悩む管理職に伝授「部下を思い通りに動かす」コツ 「ナッジ理論」を活用して自発的に気づかせる
東洋経済オンライン / 2024年4月8日 16時0分
このような思考のクセを、確証バイアスと言います。
バイアスは、数百あるとも言われており、とくに以下の6つが代表的なものとして挙げられます。
①確証バイアス…無意識のうちに、反対意見を無視して自分の都合のよい情報ばかりを集めて立証しようとする
②正常性バイアス…危険な状態にあるにもかかわらず、"自分だけは大丈夫"と都合よく解釈する
③集団性同調バイアス…集団と同じ行動を取ることで、自分もみんなと同じであるという心理的な安堵を無意識に選択する
④権威バイアス…権威がある人が発言することは、正しいと思い込む
⑤後知恵バイアス…ある出来事や物事の結果について、その結果をあたかも最初から予見していたかのように振る舞う
⑥投影バイアス…無意識のうちに、現在の状況を過剰に反映して、今後の予測が的確にできなくなる
このようなバイアスや、人の思考のクセがどのような行動を引き起こすかを研究したり、分析したりする学問が行動経済学であり、その思考のクセを活用して行動変容を促そうと考えたのが「ナッジ理論」となっていったのです。
次に「ナッジ理論」を活用した英国の取組みを紹介します。
英国では、長年たばこのポイ捨てが街の環境を害していることに悩んでいました。そこで、ある環境団体がナッジ理論を活用したキャンペーンを行ないました。
サッカー界のスーパースターであるメッシとロナウドのどちらが最高の選手か、2人の名前を入れたゴミ箱(吸い殻入れ)にたばこの吸い殻を入れて投票するというものです。
サッカーファンがポイ捨てをやめた理由は
どちらのファンも、応援する選手のゴミ箱に吸い殻を入れていくので、たばこのポイ捨てが減りました。ゴミ箱への「投票」が、環境改善につながったのです。
サッカーファンの行動を行動経済学の視点で分析し、思考のクセ(自分が応援する選手が世界一と思っている)から、「投票」というちょっとしたきっかけを与えることで、行動を変えた(ポイ捨て→ゴミ箱に入れる)のです。
この投票は、街の環境が改善される社会的に望ましい行動です。ナッジ理論は、その人の利益になることや社会的に望ましい行動へ変容させることが、基本的な考え方です。
逆に、実は本人の利益にならないことや、望ましくない行動への変容を促すもの(不必要なものを購入してしまう)は、ナッジではなく、スラッジ(sludge:下水の悪臭)と言います。ナッジ理論を活用する際には、その人にとってよりよい選択をしてもらうためにあるのだということに留意しましょう。
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