東京都が切り捨てたカウンセラーに広がる余波 江東区はSCを「有償ボランティア」として募集
東洋経済オンライン / 2024年4月1日 11時50分
指揮命令下での業務であることや、時間的、場所的な拘束度の高さをみると、民間であれば労働基準法などの保護の対象となる労働者とみなされる可能性が高いのではないか。
そうでなくともSCはときに子どもや保護者からの暴言、暴力に向き合わなければならないケースもあると聞く。こんなとき、ボランティアでも会計年度任用職員と同水準の保障はなされるのか。賃金水準や福利厚生などの低下につながる恐れはないのか。
同区教育委員会に取材をすると、おおむね次のような文書回答があった。
「学校等の実情に応じて柔軟に対応するためには、勤務時間や勤務日が設定されている会計年度任用職員では難しいため、2010年度から有償ボランティアの募集を始めた。ボランティアにすることで会計年度任用職員の時給上限を超え、専門性を加味した報酬(1時間4200円)を支払えるようになるなど、処遇の低下にはつながっていない。
学校とSCが双方のニーズを確認して柔軟に業務に従事してもらうことで、(別に)本業のある方や育児、介護中の方も力を発揮できる」
区教委の説明では、募集開始は10年以上前。正確には都の大量雇い止めの“余波”ではなく、失業したSCたちが別の仕事を探すなかで、同区の募集の実態を知り、あらためてショックを受けたということのようだった。
とはいえ、有償ボランティアという形態に対しては違和感を訴える声が多かった。
「身体に危険が及んだとき、どこが責任を取るのか」「ボランティアの立場でどこまでモチベーションや仕事の質を保てるのか」「今後、ボランティアで募集する自治体が増えないか不安」など。
また、かつて3年間ほど同区のSCをしていたという女性(30代)は「勤務日と時間は学校と話し合って決めるので、日程は年間を通してあらかじめ設定されていました」と区教委の説明に首をかしげる。そのうえで交通費や有給休暇、妊娠出産休暇などの福利厚生は皆無(区側は交通費は謝礼金に含まれると説明)。保育園の入園申請などに必要な就労証明書も発行できないと言われたという。
「福利厚生費を抑えるために名称をボランティアに変えただけ、という話は現場でも耳にしました。仕事は都のSCとほぼ同じでしたから、やっぱりボランティアとしての採用には違和感がありました」
「子どもや保護者との関係崩壊の始まり」
都よりも待遇の低い自治体に応募が殺到し、さらには職員ですらない有償ボランティアという形まで――。雇い止め後の“余波”をめぐる混乱は、あるSCの次の言葉に集約されるのではないか。
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