「話題の商品」つい買ってしまう人が損する盲点 「知ってるほう」選んでしまう親近性の魔術とは
東洋経済オンライン / 2024年4月12日 9時0分
「迷ったら、知っているほうを選ぶ」のは、人間の普遍的心理だ。選挙なら有名なほう、知っているほうの候補者。商品なら売れているものが定番。こうした選び方をしてしまうのは、「親近性」が私たちの判断に大きな影響を及ぼしているからである。
親近性の心理を利用しているのは、なにも企業だけでない。政治家ももちろんそうだが、悪徳詐欺師も同じなのだ。ダニエル・シモンズ、クリストファー・チャブリス両心理学者は、最新刊『全員“カモ”』で安易に「知っているほうを選ぶ」ことに警鐘を鳴らしている。親近性だけで選んでしまうと、思ってもみなかった悲劇が待っているかもしれない――。
有名だから親近感が増す不思議な心理
オスカー・ワイルドの小説『ドリアン・グレイの肖像』の登場人物ヘンリー卿の名言がある。
「話題にされるより悪いことが世界に1つだけある。それは話題にされないことだ」
ワイルドの着眼点は鋭い。評判になれば親近感は増す。
私たちは、その親近感がもともとネガティブな情報に根ざしたものだということを忘れると、ポジティブな合図ととらえる傾向がある。それゆえ、「どんな評判でもよい評判」という格言がある。
一般に、私たちは無名の人よりも有名人の名前を知っている。だから、個人的にその人を知らないのに名前を知っていれば、有名人だと推測してもおかしくない。
事実、名前への親近感が増すだけでその名前を選ぶ可能性は高まる。政治学者シンディ・カムとエリザベス・ゼクマイスターは、被験者がマイク・ウィリアムズとベン・グリフィンという架空の候補者2人のどちらを相対的に選ぶか比較した。
より一般的な姓であるウィリアムズを「どちらの候補者に投票しますか?」という設問のすぐ下に記載したところ、ほかに情報がない場合、被験者の3分の2がウィリアムズを選んだ。この結果は、「なじみのある名前と投票用紙の最初にある名前が有利になる」という実験結果とも一致する。
社名や商品名に個人名をつけたがる理由
一方で、カムとゼクマイスターは、ウィリアムズの優位性に対抗するために、グリフィンの名を、被験者が認識できないほど短い時間、スクリーンに繰り返し映し出した。この条件のもとでは、ウィリアムズを選ぶ割合は13%減ったので、ウィリアムズは2倍の票差ではなく、かろうじて勝利するにとどまった。グリフィンの名前をくり返し被験者に見せると、「彼に投票する」と回答した人数は増えた。
この記事に関連するニュース
-
「不確実な報酬」で売上をアップする巧妙な戦略 不確実性による「ワクワク感」が行動を導く
東洋経済オンライン / 2024年5月28日 10時0分
-
大統領事故死のイランの体制「古いヘリコプターのよう」 国際政治学者・高橋和夫氏が指摘
産経ニュース / 2024年5月22日 14時58分
-
評価を高める奇妙な「レッドスニーカー効果」とは 会議に真っ赤なスニーカーで来る人がいる理由
東洋経済オンライン / 2024年5月20日 10時0分
-
怪しいカルトや陰謀論に取込まれる人「納得の訳」 米国人の40%「キリストは40年以内に再臨する」
東洋経済オンライン / 2024年5月17日 9時0分
-
史上最悪の金融詐欺が仕掛けた「一貫性の罠」 「リスクなし」「損しない」という甘いカラクリ
東洋経済オンライン / 2024年5月15日 9時0分
ランキング
-
1「富士山を黒幕で隠す」日本のダメダメ観光対策 「オーバーツーリズム」に嘆く日本に欠けた視点
東洋経済オンライン / 2024年6月2日 8時0分
-
2サクラクレパスの「こまごまファイル」が“想定外”のヒット、なぜ?
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年6月1日 8時10分
-
3「みどりの窓口削減計画」はなぜ大失敗したのか…JR東が誤解した「5割がえきねっとを使わない」本当の理由
プレジデントオンライン / 2024年6月2日 7時15分
-
4PIAAからヘッド&フォグ用LEDバルブ 6000K「超高輝度」シリーズ・5製品が登場
レスポンス / 2024年6月2日 10時30分
-
5なけなしの貯金と「年金月14万円」で暮らす70代女性、冷房代が払えず「“タダで涼める”スーパーへ避難生活」が続くも…「店長のひと言」で人生が一変したワケ
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月29日 9時0分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください