NHK「英語でしゃべらナイト」は異×異の教養論 激変の時代に生きる 頭の強さとハザマの思考
東洋経済オンライン / 2024年4月19日 11時0分
アウトプットという意味では、大学などの対話の場も貴重ですね。芸大に加えて、この春から、「社会デザイン」という学の理念を謳う立教大学の大学院に関わることになりましたが、様々な場での「異文化コミュニケーション」が楽しみです。映像で、活字で、大学で……、そうした移動、往復運動の中で文字通り歩きながら考えることが、エネルギーになっています。
不透明な時代の「教養」とは
堀内:わかりました。これからも是非、丸山さんならではの視点でアウトプットを続けていっていただければと思います。
最後に「教養とは何か」という最初の問いに戻りたいのですが、今回は丸山さんにいろいろ語っていただいたので、だいぶ理解できましたが、まとめ的に丸山さんにとっての「教養とは何か」ということを教えていただきたいのですが。
丸山:アマノジャクな答え方になるのかもしれませんが、「固定化させずに、日々問われたときによって定義の仕方が変わっても大丈夫」と言ったら変ですけれども、答えが変わることをむしろ楽しめるぐらいのセンスのほうが、それこそ今の時代の教養のあり方としてはいいのかもしれません。教養的ということが、ある事象を常にメタレベルで捉えられたり、オルタナティブな価値を見つけられたりということであるならば、自分を固定化させないで、原初に持っていたエネルギーを大事に、その発揮の仕方の柔軟性を忘れないための作法、という言い方もできると思います。
最近はやはりAIやデジタル技術と社会との関係性などについてもよく考えるのですが、AIがこの世界をどう捉えるか、そこに新たなリアリティ、認識の形が示される面白さに期待すると同時に、その一方、人間の精神構造がAIを無意識に模倣していってしまうことについての警戒感も持ちます。後者の危惧については、哲学者、社会学者、科学者……様々な分野の皆さんからもよくお聞きする話です。
たとえば、アメリカで近年話題の「ポリティカルコレクトネス疲れ」などのように、「正しい」概念が逆説的に働き、過剰適応を招き、かえって息苦しい社会を生んでしまうような状況とも関係があるように思います。複雑性に耐え切れず、AIが提示する「正解」に頼り、委ねることに慣れていくうちに自ら考えることを放棄する人々が増え、社会の硬直化も進んでいくことの怖さがそこにあります。
ケインズの警告を思い出すような話ですが、ともすれば環境に慣れてしまい、「見たいようにしか見えない」人間の性には自覚的でありたいと思っています。そうした視野狭窄を破壊するのも、教養のはずですね。仮に、目的と手段が逆転してしまうようなねじれた状況が生まれても、焦れることなく飄々と、ユーモアを忘れず対処できる柔軟性を、伸びやかな知性を鍛え続けたいものだと思います。
教養とは「生きる力」を取り戻す術である
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