が水分を必要としていないため尿細管で再吸収される原尿の量が減ります。その量が少ないほど、体外に排出される尿の量は増えて濃度が低くなります。

逆に水分が不足したら、再吸収される原尿が増え、体外に排出される尿の量が減って濃度が高くなります。朝、起きたばかりの尿が濃いのは、寝ている間に水分補給ができないため、原尿の水分が再吸収され、その分濃くなるためです。

また、体液のpHが弱アルカリ性だと細胞は正常に働くので、酸性に傾いているときには尿細管で電解質の量が調節されて、バランスが保たれるようになっています。

腎臓は全身の健康の要となる臓器

腎臓は体液を一定に保つために、24時間休むことなく働き続けて、全身の細胞が活動するのに最適な状態を維持しているのです。

この尿細管が傷つけられると、体内のミネラルバランスに異常が起き、やがて尿毒症のような症状が起きます。

場合によっては尿が出なくなり、人工透析が必要なケースも出てきます。

今回のケースも何らかの毒性のある物質が、尿細管にダメージを与えて、命に関わる症状にまで発展したと推測されます。

紅麹サプリの件は、まだまだ今後の推移を見守る必要があります。ただ、ここまで被害が広がった要因として、ほかならぬ腎臓という全身の健康の要となる臓器であったため、ということは間違いないでしょう。

髙取 優二:医学博士、腎臓専門医

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