NHK「英語でしゃべらナイト」は異×異の教養論 激変の時代に生きる 頭の強さとハザマの思考
東洋経済オンライン / 2024年4月19日 11時0分
もともと、定型があってその秩序に則って完成形を目指すような仕事の仕方が苦手で、常にフラットに現象を捉え、現在進行形で対話のプロセスを含めて未完成のままでも開示していく姿勢を好んでいた変わり者のマインドに、皮肉なことに時代がマッチし始めた、という言い方はできるかもしれません。
堀内:現在、世は教養ブームで、丸山さんも番組制作や講演などに引っ張りだこかと思うのですが、教養や教養教育について、また、教養をどのように実際の仕事に活かすのかといったことについて、どのような見方や考え方をされていますでしょうか。
丸山:「ファスト教養」という言葉でも表現される現象が象徴的だと思いますが、いまや教養も市場の「商品」となってしまった感がありますよね。教養という以前に、それこそコスパ、タイパなどの言葉もあるように、限られた時間の中で手っ取り早くとりあえず現代社会を生きる武器が欲しいという感覚で「消費」されていく状況は、「情報」の効率的な共有という面ではやむを得ないところがありますが、本来的な「教養」という意味ではやはり残念なものがあります。「情報」ももちろん大事ですが、「教養」という領域には、数値化や相対化を拒むような、次元の異なる広がりがあると考えるからです。
「商品」としての教養で自分自身の存在まで「消費」されないためにも、常にメタレベルと言うか、全体を俯瞰した視点でものごとを捉え続ける、自己洞察を連続的にしていく感覚を持つことが大事になると思います。逆説的な言い方をすれば、流行りの商品、消費財としての教養的なものでも相対化し批判的に戯れることができるのも教養的なマインドの奥行きがあればこそ、と、そこでも教養を試されているという言い方もできるかもしれませんね。
「見たいようにしか見えない」人間の性を超えて
堀内:そのための方法論というのは、丸山さんの場合、引き続き番組制作を通してやっていこうということになるのでしょうか。
丸山:確かにひとまずは、映像制作の試行錯誤を通して、ということになります。制作の過程は、考える材料に事欠かない、実に様々なジレンマに満ちていますから。そう言えば「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」という番組もありましたが、僕の中の隠しテーマとしては、ジレンマを「解く」というより「楽しむ」ことでした。葛藤に直面しても、結論を急ぐことなく、楽しみながら付き合っていける感覚が重要だと思うんです。
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