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「3大映画祭制覇」濱口竜介語る"日本映画の課題" 国際的評価をされても大ヒットにつながらず

東洋経済オンライン / 2024年4月18日 12時30分

――“国際映画祭の基準”にかなうためには、何をやるべきなのでしょうか。

いろいろな映画が選ばれているので、これも一概には言えません。ただ自分のことで言えば、ある程度の数の映画を見て、映画史を学んだ、ということ以外には何もないような気がします。

古典的な映画をできるだけ見て、その美学を身につける。現代は制作条件が古典期とまったく違うわけなので、自分が学んだ映画というものの魅力をどうやったら発揮できるか。そういうことを考えたうえで、具体的な制作へと落とし込んでいく、ということが自分のやってきたことです。

国際映画祭のプログラマーたちと話してわかったことは、彼らは世界中の映画や歴史上の有名な古典は当然見ている、ということです。もちろん彼らはそこから外れたような新しいものも求めていますが、ある程度これまでの映画史を踏まえたものが出てきてほしい、という思いは共通して持っているように思いました。

なので、もし「どうやったら世界の映画祭に選ばれるのか」と問われたら、私個人の体験からは「まず古典映画をできるだけ見る。それで考える」という答えになります。

――世界3大映画祭などで評価される映画が、人気ドラマやアニメの実写化ばかりがヒットする日本の映画興行で、興収50億〜100億円ほどの商業的な大成功を収めることはほとんどありません。これを両立させるのは難しいのでしょうか。

難しいと思います。そもそも自分の場合は、日本で大きくヒットして商業的に成功することを期待して作っているわけではありません。そんなこと言っちゃいけないかもしれませんが(笑)。

ただ、「小規模な映画作り」と言っても、映画を作り続けるためには、ある程度の観客に認知されて、興行を成立させないといけないというプレッシャーはあります。

そういうなかで、国際映画祭に出すことになるわけですが、自分がいいと思う映画を作って日本で大ヒットさせるのは、かなりの離れ技になる気はしています。

日本映画界の長年の課題への思い

――それが両立しない、日本映画界の現状の課題をどう見ていますか?

たとえばフランスだと、アート系の映画でもかなりの観客が入るので、とてもうらやましい状況です。フランスでは小中高校と、映画が教育プログラムの中に組み込まれていることも大きいでしょう。日本では幅広い世代において、映画館に行くという習慣がどんどん薄れています。

是枝裕和監督の『怪物』は興収が20億円を超えたそうです。映画祭での受賞だけが要因ではないでしょうが、是枝さんのように着実にキャリアを重ねれば、国内でも毎作話題になり、関心が集まるということだとは思います。これは希望ですし、若い人が目指すところでもあるでしょう。

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