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700円で美味しい「インネパ」背後にある壮絶な貧困 日本に出稼ぎに来た人々追った『カレー移民の謎』

東洋経済オンライン / 2024年4月14日 12時30分

ネパール人が経営するインドカレー屋「インネパ」。「インネパ」として日本で暮らす人々のリアルについてジャーナリストである室橋裕和さんに話を聞きました(写真:chitorin/PIXTA)

ネパール人が経営するインドカレー屋は、「インネパ」と呼ばれ、ここ20年でその数が激増している。なぜネパール人が経営しているのか、どうして増えたのか。そんな、インネパの疑問を解き明かしたのが『カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」』だ。ジャーナリストである室橋裕和さんが、3年の月日をかけて完成させた本である。

【写真】インネパで働くネパール人たちは、こういう場所から日本に働きに来ている

前編では、

・インネパ増加の背景には、インドカレー店で働くことの多かったネパール人が独立したことや、日本でのバックパッカーブーム、特にビザ改正に伴うブローカーの増加など、複合的な要因があったこと

・目立った産業がないネパールでは国外で働くことが夢のようになっていて、それが日本への出稼ぎを促していること

・インネパのメニューがバターチキンカレーや食べ放題ナンのように「コピペ」であることが多いのは、借金を抱えて日本に来たり、金銭的に苦しい下積み生活を送ったゆえに、「絶対に失敗したくない」というネパール人の切実な思いが反映されていること

などについて伺った。

後編では、インネパとして日本で暮らす人々のリアルについてお話を伺う。

なぜ、日本外国人を取材するのか

そもそも、室橋さんがインネパに興味を持ったのはなぜだったのか。

「僕は30代の10年間をタイで編集記者として暮らしたんです。タイには大きな日本人コミュニティがあって、僕が働いていたような日本語の情報誌もあるくらいで、生活にはほとんど不自由はなかった。

2004年から2014年あたりまでタイにいましたが、帰国したとき、渡航する前よりはるかに外国人の数が多くなっていて驚きました。そこで、日本に住む外国人の生活はどうなっているのかが気になったんです」

こうして、日本に住む外国人について調べ始めた室橋さん。その中でインネパを意識したのは、ある取材のときだった。

「夜間中学の取材をしていたんです。いま夜間中学って外国人が日本語を学ぶ場にもなっているんですが、そこに通っていたことがあるというネパール人が『カレー屋の子供は皆、いろいろ抱えているんです』と言っていたんです。

彼は親が『インネパ』の経営者だったんですが、忙しすぎて全然子どもに構ってくれないなど、なかば自虐的にそうしたことを言うんですよ。その言葉が気になった」

こうして室橋さんはインネパの取材を始めることとなった。

「取材を始める前、僕はインネパについては、カレーが安くていいな、ぐらいに思っていました。でも、取材を続ける中で、そうしたインネパの中にも切ない部分があることがわかり、あの夜間中学に通っていた彼が言っていたことの意味もだんだんとわかってきました」

厳しい状況に置かれるインネパの子どもたち

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