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「いじめ防止法」改正の署名活動する遺族の思い 被害者を追い詰める学校の対応に罰則規定を

東洋経済オンライン / 2024年4月14日 7時50分

学校側は第三者委の設置には応じたが、それ以外は遺族の要望をことごとく拒否した。全校保護者会の開催、勇斗くんのクラスでの命に関する話し合い、加害者への指導……。いずれも再発防止を願っての依頼だったが、学校側は「すべて第三者委に任せた。彼らにやれと言われたらやる」と繰り返した。

第三者委は約1年4カ月の調査を経て、2018年11月に「自死の主たる要因はいじめ」と報告書で結論づけた。教職員のいじめ防止に対する認識や取り組みが不十分だと主張し、加害者への指導などを求めた。

ところが、学校側は第三者委の結論を「論理的な飛躍がある」などと批判し、報告書の受け入れを拒絶。結局、加害者は何の注意も受けないまま、2019年3月に卒業した。

死亡見舞金を口封じの材料に

遺族は行政にも助けを求めた。報告書の完成前、長崎県学事振興課(海星高校は私立なので教育委員会の管轄ではない)に窮状を訴えたのだ。だが、担当者の返答は「学校側は真摯に対応している」というものだった。

県と遺族、学校による3者での面会でも、県担当者は「(武川氏の)突然死の提案はギリ許せる」と発言。さおりさんは文科省に電話で相談したが、「私立高校に対応すべきは県」と取り合ってもらえない。現行のいじめ法制度では、私学への介入権限が行政側にないのだ。

後に報道でこの事実が明るみになると、不適切な発言だったとして、県側は遺族へ謝罪した。一方、釈明のために県が開いた会見では、「学校側の言動を積極的に追認したわけではない」と説明している。

学校側は日本スポーツ振興センター(JSC)への災害給付金の申請も拒否した。学校管理下のいじめで子供が亡くなった場合、遺族は学校保険制度に基づき、死亡見舞金を受け取れる。この手続きに応じなかった。

その理由について、武川氏は保護者説明会で「帰宅後に亡くなったので、端的に言って学校の管轄外」と述べた。さらに学校側の弁護士は遺族側に「損害賠償請求権を放棄するなら、死亡見舞金の申請を考える」と持ちかけてきた。この時点では遺族から損害どころか謝罪の要求すらしていないにもかかわらず、である。

「子供の権利を取引材料に使って許されるのか。私たちは見舞金が欲しいわけではなく、息子の死にきちんと向き合ってもらいたかっただけ。お金で口封じを試みてきたのは許せなかった」(さおりさん)。遺族側は弁護士を雇い、自力で書類をそろえて学校経由でJSCへ申請。2020年3月に2800万円の給付を受けた時は、勇斗くんの死から約3年が経過していた。

対応に疲弊する遺族

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