「話題の商品」つい買ってしまう人が損する盲点 「知ってるほう」選んでしまう親近性の魔術とは
東洋経済オンライン / 2024年4月12日 9時0分
無名の候補者が、地域の選挙戦で親近性を高めて票を増やせるとしても、実際の選挙では、短時間名前を点滅させるような微妙な方法で投票先が13%も変わることはない。
特に注目を集めるような選挙戦では、そうした微妙な方法の効果は、広告や電話攻勢、公開イベント、マスコミ報道、思いがけないニュース、そのほか実際の投票に影響を及ぼすあらゆるものに太刀打ちできないだろう。そうは言うものの、この研究は、私たちが十分な自覚もないまま親近性をもとに意思決定をしかねないことを証明している。それはアメリカで選挙の前に、ヤードサイン〔選挙の際に自分の支持する候補者の名前を庭などに掲示するための看板〕や横断幕が急増する理由の説明にもなる。
マーケティング担当者は折あるごとに、認知度と信頼感を植えつけるために親近性に訴える。ラルフローレンやIKEAのような企業が、商品に固有名詞をつけたり(たとえば、「ハンプトン」シャツや「ビリー」本棚のように)、新興企業がよく知っているものを想起させるような名称(たとえば、自動運転トラックメーカーのニコラ・モーター社は、交流電流を広めた発明家ニコラ・テスラの名前を使うことで、象徴的な発明家とEV業界でもっとも有名な企業の両方に結びつくようにしている)をつけたりする理由もそこにあるのかもしれない。
認知心理学者ゲルト・ギーゲレンツァーによれば、「再認ヒューリスティック」とは、状況がどうであれ、2つの選択肢のうちいずれを選ぶかを決めるときに直感的に働く原則のことである。この原則は単純に「迷ったら、知っているほうを選べ」と導く。
企業が同業他社のやり口を真似る事情
ニューヨーク市にはかつて「フェイマス・オリジナル・レイズ・ピザ」という名のレストランが何十軒もあったが、どの店もほかの店と関係がなかった。企業はなじみのある配色、書体、そのほかの「トレードドレス〔商品、店舗、サービスなどの全体的な外観の特徴を指す〕」の要素を採用し、既知のものを探す消費者の注目を引こうとする。
たとえば、ペンシルベニア州中部では、波型ポテトチップスの地元ブランド各社が、競合相手であるトップ企業のラッフルズのパッケージによく似た袋で販売している。
親近性と類似性が信頼の証しとなり、私たちの判断に大きな影響を及ぼすことは珍しくない。それゆえ企業は多額を投じて、自社のブランドが社会の認識を高めることに特化した広告を制作する。
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