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『いいとも!』復活望む根強い声、その深い理由 つながりの面白さと「広場」としての役割

東洋経済オンライン / 2024年3月31日 16時0分

確かにやりすぎの感は否めないが、これもお笑いやバラエティとは無縁の世界にいた橋田壽賀子がレギュラー出演していた『いいとも!』だったからこそ起こり得たハプニングだろう。

電話してきた外国人が出演者に

また『いいとも!』には、外国人の出演者も多かった。レギュラー出演者だけでも、デーブ・スペクター、ケント・デリカット、オスマン・サンコンなどがいた。その出演に至る経緯がまた興味深い。

小林豊によると、こうした外国人出演者は、みなオーディションで選んでいた。番組のデスクに「コバヤシサン、イマスカ?」という電話がよくいきなりかかってきて、小林につないでもらえないかと言ってくる。

もちろんその時点では、全員素人である。そのなかからいま挙げたような外国人たちがオーディションに合格し、スターになっていった。

電話と言えば、「テレフォンショッキング」において間違い電話がきっかけで一般の素人が3日続けて出演したことがあるのは前記事でふれた通りだ。

募集していたわけでもないのに電話してきた外国人が出演者になっていったというこのエピソードを聞くと、番組制作の裏側でもそれに類したハプニングが起こっていたことがわかる。

それもまた、「テレフォンショッキング」の場合と同様に意図せぬ「つながり」が生んだものであった。

一方で、仲良くワイワイやる輪に入ることが苦手な出演者もいたに違いない。

だがそうした出演者にとっては、タモリがいた。「グランドフィナーレ」で出演者が口々に語ったように、タモリは、どんなひとでもすべてを受け入れる「怒らない」司会者だった。

そしてそれぞれの相手に応じて絶妙な距離感をつくり出し、出演者の思わぬ個性を引き出した。そのうえでハブのような役割を担い、誰でもそこにいられる雰囲気を番組全体に醸し出していた。

モデルで俳優の栗原類は、テレビに出演してもとりわけ物静かで、自分から他人に積極的に絡んでいくことはめったにない。そうしたところが「ネガティブモデル」として逆に人気にもなった。

ただ本人は、それをダメだとは思っていないし、自分を崩したくはないと考えてもいる。

そんな栗原類も2012年10月から番組終了までの1年半、『いいとも!』のレギュラーを務めた。

そのなかで、基本的な自分のスタンスは崩さない一方で、年末のスペシャルで披露される番組恒例のレギュラー出演者による物真似では、イメージとは180度異なる江頭2:50に扮してあっと驚かせてくれた。そこには、彼だけの馴染みかたがあった。

『いいとも!』は広場的空間だった

以上のことから見えてくるのは、ここまで何度かふれてきた『いいとも!』の広場性である。

たとえば学校や家族といった集団には一定の社会的役割があり、そこに属するためにはなんらかの条件があるとされている。その条件は法律で定められていたり、伝統や慣習で決まっていたりとさまざまだ。

だがいずれにせよ、場合によっては、それに馴染めないとか、窮屈に感じるひとたちもいるだろう。

それに対し、広場は本質的にどんなひとも許容し、包摂する場所である。そこでは、職業や地位、国籍、性別、年齢など属性だけでポジションが決まるわけではない。出入りも基本的に自由だ。

『いいとも!』は、そんな広場的空間であった。

太田 省一:社会学者、文筆家

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