「失言しても許される」"暴言首長"の命運分ける差 なぜ泉元市長は許され、川勝知事はダメなのか
東洋経済オンライン / 2024年4月9日 12時0分
これは、事態を収拾し、今現在の活動を維持継続できているということで、BCPは成功しているのです。
川勝氏は対応が後手後手に回り、世間に対してまともな謝罪をしていないという印象を植え付けてしまいました。リスクの炎は消えるどころか燃え盛ってしまい、次の批判へと延焼していってしまいました。
すでに一刻も早い辞任を求める声が高まっており、知事職の待遇に対する批判にも広がっています。6月1日まで知事職にあればボーナスは満額支給となるためです。静岡県の政治にも大きな影響力を持つといわれる鈴木修スズキ自動車前会長の承認は取ったということですが、現時点での川勝氏のBCPは成立していません。
だからこそ、延焼した批判の声を受けて、予定よりも早く辞表を提出することになったと見られます。
初動で炎を消せるか
危機においては初動対応が命運を分けます。芸能人の不祥事でも、犯罪までには至らない不適切な言動などでは、いかに早く事態を鎮静化できるかが命運を握っています。やはり早くからの丁寧な謝罪が有効です。
火事は燃え盛ってしまえばもはや手が付けられなくなります。初期の段階で自ら責任を認め、事態を収拾できれば、立て直しの道は残ります。しかしそれを拒んで自らを正当化するようであれば、危機が去ることはないでしょう。
世間の関心が低下すれば、怒りや反発も少なくなりますが、それは同時に自分自身の存在も忘れられていることになります。スキャンダルから逃げたことで、表舞台から存在ごと消えていった著名人もいます。逃げ回るのはまったく危機対応にはなりません。まして自分の発言を正当化して非を認めない姿勢は、危機対応能力を疑われてもしかたないでしょう。
今回の川勝知事の問題は単なる暴言ではなく、自治体首長としての危機対応能力の問題だと考えます。自らの危機的状況を処理できない人物が、はたして首長として自治体の危機に対応できるのか、という資質への疑いとなってしまったのです。
増沢 隆太:東北大学特任教授/危機管理コミュニケーション専門家
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