「脱炭素の次は水」。企業が迫られるリスク対応 先進企業から学ぶべき「流域での連携」戦略
東洋経済オンライン / 2024年4月20日 8時0分
バリューチェーン、特に原材料生産地の「水」に責任を持ち、企業が取り組んでいる先行事例として、ドイツ最大規模のスーパーマーケットEDEKA(エデカ)の活動が挙げられる。
EDEKAは、サステナビリティの主要テーマの一つに水を掲げている。
同社の水担当者は、「将来にわたって自社のサプライチェーンとビジネスモデルを継続していくために、プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)を超えない形での事業展開が不可欠だ。自社の環境負荷を削減し、ビジネスの変容を実現するうえで、水への取り組みは重要となる」と述べる。
EDEKAはスペインや南アフリカ、ドイツ国内などさまざまな地域で、水問題の解決に向けてのプログラムを展開している。代表的な取り組みのひとつに、南米のバナナ・プロジェクトが挙げられる。
同社では、上の写真のように消費者向けのチラシを作成し、バナナの生産現場でどのように水が使用され、どのように節水できたのかなどの取り組み内容を消費者に向けて丁寧に説明している。
同社は、取り組むべき品目と生産地を検討するにあたり、最初のステップとして輸入に依存する主力農産物の品目と、その生産地の流域における将来の水リスクを分析した。その結果、バナナを対象に取り組みを始める必要性が高いことがわかった。
というのも、バナナは、最も売上量の多い産品のひとつだが輸入に依存していること、主要な産地の南米では、流域レベルで見ると洪水や渇水などの水リスクがあること、栽培過程で多量の水を使用すること、廃棄物処理や負荷の高い労働環境など社会課題があること、などが背景にある。
バナナは未加工のまま輸入するので、比較的、調達地を特定しやすい点も、理由のひとつだ。
南米コロンビアでのバナナ・プロジェクトは、2015年から現在まで継続している息の長い取り組みだ。
コロンビアのカリブ海沿岸地域、マグダレナ県。シエラ・ネバダ山地が水源となり、フリオ川やセビリア川など5つの河川が形成され、カリブ海に注がれる。沿岸部には、ラムサール条約湿地が広がり、鳥類や魚類の楽園となっている。
上流の山地では主にコーヒー豆が、中下流ではバナナやパーム(アブラヤシ)が栽培されている。農業は現地の人々にとって大きな収入源だ。
しかし、当地はもともと渇水リスクの高い地域だ。そればかりか、農業用水の過剰な灌漑や、観光業での水の需要増加、気候変動の影響により、ますます渇水が深刻化している。すでに地域コミュニティや河口部の湿地生態系にも、水不足や汚染、生物多様性の損失などの影響が及んでいる。
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